コロナによって事業環境は一層厳しく…中小企業を成長させるための政策とは
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 新型コロナウイルスに関連する倒産件数が8日までに500件(帝国データバンク)、廃業の危機にあると答えた企業も3日までに単純計算で27万社を超えた(東京商工リサーチ)。

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 また、8日にはリーマンショック時を超える戦後最大の落ち込みに動揺が広がった四半期の実質GDP成長率(年率換算)は下方修正され、−28.1%となった。さらに全国の労働者1人あたりの7月の現金給与総額の平均は4カ月連続のマイナスを記録するなど、日本経済は厳しさを増している。

コロナによって事業環境は一層厳しく…中小企業を成長させるための政策とは

 とりわけ苦境に立たされているのが、日本の会社の99%以上を占める中小企業だ。6月には中小企業庁が成長性ある中小企業の労働生産性を高め、より多くの利益を生む会社に育てる後押しすることを目的に「制度設計ワーキンググループ」を始動させた。

 その委員も務める滝澤美帆・学習院大学経済学部教授は「経済の停滞が長く続き、少子高齢化で人口も減ってきているので、経済規模をどのように維持していくかを考えなくてはならない状況だ。その中で、中小企業の生産性を上げていくことが大事だろうという話になっている。例えば大企業と中小企業では生産性に大きな差があることが知られている。それは大企業の方がより多くの設備投資をし、IT化や物を作るために必要な機械などが充実しているため、効率的に物が作れるからだ。ここで中小企業が規模を拡大して設備を充実させたり、IT化を進めて付加価値のある財・サービスの提供ができるようにしたりすれば、利益が増えて給与も増えるという好循環が生まれるかもしれない。そういう理由で中堅企業へのスケールアップが挙げられていると思う」と説明する。

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 中小企業の業績に目を向けると、「全体的には赤字決算企業は減少傾向」にあるものの、「62.4%の中小企業が赤字決算」となっているという(2018年度・国税庁より)。中には政府や銀行の支援によって存続している「ゾンビ企業」「ゾンビ会社」というものもあるようだ。

 「大企業について、大きすぎて潰せない“Too big to fail”という有名な言葉があるが、最近では中小企業でもゾンビ化しているところが増えているのではないかという指摘もある。日本では生産性の高い企業がシェアを拡大するとか、生産性の低い企業が市場から退出することで経済全体の生産性が改善するというメカニズムが十分に働いていないということが経済の分析で分かってきている。その要因の一つに、このゾンビ企業があると考えられている」。

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 こうした状況を改善させるための方法として、例えば日本酒専門メディアによる老舗酒屋の買収や、鋼材卸の広域中小商社による土木建築用品販売の地方小規模企業の買収など、中小企業同士のM&Aによる相乗効果を目指すケースもあるようだ。

 「M&Aだけを積極的に推進していくというトーンで議論が進められているわけではなく、あくまでも手段の一つとして検討されていると私は理解している。M&Aは事例ごとに特徴があり、企業規模、業績、業態も異なるので、一様に類型化するのは難しいと思う。ただ異業種ということでいえば、後継者のいない介護系の事業者と、介護事業に参入したい建築系の事業者がM&Aをして、何か新しいビジネスを作るといったことがあり得ると思う。私の印象では、基本的には民間の専門事業者の力を借りると思うが、政府としてもM&Aのガイドラインや企業間のマッチングを促進するための民間のM&Aプラットフォーマーとの連携も推進していると思う」(滝澤氏)。

 他方、中小企業向けのアンケートを見ると、「大企業を目指す7.7%」「中小企業に留まりたい37.5%」「特に考えていない54.8%」と、必ずしも規模拡大を望んでいるというわけではなさそうだ。理由には「人材をマネジメントしやすいから」「税金・補助金のメリットが大きいから」「大企業が受ける各種制約を回避したいから」といったことが挙げられている。

 「企業によって経営の目的はそれぞれなので、すべての企業が規模を拡大し、中小企業から卒業してくれとお願いするということではないと思う。もちろん成長を指向するやる気のある中小企業に関しては、例えば中堅企業に成長しても引き続き中小企業向け支援策を継続するなどの措置を講じることもできると思う」(滝澤氏)。

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 リディラバ代表の安部敏樹氏は「役所や銀行によるデューデリジェンスのプロセスに入ることで、例えば“私が人生をかけて作ってきたこのラーメン屋さんの価値はこの程度だったの”とショックを受ける方もいる。ただ、それがきっかけで、お子さんとのコミュニケーションが始まったという人もいる。後継者がおらず、第三者に承継する場合も、要はM&Aだし、結果的にお子さんが継ぐ気になるという事例もある」と話す。

 その上で、「生産性とか効率性の問題ではなく、日本にはゼロから事業を作れる人間が少ないという課題がある。自分で事業を作って、新しい価値が出てきた時に初めて値段をつけよう、その価値をより多くの人に届けるためにはどうすればいいのか、という話になってくる。そういう面からも中小企業に対するサポートをしないと本質的な解決にはならないだろう。また、中小企業の括りが大きすぎるという問題もある。例えばコロナの持続化給付金も、メンバーが3人の中小企業と、1000人近い中堅企業とでは全く違う」との考えを示した。

 ジャーナリストの佐々木俊尚氏は「日本は労働生産性が低いと言われて続けてきたが、それは労働者の質が低いからではない。要因として一つとして言われているのは、中小企業が多すぎるということだ。同じように労働生産性が低いスペインやイタリアも同様だ。一方、労働生産性が高いアメリカには大企業も多い。それに加えて、小さなスタートアップ企業もたくさんあるが、すごいのは数人の会社があっという間に大企業になってしまうことだ。Googleだって創業から20年ほどしか経ってない。結局、日本の問題は大企業が長生きしてしまって、中小企業がそれ以上伸びることができない。だからそれを突破できる素地を作るのが大事だ」と指摘した。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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