「この経験を生かして新しいチャレンジをしたい」コロナ禍で売上が激減、倒産を選んだ若手飲食店経営者のリアル
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 帝国データバンクが先月発表した7月の倒産件数は847件。政府も様々な支援策を講じる中、飲食業界に限れば、年間最多ペースで増えているという。同社の赤間裕弥・東京支社情報部長は「3月、4月と、(例年より)約15%~16%増加してしまった。このままいけば、倒産件数が年間1万件という予想になる」と懸念を示す。これが現実となれば、リーマンショックの余波による2013年以来、実に7年ぶりのことだ。

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 中小企業の事業再生に詳しい宮原一東弁護士は「飲食業、観光、イベント、ウェディングからの相談が多い。4月、5月は政府系金融機関から融資が受けられていたケースがあるが、そろそろそれも尽きてきたとか、再度の借り入れが難しくなったといった相談が増えてきている」と話す。

「この経験を生かして新しいチャレンジをしたい」コロナ禍で売上が激減、倒産を選んだ若手飲食店経営者のリアル

 今年5月、『全店舗閉店して会社を清算することに決めました』というブログエントリを執筆し話題を呼んだ福井寿和氏(33)も、倒産という道を選択した一人だ。2014年に会社を立ち上げ、翌年から飲食店経営へ事業拡大。地元の青森や宮城でカフェなど5店舗を経営、年商は1億5000万円に達していた。

 そこに襲いかかったコロナ禍。売上は2、3割まで激減。とくに3月下旬は、1日10万円はあった青森の店舗の売上が、1万円を切ったという。当時の福井氏のツイートには、「今日の売上、新記録が出ました!!!5,136円 アカン!!」(4月14日)という悲痛な叫びが。

 減る客足。感染の可能性は、来店者だけでなく自分たちにもある。一方で、生活のためには働かなくてはならない…。皆が思い悩む中、福井氏は4月初めから段階的に店を休業。そして5月6日、全店舗閉店することを公表した。

「この経験を生かして新しいチャレンジをしたい」コロナ禍で売上が激減、倒産を選んだ若手飲食店経営者のリアル

 その2日後にアップしたのが、『全店舗閉店して会社を清算することに決めました』だった。

 「融資で継続するという考え方もあるが、それは返すあてがあって初めて借りるものだ。そもそも私が経営していたカフェは、純粋にお腹を満たすというよりも、カフェそのもの楽しんでもらいたいというコンセプトだ。コロナのリスク、ソーシャルディスタンスが言われる中で、わざわざ雰囲気を楽しみに来るお客さんが果たしてどれだけいるか、その自信が持てなかった。やはり“ニューノーマル”とか“新しい生活様式”の中、私の店は明らかに生産性が低い。緊急事態宣言が解除されたとしても同じだ。そういう中で借り入れをしたとしても、財務的に非常に厳しくなり、明るい未来を描くことができなかった。また、私自身、精神的なダメージが大きかった」。

「この経験を生かして新しいチャレンジをしたい」コロナ禍で売上が激減、倒産を選んだ若手飲食店経営者のリアル

 前出の宮原弁護士は「そもそも借金があるからとか、赤字だから倒産するというわけではない。資金がつながらないから倒産になる。その資金を維持するために、入りを増やして出を抑えるということができればいいわけだ。しかしコロナの中では入りを増やす=売り上げを増やすのは簡単ではない。そこで政府や自治体から給付金を得たり、政府系金融機関の融資を受けたりするわけだ。一方、出については税金や金融機関への支払いを猶予してもらうということが考えられるし、家賃の支払いを待ってもらっているという方もいる。コロナ禍なので業者に支払いを待ってもらうということもあるし、通常だったら受けてもらえないような返済猶予を受け付けてもらえたり、経営者に同情してもらえたりすることも多い」と話す。

「この経験を生かして新しいチャレンジをしたい」コロナ禍で売上が激減、倒産を選んだ若手飲食店経営者のリアル

 「最近では中小企業再生支援協議会という公的機関が金融機関に返済を待ってもらいながら、新規融資の支援をしてもらう“新型コロナ特例リスケジュール”というものが始まった。また、自力では資金が間に合わない場合に、直ちに破産という選択肢を選ぶのではなく、それを回避すべく事業計画を練り、頑張るということがあってもいい。事業の引き受け先を探すということも考えられるし、“経営者保証ガイドライン”といって、うまく使えば信用情報を傷めずに再チャレンジができる制度がある。これはぜひ知ってもらいたいし、事業再生を専門に扱っている弁護士に相談することも大事だ」。

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 当面は失業手当で生活することになった従業員たちに新たな勤務先などを紹介していったという福井氏だが、自身も妻と2人の子(3歳・1歳)の家族がある身。借家の一軒家に新車、毎日外食の生活から、約9000万円の負債を抱え、妻の実家で暮らすことになった。車も、中古車に買い替えた。それでも宮原弁護士も言及する「経営者保証ガイドライン」の活用を目指して前を向く。

 「負債のうち4000万円は以前から借りていたものだ。売り上げを伸ばしていくという想定で借りたが、私が連帯保証人になっていたので、会社が解散すれば私に来るということだ。自己破産するといった方法もあるが、早期に事業整理をした経営者、誠実に経営してきた経営者に対しては、次のステップに行けるように免除してあげようというガイドラインが出ている。今はそこを目指してやっている。最悪な倒産は、何も払わずに逃げてしまうようなものだ。そんなことをしてしまえば、街から出ていかなければならなくなる。私は嘘偽りなく誠実に対応してきたつもり。取引先の皆さんもそこを評価してくださっている」。

 また、今回の経験を、福井氏は『全店舗閉店して会社を清算することにしました。コロナで全店舗閉店、事業清算、再出発を選んだ社長の話』(11月2日発売、実業之日本社刊」にまとめた。

「この経験を生かして新しいチャレンジをしたい」コロナ禍で売上が激減、倒産を選んだ若手飲食店経営者のリアル

 慶應大学特別招聘教授の夏野剛氏は「事業の形を変えるというのは、ある意味で前の事業を倒産させ、新しい事業を起こすということでもある。昔からある大企業だって、業態を変えているケースは山ほどある。もちろん倒産という手段を取らざるを得ないところまで追い込まれる経営者を減らすことは大事だが、前と同じことをやっていても何とかなると考えている経営者が多いのも事実だ。倒産が多いのが良いことだとは思わないが、21世紀以降は、そのような新陳代謝が求められている」と指摘。

 その上で、「僕も会社を潰したことがあるが、経営判断の中でも、事業を撤退するとか、会社を畳むというのが最も辛い判断で、本当に身を切られる思いだ。コロナの中でそういう判断をしたということを、僕は経営者として尊敬する。でも、その経験があればこそ、次は絶対に潰れないようなビジネスモデルを作りたいという思いも出てくる。ぜひ次の事業にチャレンジして頑張ってほしいと思う」と福井氏にエールを送った。

 夏野氏の話を受け、福井氏は「おっしゃる通り、ものすごくいい経験になった。この経験を生かして、次はずっと続けられるようなビジネスモデルをと考えているところだ。知人には様々な経営者がいるが、マンパワーでなんとか回している人も多く、気づくと倒産間際になっていた、ということになりかねない。その意味では、私は経営を客観的に見ることができていたと思う。この経験を元に、会社の支援をできたらいいなと思っている」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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