温泉街が中国資本に買われ、"産業再生機構"が再び登場する事態も? コロナ禍で落ち込むGDPを読み解く
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 「4~6月期の大半である4、5月に緊急事態宣言を発出して、いわば人為的に経済を止めていた状態だった。その影響で、この厳しい結果になった」(西村康稔経済再生担当大臣)。

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 政府がきのう発表した4~6月期の実質GDP(国内総生産)成長率はマイナス7.8%、年率換算ではマイナス27.8%と、リーマン・ショック後の年率換算マイナス17.8%(2009年1~3月期)を大きく上回る、戦後最大の落ち込みとなった。

■「年率換算ではなく、4~6月期の成長率だけを見た方がいいと思う」

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 そもそもGDPとは、国内での経済活動の結果得られた農産物や工業製品、娯楽作品、各種サービスなどの合計額で、各国の経済活動の規模や豊かさを示す指標だ。元日銀マンのエコノミスト・鈴木卓実氏は「この4~6月期に、国内でどれだけのものが生産されたか、というイメージだ。生産されたものは消費されたり投資されたりするし、企業が生産した部分は私たちの給料にもなるので、これが落ち込んでいるということは、家計の懐も寂しくなるということに繋がる。一方、年率換算で表現することが慣習のようになっているが、これは同じ数字が続くという前提の、いわば極端な数字だ。このような落ち込みが1年も続けば、全ての経済が持たなくなってしまう。やはり4~6月期の成長率だけを見た方がいいと思う」と話す。

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 「それでもマイナス7.8%というのはリーマンショックを超える数字だ。輸出も落ち込んでいるが、それ以上に消費が落ち込んでいる。特に宿泊・飲食といったサービスにダメージが偏っていて、年を越せるかという厳しい状況だ。要因としては、まさに移動が止まったことが大きいと思う。今回がバブル崩壊やリーマンショックの時と違うのは、金融危機が先に来ているわけではないということだ。実体経済が先に落ち込んでいるので、これが金融に波及すれば、再び金融から実体経済へという悪循環に入ってしまう可能性もある。この悪循環をどこかで止めるのが課題だ」。

■日本の土地や技術が中国資本に買われる事態も?

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 鈴木氏によれば、運輸・観光・旅行・飲食・娯楽業界がシビアで、「企業倒産はこれからが本番」なのだという。「GDPは売上に近い数字ではあるが、表面上は何となく穏やかで、あちこちで企業が潰れているという話も聞かない。背景には、金融機関が全力でお金を貸していたということがある。しかし、それが長引き、売上が立たないとなれば自主廃業という道も出てくるし、最後には倒産も出てくる。本格化するのはこれからだ」。

 「特に飲食業界は厳しい。まず、外出・営業自粛要請があったこと、さらにスーパーや小売の業績が良いことを見ると、人々が“家でも食べられるよね”“同じ値段なら、家で食べた方がいいものが食べられるじゃないか”というマインドになっている。コロナが落ち着いた後も、今までのように外食をする文化が残るのかと考えると、そこが変わってくる可能性がある」。

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 そうした中で予想されるのが、中国の台頭だという。鈴木氏は「不良債権が中国資本に買われる。売り方を間違えると、ハゲタカの二の舞だ」と警鐘を鳴らす。

 「アメリカもヨーロッパもコロナで身動きが取れない中、経済成長率は2019年に比べてプラスに戻しているので、経済的にも外交的にもアドバンテージがあるのは中国だと思う。やはり中国は強い。すでにアフリカ諸国では大量のお金を貸し付け、返せなかった場合には港や鉱山の採掘権などインフラの使用権を持つ取り決めにするなど、経済面から支配していこうとしている。バブル崩壊後に米国系の再生ファンドに買われていったように、日本の土地や技術が買われるということは十分考えられる。半導体や自動車部品の製造工場はもちろん、宿泊業が傷んでいるので、温泉街をまとめて買われ、水源を押さえられるということもありうる」。

■"産業再生機構"再び?若い世代にはチャンスも…

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 こうした事態に、政府も定額給付金やGo To トラベル事業、さらに持続化給付金や雇用調整助成金などの経済対策を実施してきた。

 鈴木氏は「政府の財政を示したグラフで、税収(収入)に対して歳出(支出)が拡大していく傾向を“ワニの口が開いている”という言い方をするが、今は“ワニの上あごが外れた”という言われ方をされてしまうくらい、政府がかなりのお金を出したのは間違いない。一方、コロナが収束した後は消費税を上げなければ、今度は社会保障が持たなくなる。休業されている方に雇用調整助成金を給付しているが、この原資は雇用保険だ。今のペースだと、雇用保険の積立金も危なくなってくる」と指摘した。

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 元経産官僚の宇佐美典也氏は「日本経済のファンダメンタルズを見て驚愕した。これから恐ろしい事態が来るわ。時代が変わる。自由主義経済が維持できない」とした上で、「かなりの業界は混合経済にならざるを得ない。鳥肌が立った」とツイートしている。

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 鈴木氏は「混合経済を一言でいえば、自由主義の市場経済と、ある種の統制経済を混ぜた形だ。フランスがこれに近く、大企業に政府が資金を入れている。日産とルノーが揉めた時にゴーンさんの存在感が大きかったのも、ルノーのバックがフランス政府だったからだ。重要産業を国が押さえることで危機時に強いというメリットがあるものの、どうしても官僚的な頭の固さ出てきてしまうというデメリットもある、そのバランスをどう取るのかが難しい」と説明。「かつての産業再生機構のようなものが復活する可能性があると思うが、当時はまだ政府に支出の余地もあったし、日銀にも金融緩和の余地があった。今はそうではないので、より公的な性格が強くなり、一部の官僚たちをヘッドクオーターにして、かなりの数の民間人を投入して、ということになると思う」とした。

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 他方、「人口が減る以上、1人当たりの生産性を上げないといけない。その条件に近いのが20代の若者世代だと思う。日本の人口ピラミッドは少子高齢化であるために、若者が非常に優遇される社会になる。そして、業種で見るとITは強く、アメリカでもアマゾン、グーグル、アップルといった企業が株価を支えている面がある。その意味では、ITを使ってあっという間に勉強できる若者の方が、上の世代よりも稼げるようになる。今の20代の方たちに稼いでもらって日本を立て直してもらうしかない。私のようなアラフォー以上の世代は厳しい(笑)」と期待も語った。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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