耐震性に課題のある避難所、海水面より低い土地にある避難所も…お金のある人はホテルに?…コロナ禍で浮き彫りになる避難所問題
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 台風10号の直撃で浮き彫りとなった、コロナ禍での避難の問題。

 自治体は避難所として用意した体育館などの多くが“三密状態”になるのを防ぐため受け入れ人数を半減。それにより、自費でホテルや旅館への避難を選択する人も現れた。実際にホテルを利用した宿泊客の中には「避難所よりも安全だと思った」「Go To キャンペーンで泊まれた。割引がいっぱい付いていた」と話す人もいた。

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■予算・場所の確保に苦しむ自治体も

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 内閣府では4月、コロナ対策の観点から避難所の収容人数を考慮すること、出来る限り多くの避難所の開設を図ること、さらにホテル・旅館の活用等の検討を全国の自治体に要請していた。一方、今回の台風で避難勧告・避難指示の対象は一時400万5000世帯・857万7000人に上ったことから、満員になってしまう避難所が現れた。

 災害危機管理アドバイザーの和田隆昌氏は「まず857万人と聞くとものすごい人数のように思われるかもしれないし、今回、気象庁が過去最大級の台風であると発表したので避難した人も多かったとは思うが、もともと避難所の収容人数は全員が避難するという想定ではない。実際に避難する割合=避難率は全国平均で5%くらい、西日本豪雨でさえ10%台だ。また、基本的には“早い者順”ではなく、災害によって自宅で生活することができなくなったと判断された人、高齢の人、小さなお子さんがいる人などが優先される」と説明する。

 7月豪雨の被災者約500人が未だ避難所生活中で、新たな避難者の受け入れが困難となった熊本県人吉市では300人が広域避難。県・市がバス22台を手配し、約300人が70km先の熊本市内にある県の施設などに緊急避難した。

 「政府の指示を受け、各自治体ともに苦しんでいるというのが現状だ。予算の問題、場所の確保の問題もあり、徹底するのは非常に難しい。また、ホテル・旅館が近くにあるとは限らず、実際にこういったことをできる自治体というのは非常に少ないと思う。災害の種類によっても違うし、人吉市のケースも、たまたま熊本市内に対応できる場所があったからということだと思う」(和田氏)。

■耐震性に課題、海水面よりも低い場所にある避難所も

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 また、和田氏は「避難所そのものの安全性も問題だ」と指摘する。

 「例えば東京都の下町などでは地震の際の避難所と水害の際の避難所が一緒になっていて、実は耐震性が脆弱だったり、海水面よりも低い場所にあったりする避難所もある。それは関西でも同様だ。そこは自分で判断するしかない。今回は台風による避難の話だが、これが首都直下地震や南海トラフ地震といった災害の場合、ハザードマップも違うし、避難の仕方や備蓄の仕方も違う。それらが体系的に住民に知られるようにする努力も必要だ。ご存じない方も多いと思うが、住民のための避難所を設定していないマンションも少なくない。例えば港区、中央区、千代田区などでは、家屋が浸水したり壊れたりした人が避難する場所は一部用意するが、基本的には“地区内残留地区”といって、被害が回復するまで自宅で待って下さいということを指導している」・

 また、東京都の「江東5区」(墨田・江東・足立・葛飾・江戸川)の「大規模水害広域避難計画」では、大規模水害によって浸水する可能性がある区域の住民を約250万人(人口の9割以上)とする一方、ほとんどの地域が浸水した場合には5区外の親戚・知人宅などへの広域避難を48時間前から勧告することとなっている。

 和田氏は「人吉市は数百人というレベルだったので避難ができたが江東5区のような規模ではまず不可能で、まさに自助に頼るしかない。それも交通手段がなければできない。かなり大規模な支援やシステム作りをしない限り、広域避難の実現はなかなか難しい」とした。

 さらに、避難所に関する情報伝達の問題も横たわる。「特に高齢者はネットを使った情報収集も難しいので、現場では未だに広報車で回ったりするしかないのが現状だ。ただ、それも台風や大雨の時にはほとんど機能しない。避難所においても、自衛隊の給水車が来るといった情報は、貼り紙など、本当にアナログなものになる」。

■お金のある人だけが避難できることに…?

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 今回注目を集めた宿泊施設への避難。熊本県水俣市のある宿泊施設では、鹿児島からの予約も入り満室に。ほかの宿泊施設でも、避難してきた人によって満室になるケースが見られたという。

 クリエーターの陳暁夏代氏は「公共の避難所は無料だが、ホテルが避難所代わりになってしまえば、それこそ“お金の戦い”になり、避難できない人が現れてしまうと思う」と指摘。和田氏も「非常に大きな問題だ。ただ、自治体はほとんどが赤字経営で、そういった部分に割ける予算はほとんどない」とした。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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