伊藤隆代表の言葉通り、立ち技格闘技イベントRISEがハイペースで大会を開催している。
7月の無観客試合で再スタートを切ると、後楽園ホールでの有観客興行も。さらに8月23日、9月4日と後楽園大会が続き、10月は横浜、11月は大阪でのビッグマッチが待っている。
8.23後楽園のメインイベントで組まれたのは、秀樹vs麻原将平。秀樹にとっては今年1月以来の試合であり、原口健飛にKOされた屈辱からの復活をかけた一戦だった。
「ここで負けたら相手にされなくなる。ただのランカーになってしまう」
そんな危機感を持って臨んだ試合だが、同時にメインイベントであることも強く意識していたという。
「勝つためではなくKOするために闘う」
序盤の秀樹は、やはり慎重に見えた。麻原のパンチを警戒し、ディフェンスを意識していたという。負けられない試合だから当然ではある。しかし「ディフェンシブになりすぎてもメインの仕事ができない」と、虎視眈々とチャンスをうかがっていた。
左のロー、ミドルを的確にヒットさせると、2ラウンドに一瞬の隙を突くハイキック。鮮やかにダウンを奪うと、3ラウンドに連打でたたみかけ、試合を終わらせた。
復活の勝利をあげた秀樹に、真っ先に駆け寄ったのが妻のいつかだった。いつかは世界タイトルを獲得した元キックボクサー。秀樹の試合にはセコンドにつき、夫婦二人三脚で闘ってきた。
試合前のリモートインタビューにも家族で登場。いつかはお腹に2人目の子が宿っていることを明かした。
秀樹は「自分で自分の首を閉めちゃうタイプ」だと言う。今回の試合に向けてもプレッシャーに苦しんだ。そんな秀樹を、いつかは「(お腹に)赤ちゃんがいるから勝てるよ」と励ましたそうだ。そのポジティブさに救われた秀樹は「弱い自分と向き合って、いい練習ができました」と語っている。
次の目標は、秋のビッグマッチで行なわれる-63kgのトーナメントだ。すでに自分に勝った白鳥大珠、原口がエントリーを決めており、試合後には「僕が出ても文句ないですよね」とアピールしてみせた。インタビュースペースでは、こんな言葉も。
「ここまできたらやるしかないでしょう。因縁の2人に、僕のいい部分を見せられてないですから。僕の実力はこんなもんじゃない」
家族の後押しも力にして、キャリアの分岐点となる試合で結果を出した秀樹。大逆襲への期待が高まる勝利だった。
文/橋本宗洋
写真/RISE