（路上プロレス、電流爆破ともに初体験となる）
8月27日にDDTが開催する路上プロレスは、何から何まで異色だ。
もちろん路上プロレスというだけで異色なのだが、会場は都内の遊園地・としまえん。試合は8月いっぱいで閉園するとしまえんの公式さよならイベントとして行なわれる。
なおかつメインイベントが電流爆破デスマッチ。大仁田厚＆高木三四郎＆クリス・ブルックスvs竹下幸之介＆青木真也＆宇野薫の6人タッグ戦である。「としまえん路上電流爆破」に青木、宇野と現役のMMAファイターが2人も登場するわけだ。青木はDDTにレギュラー参戦中、ベルトも巻いており、宇野もプロレスの経験がある。とはいえ宇野にとっては初の路上プロレスにして初の電流爆破となる。
かつて佐藤ルミナとの激闘を制して修斗王者となり、UFC参戦やHERO's、DREAMで一時代を築いた宇野。日本総合格闘技界におけるレジェンドの一人であり、昨年11月には3年7カ月ぶりの“涙の勝利”が話題になった。
ベテランになり、若い選手を相手に苦闘を重ねながら存在感を発揮し続ける宇野。今回のDDT参戦を意外に思う格闘技ファンがいるかもしれないが、もともと宇野は幼少期、初代タイガーマスクの時代からのプロレスファンだ。修斗でプロデビューする前にはパンクラスの入門テストを受けている。憧れの選手は船木誠勝だった。
ただUWF系だけでなく、ファンとしては幅広く観戦。8月21日に行なわれた記者会見兼爆破実験に参加すると、学生時代に大仁田の試合を見に行ったというエピソードを披露した。1991年3月26日、地元・横須賀市総合体育館でのFMWの興行だったそうだ。それでけでなく大仁田の前回の（7度目の）引退試合や『FMW対UWF』と謳われた大仁田と船木の対戦も会場で観戦している。
「FMWとUWFが交わるって、それぞれの団体があった当時から考えると凄いですよね。やるなんて思ってなかった。化学反応が見たくて友だちと行きました。その時も“大仁田さん凄いな”って思いましたね」
（爆破実験では爆風を浴び「想像以上でした」）
会見後に話を聞くと、その口ぶりは完全にプロレスファンなのだった。会見ではリモート参加の大仁田と初めて会話し、その言葉に「はい！」と答えて「リスペクトしすぎですよ！」と特別立会人のクロちゃんに突っ込まれていた。が、これは仕方がないというか当然のことだろう。レジェンドファイターの宇野にとっても、大仁田は少年時代から見てきた「憧れの」人気プロレスラーなのだ。
「アイドルよりもプロレスラーのほうが緊張するというか照れてしまうというか。ファンに戻っちゃいますね（笑）」
そんな相手と対戦することになったのだから不思議なものだ。練習をともにする青木に誘われての参戦には、正直なところためらいもあった。爆破実験を見て、その迫力に「想像以上でした。動揺してます」と思わずもらしてもいる。
想像すらできなかった爆破マッチ参戦と大仁田との対戦。それを宇野は「挑戦」だと言う。
「やることで得られるものがあると思ってます」
宇野はこれまで、2000年の第1回『猪木祭り』などで散発的にプロレスの試合を行なってきた。そんな宇野を触発したのが、DDTに参戦する青木だった。
「青木くん、なんでそこまで一生懸命プロレスやってるんだろうって。総合だけでもいいはずだし、それだけの強さもあるのに。だけどプロレスをやることが格闘技に活きるという面もあるんでしょうね。それがどういうことなのか、自分も感じてみたい。前にプロレスの試合をやった時とは、また違うものを感じるんじゃないかって思います。それにこういう時代、こういう時期なので、何か自分でも挑戦したいなと」
まだ総合格闘技も諦めたわけではないので、と宇野。むしろ今回の試合を総合格闘家としての成長の糧にしたいと考えている。
「爆破マッチ、しかも路上プロレス。いろんな経験が自分のプラスになると思います。だから体験してみたい」
MMAやグラップリングと変わらない気持ちで路上電流爆破にも臨む。曰く「宇野薫らしい試合、気持ちが伝わる試合ができれば」。異色の試合だけでなく、その経験が宇野薫という格闘家に何をもたらすか。そこまで含めて注目したい。
文／橋本宗洋
DDT LIVE! ~さよならとしまえん~大仁田厚負けたら即引退SP 路上電流爆破
