将棋の最年少棋士・藤井聡太二冠(18)は「指しながら強くなっている」。そう証言するのは、藤井猛九段(49)だ。同じ藤井姓ということもあり、度々比較されることもあったが、最年少での二冠を達成した王位戦七番勝負の第4局を、藤井九段はABEMAの中継で解説。その際、藤井二冠の強さの秘密について、公式戦の持ち時間が長いことの意義とともに説明した。
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「将棋が強くなる」といえば、最近では何かにつけてAI(将棋ソフト)による研究が語れることが多いが、藤井九段が指摘したのは、公式戦が長時間対局である理由だ。「将棋なんて1時間でも30分でも、そこそこいい将棋をさせる。でもだいたいが(持ち時間)3時間以上」と紹介した上で「実力をつける目的がある。勝負しろっていうだけじゃないんです。棋士は強くなりなさいと。長い持ち時間を設定してくれているのは、長い時間で強くなりなさいということ」と、単なる“試合”ではなく、しのぎを削り、腕を磨く、そういうものだと語った。
精神論というわけではない。「練習は持ち時間が短いし、プロとしてそんなに力はつかない。だからといって練習で長くしても、そこまで真剣になれない。ただタイトル戦であれば、ずっと集中力が続く。実戦で強くなるのが一番なんです。藤井さんはそれがわかっている」。タイトル戦という最高の舞台で、トップクラスの相手と真剣勝負を、1日制でも10時間以上、2日制なら16時間以上も戦う。超ハイレベルの思考を互いに繰り出す一局は、下地を作る研究とはまた別に、脳をフル回転させる鍛錬としては、この上ない。
藤井九段にも経験がある。「20代で羽生(善治)さんとかと指していたら、自動的に強くなるんですよ。負けはしても強くなった実感がある。だから10代からタイトル戦に出られるのはいいですよね」と、吸収力が抜群の10代から、将棋界の最高峰で戦いつつ学んでいることが、藤井二冠の強さをより増しているのだという。
戦うほどに強くなる。漫画かアニメの主人公みたいな話ではあるが、現在の将棋界ではそれが現実に起こっている。6、7月は過密スケジュールの中で戦い続けた藤井二冠。最年少二冠・八段昇段という快記録にたどりついた理由には、この“強化合宿”のような2カ月が活きたからだった。
(ABEMA/将棋チャンネルより)