「一刻も早く同性婚を認めて」  パートナーシップ制度では解消されない課題、“新たな結婚・婚姻のカタチ”の議論も
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 「会社に行くために一歩外に出た瞬間から、異性愛者の仮面をかぶるみたいな感じ」。

 そう苦しい胸の内を語ってくれたのは、同性のパートナーがいるEさん(20代)。同性婚を認めない民法などの規定は違憲だとして去年2月に提起され、現在5カ所の裁判所で審理が続けられている「結婚の自由をすべての人に」訴訟の原告でもある。8月には、法廷で尋問も受けた。

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 そんな彼女が利用するのが「同性パートナーシップ制度」だ。自治体が同性カップルの関係を婚姻と同等のものと認め、証明書などを発行する制度で、5年前に東京・渋谷区と世田谷区で始まったのを皮切りに、9月1日現在、全国59の自治体が導入している。

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 ただ、この制度には法的な力がないのが現実だ。「私のパートナーが事故に遭って病院に運ばれた場合、駆け付けた私は家族として扱ってもらえるのかどうか。災害が起きて避難所で生活せざるを得なくなった場合、2人で暮らすことができるのか。そんな不安についてお話した」。法廷でEさんは、結婚できないことによる不利益が計り知れないと訴えたという。

■理解が進んでいない「パートナーシップ制度」

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 現在では公正証書を作成する同性カップルも増えてきているといい、ある程度の不安材料もカバーできるというが、それでも日本の婚姻制度に同性婚は必要だと訴える。「確かにパートナーシップ制度によって、自分たちの存在、関係性が公的に認められたという安心感は出てきたし、同性婚に向けた第一歩と受け止めている方も周りには多い。その一方で、例えば私が駐車場を借りに行った時、パートナーシップ制度の書類を見た業者さんに“これってどういうこと?”と言われた。企業も含め、周知を徹底していく必要もある。やはり法律で認められた婚姻ではない以上、全ての不安が消えたわけではない」。

 Eさんが参加する「結婚の自由をすべての人に」訴訟の弁護団メンバーでもある寺原真希子弁護士も「必要に迫られた自治体が仕方なくやっている制度。婚姻と同じ権利が法的に与えられているわけではないので、不便は絶対に解消されない」と話す。

■なぜ国会での議論は進まないのか

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 欧米、そして台湾などでも同性婚が制度化される中、なぜ日本では実現できないのだろうか。寺原弁護士は「2018年の調査では、実に78%の方が賛成している。しかし民法を改正するのは国会なので、やはり国会議員の理解が進んでいないということが大きいと思う。反対派の議員の方がおっしゃるのは、主に伝統的な婚姻制度が崩壊する、少子化になる、子どもがかわいそうだ、という3点だ」と話す。

 「婚姻制度を大転換させようと思っているわけではなく、今の婚姻制度の中に同性カップルも入れてくださいというだけの話だ。少子化についても、生物学的に2人に子どもはできないので、同性婚を認めるかどうかとは無関係だ。そして子どもがかわいそうという見方も、マジョリティ側が持つ差別・偏見であって、同性婚の反対理由に挙げるのはおかしい。私が代表を務めるマリッジ・フォー・オール・ジャパンでも国会議員の方々にお会いしているが、野党の方は賛成だし、与党の方も、個人的にお会いすると“いいんじゃない”という方が結構いらっしゃる。ただ、党として気持ちが一致するところまではいっていない。やはり“これを通さないといけない”とう思いに至るまで、実感が伝わっていないのだと思う」。

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 七崎氏も、「私も“伝統的な家族”という話をよくされてきた。しかしそれは一定数の人が結婚を許されていないという、差別の上に成り立っているものだと思う。それを今後も続けていくのかどうかだ。また、私が結婚式を挙げた時にも、“子どもを持つのはやめてくれ。子どもがかわいそうだ”といろんな人に言われた。ものすごくプライベートな話なのに、同性カップルだからといって簡単に踏み込まれてしまうことに、すごく悔しい思いをした」と語った。

■一気に進めるべきなのか、段階的に進めるべきなのか

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 一刻も早く同性婚を導入すべきとの立場を取る作家の乙武洋匡氏は「差別の多くは無知や不勉強から起こっている。しっかり勉強した上で反対しているのではなく、“こういうものに反対するのが保守だ”という思い込み、テンプレとして言っている方も多いと思う。例えば保守派として知られている自民党の稲田朋美議員はパレードに参加するくらいLGBTQへの理解が深く、同性婚にも賛成の立場だ。稲田さんは“保守からリベラルに転向したのかと言われるが、そうではない。家族を大切に思う気持ちが保守であって、LGBTQの方々も家族になれる仕組みを作るべきなんじゃないか”と言っていた。非常に筋が通った意見だと思った」と話す。

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 他方、元経産官僚の宇佐美典也氏は、「どの程度まで婚姻と同等の権利を認めるかは別として、私自身は前向きだ。ただ、とても話しづらいことだが、私の身近にも強硬に反対している人がいる。ナンセンスと思われるかもしれないが、家や戸籍そのもの守ることが自分の使命で、次の世代にも継いでほしいという、まさに伝統的な家族観を持っている人だ。つまり、家族の概念をどの程度拡張するかという問題だ。そして、どの国にも“なんとなく嫌だ”と思っているが、口には出さないサイレントマジョリティーがいると思う。政治家がこの問題を取り上げようとしないのも、そういう理由で票にならないからだ。そういう人たちに対する配慮もあっていいし、台湾が特別法みたいなものを作ったように、まずは既存の制度とは別の制度を作り、やってみて問題ないから一緒にしようという進め方があってもいいのではないか」と問題提起する。

「一刻も早く同性婚を認めて」  パートナーシップ制度では解消されない課題、“新たな結婚・婚姻のカタチ”の議論も

 「婚姻には民法、そして手続法として戸籍法がある。私はこの二つを切り分けて考えるべきだと思っている。世の中には、この戸籍こそが家族を体現するものだと思いこんで反対している有権者が多いわけなので、同性婚向けの戸籍みたいなものを作ればお互いにウィン-ウィンになるのではないか。そもそも日本の戸籍制度は、戦前は家単位だったのを、戦後に個人単位にしようとしたが、紙不足だとして家族単位になった。本当は個人単位にした方がいいんだから、そのための流れを作るべきだと思っている」。

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 寺原弁護士は「別々の制度にした国のほとんどが、それでは不平等だということで同性婚に変えた。問題がないから一緒にしようではなく、問題があるから一緒にして、同性婚にした。やはり婚姻とあえて別枠にし続ければ、異性カップルと同じものが同性カップルには与えられないんだというメッセージのようなものが継続してしまう。私たちが訴訟をしているのも、民法を改正するためだ。異性間であっても同性間であっても婚姻の届はできるという条文が必要だが、それ以外は“夫・妻”を“婚姻の当事者”、“父・母”を“親”と、表現を変えるだけでいいほとんどが解決する。野党が提出した法律案も、そのような変更点になっている」とした。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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