マイナンバーカードをスマホで読み取り“デジタル身分証”に 全国に先駆けてオンライン化を推進する加賀市長を直撃
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 「窓口に行ってやり取りしたり、書き直したりと、みなさん負担をかけている。役所に足を運ばなくて済むような仕組み一日も早く作ることが大事だ」。

 行政のデジタル化が叫ばれる一方、ハンコをめぐる議論や混乱を極めた「特別定額給付金」のオンライン申請など、取り組みの遅れが相次いで表面化している。そんな中、全国に先駆けて行政手続きのオンライン化を進めているのが石川県加賀市だ。

・【映像】「役所に足を運ばなくてもいい仕組みを作る」加賀市長に聞く

 ロボットの世界競技大会『ロボレーブ』を毎年開催(2014年~)、プログラミング教育を開始(2017年~)、ブロックチェーン都市宣言(2018年)、スマートシティ宣言(2019年)など、先進的な取り組みを相次いで打ち出してきた。

 そんな加賀市の宮元陸市長が13日のオンライン説明会で発表したのが、デジタル身分証アプリ「xID(クロスID)」だ。 人間ドックの助成金申請を皮切りに、今年度末までに補助金申請やイベント予約など50以上の申請を可能にするという。「マイナンバーカードをスマホに読ませることで、申請のたびにマイナンバーカードを持ち歩かなくてもよくなる仕組みを使った行政サービスの電子申請は全国の自治体で初。市民一人ひとりが持ついわゆるスマートフォンが公的個人認証を済ませた身分証へと進化する画期的なアプリだ」。

 その上で宮元市長は「一般論だが、デジタル化を進め、個人のデータを利活用して健康に関する施策を拡充していけば、“個人情報の取り扱いはどうなんだ”という意見は出てくるだろうし、議会でそういうことを言われる方もいる。しっかりとお預かりして、地域のため、個人の健康のために、責任持って管理していくということが大事だ。ただ、マイナンバーカードが普及するためには、行政サービスだけではダメだ。銀行など、民間とつながっていかなければ利便性は高まらない。我々行政がその橋渡しをしていく努力をしなければ、本当にもったいない」と指摘する。

 人口6万5695人(7月1日時点)の加賀市は、60代以上が2万7017人と約4割を占める。しかしこうした取り組みによって、マイナンバーカードの普及率は全国平均が17%であるのに対し、加賀市では26日現在、52.1%に達しているという。「最近では60代、70代の方々でもスマホを持っているし、利便性が向上するということであればということで、大きな反対も無かった。コロナ対策、経済対策とマイナンバーカードの申請の促進を兼ねて、『かが(応援)商品券』なども発行した。インセンティブがないとなかなか難しい」。

 豊かな水と自然、九谷焼、温泉などで知られる加賀市だが、県庁所在地である金沢市に対するライバル意識もあるようだ。「加賀温泉駅」を北陸新幹線の停車駅にすべく、「金沢の兼六園や21世紀美術館は今も大勢の観光客で賑わっている。金沢に全部持ってかれてくやしくないのか。金沢なんかに負けないぞ!!」と訴える強烈な観光PR動画も話題を呼んだ。

 「加賀市は10年前、このままだと20数年後には行政運営が非常に厳しくなる“消滅可能性都市”だという指摘を受けた。片山津という有名な温泉地と物作りの産業がある街だが、新しい雇用を生み出す構造、産業集積が起きにくい構造になっている。そんな中、第4次産業革命という大きな流れに世界が動き出していた。国や地方もいち早くキャッチアップしていかないと、取り残されるだろうという思いがあった。そこで私の独断と偏見というか、強い思いで進めてきた。人材の育成と教育への投資、そしてイノベーションが大きな柱だ。“こういうチャレンジングな街であれば”と、企業が何かやってみたいと感じてもらえる街にすれば、消滅可能性都市から脱却していけるのではないかと考えている」。

 そこで参考にしたのが、行政サービスの99%をオンラインで処理できるというIT先進国エストニアだ。「結婚とか離婚とか、あと不動産以外はほぼオンライン上でできるといわれている。短時間で法人登記が可能になるイーレジデンシー(電子居住)などを導入、先進的な企業をどんどん誘致し、新しい産業を生み出していこうという大目標も立てているので、私も“イー加賀市民”を作りたいとも考えている。もちろん加賀市が便利になれば、それが独自の魅力になるという意見にも一理あるが、基本的には国がどこへ行っても同様のサービスを受けられるようにするのが本来のあり方だ。我々はファーストペンギンとして、うまくいけば横展開して、日本中のみなさんに利便性を分かち合えるようなかたちにしていきたい」。

 そこで課題となるのが、IT分野、特に技術的部分に長けている職員がいないこと、文書の保管・決済方法・条例の整備が必要であること、紙・ハンコ主義からの脱却が難しいといった問題だという。「当初は“素人集団”で、私を先頭に職員が暗中模索でやってきた。しかし専門家ではないので、ドンと伸びていくのは難しい。ベンチャー企業さんとのお付き合いの中で知見を得たり、アドバイザーに教えを請うたりもした。今は内閣府の人材の派遣制度も利用し、専門職の方に市に来て頂くなど、スタッフを増強している」。

 加賀市のアドバイザーも務める慶應大学特別招聘教授の夏野剛氏は「今、規制改革推進会議では内閣も含めてイーガバメントをやるんだという宣言まで出している。しかし行政手続きのほとんどは地方自治体だ。どんなに政府が旗を振って仕組みを用意しても、首長がやる気にならないと何も進まない。みんな加賀市を見習ってほしいし、宮元さんみたいな首長がどんどん出てきてほしい」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

「役所に足を運ばなくてもいい仕組みを作る」加賀市長に聞く
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