(ストロー級トップ対決が日本で実現)

 9月10日に開催されるONE Championshipの日本版大会『ROAD to ONE 3rd:TOKYO FIGHT NIGHT』で、ファン待望の一戦が決定した。

 この大会は時期的に海外からの選手参戦が不可能。だが、だからこそ普段のONEでは組まれにくいとされる日本人対決が実現することになった。

 8月17日の会見青木真也vs江藤公洋とともに発表されたのは、猿田洋祐vs内藤のび太。ストロー級トップファイター対決だ。

 両者はともに修斗世界タイトルを獲得し、ONEでも活躍。どちらもONEの世界王座も獲得している。現王者ジョシュア・パシオと1勝1敗というのも共通点だ。

「これはただのワンマッチじゃないと思ってます。修斗で階級を落としたのものび太選手と闘うため。勝って日本人ナンバーワンとしてパシオ選手に挑戦したい」

 そう語ったのは猿田。この試合、勝ったほうがストロー級タイトルの次期挑戦者になる可能性が充分ある。ONEの中継で解説を担当する大沢ケンジ氏曰く、UFCにはストロー級がないだけに「この階級で世界一を決めているのはONE」。猿田vs内藤は、どちらが世界の頂点に王手をかけるかという重要な闘いだ。

「闘えて光栄です。これ以上ないタイミングだと思います」

 いつものように、内藤は淡々と語っている。しかしファイトスタイルは打って変わって熱い。相手にどれだけ反撃されようが、食らいつくようにタックルを放ち、粘りに粘って“根性勝ち”する。そんな闘いで、彼は修斗でもONEでも勝ってきた。

「自分から苦しい展開にもっていって、相手を削って削ってドミネート(支配)する。気持ちの強い選手」

 猿田は内藤をそう評している。そんな相手に勝つには、自分がそこに飛び込むしかないと考えているようだ。

「うまく闘おうとは思ってないです。のび太選手以上にキツい試合をしてパウンドアウトしたい。僕は修斗のフライ級でなかなかタイトルに近づけなくて、そういう時にのび太選手の活躍を見てうらやましいと思ってました。今回、勝つことで今までやってきたことが証明できる、救われるという感覚があります」

 修斗の世界王座を獲得したのは、3度目のタイトルマッチ。苦闘を重ねてきた猿田の格闘技キャリア、その一つの総括とも言える試合が、この内藤戦なのだ。また猿田は大沢ケンジ氏のジム・HEARTSに所属。練習環境が変わってから総合力を高め、“勝ち切る”闘いを身につけた印象がある。

 大沢氏は会見で「(この場では)言いにくいけど、フィニッシュしてほしい」と猿田にエールを送った。それを聞いた内藤は思わず苦笑い。内藤はコロナ禍、日本での日本人対決というシチュエーションに「僕は僕にできる闘いしかできない。それが何か響けばいいなと思います」と語ってもいる。自分にできることを徹底的に貫くのが、この男の強さなのだ。そのあたりも“のび太的”。普段はおとなしく、しかし試合になると「劇場版」の大活躍を見せてくれる。

 ONEストロー級のタイトル戦線を左右し、かつストーリー性もある大一番。この試合が組まれ、日本で見られることも含め、その勝負の重みをしっかり味わいたい。

文/橋本宗洋