研究者自ら身体を実験台に…新型コロナ死者最多のアメリカで「DIYワクチン」違法性は?
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 今も世界で感染拡大を続ける新型コロナウイルス。各国では、ワクチンの研究・開発が早足で進み、実用化が期待されている。

【映像】臨床試験が終了したロシア・ガマレヤ研究所の新型コロナワクチン製造ライン(冒頭~)

 ロシア国営通信社のタス通信によると今月1日、ロシアのムラシュコ保健相はガマレヤ研究所が開発したワクチンの臨床試験の終了を発表。10月から大規模な予防接種を始めるという。さらに、中国でも「人民解放軍の軍事科学院と医薬メーカーによる共同開発のワクチンが中国国内で特許を取得した」と人民日報が報じている。

 いずれも実用化されれば世界初となる新型コロナウイルスのワクチン。そんな中、アメリカでは驚くべき挑戦が始まっていた。なんと、自作した新型コロナワクチンを研究者の身体に投与、「DIYワクチン」として、その効果を検証しているという。

 MIT Technology Reviewによると、ハーバード大学の遺伝学者、プレストン・エステップ博士は、自分の身体を実験台に新型コロナワクチンの臨床実験を行っている。

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 エステップ博士は、政府の専門家が1年以上かかると予測したワクチンをもっと迅速に進める必要があると考えた。注射のイメージが強いワクチンだが、今回エステップ博士が自身の身体に投与したDIYワクチンは点鼻型だ。

 エステップ博士の挑戦に、ハーバード大学での指導者だったジョージ・チャーチ教授も賛同。チャーチ教授も実験台として名乗りをあげた。

 ニュース番組「ABEMAヒルズ」では、京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授を取材。宮沢教授は「僕たちもワクチンを作ろうと思ったら1週間あればできてしまう。それを試すか、試さないか。注射は昔からのやり方で、これからはだんだんと鼻に垂らすワクチンが主流になると私は思う」と話す。

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 今回エステップ博士が接種したDIYワクチンは「サブユニットワクチン」と呼ばれるタイプ。宮沢准教授は「サブユニットワクチン」についてこう解説する。

「サブユニットワクチンは“不活化ワクチン”と呼ばれるもの。まず、新型コロナウイルスのたんぱくの一部を、他のウイルスや他の生き物に作らせる。それを打つのがサブユニットワクチン。全部を不活化する、全部を殺すワクチンは、今はないと思いますが、まれに不活化できなかったウイルスが混入してしまうことがある。しかし、サブユニットワクチンだと混入の確率が低く、安全性が高い」

 世界で渇望されている新型コロナウイルスのワクチン。アメリカで待ちきれずに自作したワクチンを接種する研究者が現れた事態に、宮沢准教授も「心の中で作りたいと思っても、日本には法律があるので。捕まっちゃうのかなと思って自制はかけますが、法律がなかったらやっていますよ」と共感を示す。

■ワクチンが完成しても日本の接種率は低い?「若者には打つメリットがない」

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 さらに19日、加藤厚生労働大臣も委員会でワクチンの供給について言及。加藤厚労大臣は、国民の不安要素になっている背景の1つとして「ワクチンや治療薬が今のところ存在していない」と挙げ、「ワクチンは国内外において積極的な開発をしている。それらの果実を早期に日本の皆さん方に供給、接種という形で提供していくようにつとめていきたい」とコメントした。

 加藤厚労大臣は早期の供給・接種を目指すとしているが、前述の宮沢准教授は日本でのワクチン接種については「不透明」だという。

「おそらく、欧米やロシアなど被害が大きいところでは『ワクチンを打ちたい』という人はけっこう出ていて、相当数が打たれるのではないかと思う。(日本は)輸入したワクチンを打つことになると思いますが、最初の1~2年は有効性・安全性は確定しない。確定しないワクチンを日本人が打つかというと、ちょっと分からない。読み切れないです」

 新型コロナウイルスのワクチンができたとして、はたしてどれくらいの日本人が接種するのだろうか。実用化に向けての障壁はまだ多い。宮沢准教授は「今の被害の重症化率を考えると若い人は打たないでしょう。若い人は打つメリットがない。日本では基礎疾患がある人・高齢者がワクチンを打つかもしれません。いずれにせよ、そんなにワクチンを打ってくれる人は多くないと思います」と話す。

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 ニュース番組「ABEMAヒルズ」のコメンテーターで、ニューズウィーク日本版編集長の長岡義博氏も「先ほど宮沢准教授もおっしゃっていたが、日本ではワクチンを打ったその後の安全性や動物実験、臨床試験など、プロセスに時間がかかる。それを今回アメリカでは研究者が『自分たちでやってしまおう』とプロセスを端折ろうとしている。副作用の危険はあるが、メリットの方が大きいと判断して投与している」と解説。なおアメリカでは、米国食品医薬品局(FDA)に新薬の臨床承認が必要だが、開発者が自分に投与する場合、FDAには止めることができない。

 長岡氏は「アメリカは今新型コロナウイルスの感染者が約550万人で、死亡者が約17万人。3%という死亡率はかなり高い」と指摘。「(研究者自らが接種するDIYワクチンは)アメリカが切迫していることの反映だ」とアメリカの現状を示唆した。

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ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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