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(瑞希戦。得意の頭突きを狙う伊藤。表情や動きのダイナミックさにも磨きがかかっている)

 東京女子プロレス恒例のシングルトーナメント・東京プリンセスカップは、瑞希が史上初の2連覇を達成して幕を閉じた。準決勝、決勝が行なわれたのは8月29日の新宿FACE大会。準決勝の組み合わせはストーリー性のあるものだった。山下実優vs中島翔子は、団体初の後楽園ホール大会のメイン(初代シングル王座決定戦)と同じカード。瑞希と伊藤は元タッグパートナーだ。

 伊藤にとっては瑞希からの初勝利をかけた大事な一戦でもあった。試合内容は、これまでの両者の対戦で最もスリリングだったと言っていい。瑞希がドロップキック、フットスタンプなど機動力を活かした攻撃を見せ、伊藤は場外でのボディスラム、逆エビ固めとラフな闘いも。瑞希のボディアタックを頭突きで迎撃するという伊藤ならではの動きも光った。

 最後に上回ったのは瑞希の執念か。伊藤の頭突きをブロックすると自ら頭突きを放ち、フィニッシュのキューティースペシャルにつなげた。瑞希は決勝で中島も下して優勝。11月7日のビッグマッチ、TDCホール大会で現タッグパートナーの坂崎ユカが持つシングル王座に挑戦する。

 結果として瑞希超えも優勝もかなわなかった伊藤だが、ベスト4に残ったトーナメントでの闘いには手応えもあるという。

「前とは明らかに闘い方が変わって、それが正解だったなと。このまま伸びていきたい。最初はガムシャラに頑張るだけだったけど、もうそれだけじゃない。それはダサいなって」

 アイドル出身の伊藤はデビュー当時から注目され、実際にインパクトを残してきた。闘い方はメチャクチャだが、そのメチャクチャさが面白いというタイプだ。マイクを握ればプロレス界にもアイドル界にも噛みつきまくり、それが記事の見出しになった。

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(トーナメント優勝は瑞希。王座挑戦へ「ずっとずっと挑戦したかった」と思いを明かした)

 勝っても負けても面白い。そういう選手なのだと自分でも思っている節があった。しかし選手である以上、やはり結果がほしくなる。負けて「面白かったよ」と言われても素直には喜べない。だから「あんまり言いたくないけど練習してる」。その結果が、第2のシングル王座インターナショナル・プリンセス戴冠にもつながった。

 そして今回はトーナメントのベスト4だ。瑞希戦も腰への攻撃で必殺技・伊藤デラックスにつなげようという組み立て、技のタイミングや精度など、それこそどこに出しても恥ずかしくない闘いぶりだった。個性派のままでありつつ、実力派としても開花しつつあるのが今の伊藤だ。今回のトーナメントでは、それがより際立った。

 ただ、成長しているのは伊藤だけではない。東京女子は旗揚げ7年目の若い団体だ。選手も若く、数か月で見違えるような動きを見せることが珍しくない。瑞希vs伊藤は好勝負だったが、その直後にもう一つの準決勝で中島と山下が大熱戦を展開している。大技だけでなく、序盤のグラウンドから緊張感のレベルが違った。山下、中島、坂崎の旗揚げメンバー3人にしかできない試合、作り出せない世界というものが東京女子プロレスにはある。そこに11.7TDCで瑞希が挑むわけだ。

 伊藤はといえば、トップ戦線で闘う実力があることは誰もが認めるようになった。次は真のトップに立つための闘いだ。「よくぞここまで」だし「まだまだこれから」でもある。

「強くなるしかない。やることは一つ。努力しか答えはないから。それは今まで通り」

試合後、伊藤はそう語った。こういう言葉が似合う選手に、伊藤麻希はなっている。

文/橋本宗洋

写真/DDTプロレスリング

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