芦名星さん死去 自殺の可能性に臨床心理士が指摘する30代の危うさ「死ぬことの衝動が蓄積して顕在化する一つのポイント」「遺書がないことも多い」
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 女優の芦名星(あしな・せい)さんが9月14日午前6時半ごろ、東京・新宿区にある自宅マンションで死亡していたことが分かった。芦名さんは、2002年にモデルとしてデビューし、2008年にはベストセラー小説を映像化した映画「シルク」でのとした演技が世界から認められた。その後も、ドラマ「相棒」など数々のドラマや映画に出演。クールビューティーな演技で人気を集めていた。警視庁などによると、死因は調査中で遺書は見つかっておらず、現場の状況から自殺した可能性があるという。所属事務所のホリプロは、「大切な仲間の突然の訃報に今はまだ現実を受けとめることすら出来ない状態です」などと公式サイトでコメントした。

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 活躍中だった芦名さんの突然の訃報について、臨床心理士の明星大学・藤井靖准教授は、30代で自分のキャリアなどについて悩みを抱える人が多いと指摘した。「死ぬことの衝動が現れる場合、10代中盤くらい、思春期くらいから増えてくるもので、それがずっと蓄積してきて大きな顕在化のポイントの一つとなるのが、社会的にも落ち着きが伴う30代くらい」と説明。また「長い間逡巡した結果、自分なりの決意を、確信を伴って実際に行動に移したり、その気持ちを抑えられなくなったり、というようなことでいえば、30代は1つのキーでもあって、遺書がないことも多いのが近年の特徴」とした。

 30代という年齢について、「20代は社会的にも若いと見られていて、失敗が許されたり、自分も仕事覚える段階で無我夢中で日々をこなしていたりする。30代は精神的にも仕事的にも覚えてきて余裕が出てくる分、自分自身と向き合ったり考えたりする余地が広がる。自分のこれからについて悩むが、一方で仕事の密度もかなり充実してくるので、キャリアアップのための何かをするという時間が取れない。これからのステップアップを考えていきたいが、そのための準備ができないジレンマに陥る人は少なくない」と、その年代ならではの悩みがあるとも解説した。

芦名星さん死去 自殺の可能性に臨床心理士が指摘する30代の危うさ「死ぬことの衝動が蓄積して顕在化する一つのポイント」「遺書がないことも多い」
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 自らの命を断つような事態を招かないためにも、日々の精神的なメンテナンスは、もっと一般的になるべきだというのが、藤井氏の主張だ。世界的に見ても精神面のケアや周囲の人々による助けについて「既に追い込まれた状態はリスクが高い。文化としても、専門的な支援としても予防の観点が根付いていない日本は精神的定期点検の後進国」と、低く評価している。

 最も大事だという「ソーシャルサポート(社会的関係の中でやりとりされる支援)」についても総じて足りていない。「相談や自己開示し慣れていない人は、自分から気持ちを話したりとか頼ったりというのができにくい。しかし我々から見るとその中にはハイリスク群の人がかなりいる。仮に一度『別に自分は話なんてありません』と本人が言ったとしても、むしろそういう何でもないときに、日常を振り返って心を整理する癖をつけておくことは大事。周囲の人も定期的に関わり、『ちょっと話そうよ』と一言でも、雑談でも声をかけ続けることが重要。そうすれば、かなり高い確率で誰かが危機に気づくし、そういう事例は多い」と、本人でも気づかないような秘めた悩みや苦しみを見つけるための定期的なアプローチを求めた。

 心穏やかな時期はいいが、ストレスが強く降り掛かった時に、自分だけで処理できないことは誰にでも起こり得ることだ。「そういう時に人を頼ったり、自分が適切に必要な分弱音を吐いたりすることは、ストレスをうまく処理して解決して生きていくために、誰にとっても必要な作業だと思う。一人でできることには限界がある」と、自分だけで抱えこみ過ぎないことの重要さを改めて呼びかけていた。

【相談窓口】

・「こころの健康相談統一ダイヤル」

0570-064-556 ※相談対応の曜日・時間は都道府県によって異なる

ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)

30代で抱える悩み 芦名星さん急死
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