「全部が思い出」「カウントダウンボード見ないように」 人々の人生に存在した「としまえん」 きょう閉園で体験されるメンタルタイムトラベル
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 94年の間、幅広い世代に親しまれてきた「としまえん」。最終日のきょうは、朝早くから多くの人が閉園を惜しんで駆けつけた。

【映像】最終日の「としまえん」

 「6時半から来ています。どうしてもサイクロンに乗りたいのと、94年最後の日を一番で行きたいなと思って」

 「私は24年前からここのファンになりまして。有給使って8月11日から21日連続で来ています」

 「なんかもう…一言で言えないというか。成人式とか小学校のころの最初に遊びに来る所はとしまえんだったし、親になってからも連れてきてあげられたので、その日その日もう全部が思い出になってます」

 「今週は家族で毎日来ていて、上の子はまだ小学校なんですけど、この子が成人式を迎えるまであるのかと思っていたんですが信じられないです」

 いろいろな人の思い出に存在してきた、としまえん。そんな中、としまえんと人生をともにしてきたのが、渡辺孝一さん(60)。高校を卒業してから42年間、としまえん一筋で働いてきた。

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 「このカウントダウンボード、見ないように見ないように毎日していました。見るとやっぱり終わりがどんどん近づいているのがわかるんですが、なるべく見ないように。本当に今日なんだなと思います。(昨夜は)寝たんですが、途中で目覚めると眠れなくなっちゃって。やっぱり走馬灯のようにいろいろな思いが駆け巡ってしまって…。(この日が)とうとう来てしまったなと。いつか来るとはわかっていても、本当に来てしまうとこんなに寂しいんだなと感じています」

 渡辺さんはここに来る電車の中で思わず涙がこみ上げたという。しかし、今日で閉園といってもやるべきことは変わらない。

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 「やっぱりとしまえんの売りは“安全”です。安全を第一に考えて94年間業務してきましたので、その点、最後の日も安全で1日を終わりたいと思っています」

 一方で、来場した人たちには「笑顔で楽しんでほしい」と話した。

 「思い出に残る遊園地であってほしいので、楽しく笑顔で過ごしていただきたいと思っています」

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 としまえんを訪れたファンの中には涙を流す人も。閉園を惜しむ気持ちについて、明星大学准教授で臨床心理士の藤井靖氏は次のように話す。

 「これだけ多くの人が知っている遊園地が、まさかなくなるとは思っていないショックと、心理学でいうノスタルジア。昔を懐かしむ気持ちについては割と古くから研究されていて、昔よく行ったり使っていたりしていたもので、最近は離れている場合により強くなる傾向がある。強めの感情は本人の心に残っているが、記憶は行ったり使ったりしないと薄らいでいき、期待やポジティブな想像が膨らみやすい。また、最近行っていなければ他の娯楽施設と比較対象になりにくく、いい意味で記憶が美化された“唯一無二”の存在になっていることが、ノスタルジアを引き起こすとも考えられる」

 また近年、「メンタルタイムトラベル」という概念が注目されているという。

「全部が思い出」「カウントダウンボード見ないように」 人々の人生に存在した「としまえん」 きょう閉園で体験されるメンタルタイムトラベル
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 「人は精神的にネガティブな状態の時にノスタルジアを感じやすくなる一方で、実はポジティブな側面として、自分の今や未来を助けるために人間に備わった機能ではないかともいわれている。メンタルタイムトラベルをして昔を懐かしむことで、今の幸福感が高まったり、社会との一体感を実感することにつながったり、自尊心を高めたりすることが分かっている。確かに、大人が自分の学生時代のことを考えるとほっこりすることがあると思う。そして複数の実験から、メンタルタイムトラベル、ノスタルジアが未来の想像や自分のこれからに関するプランニングに役立っているという研究もある。将来のことを考えるためには、自分の過去の記憶の断片をストーリーに沿ってつなぎ合わせることが脳の機能として必要で、それに役立っているということ」

 なお、としまえんが閉園した後は、ハリー・ポッターの世界観を反映したテーマパーク「スタジオツアー東京」が2023年前半にオープンする予定となっている。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

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