16日に行われた衆議院の総理大臣指名選挙では、菅義偉氏が314票を集め第99代内閣総理大臣に選出された。そのほか立憲民主党の枝野幸男氏(134票)、日本維新の会の片山虎之助氏(11票)、希望の党の中山成彬氏(2票)の名前があがったが、「小泉進次郎君、1(票)」と読み上げられると場内にはざわめきが。この1票を投じたのは、NHKから国民を守る党の丸山穂高議員だったことがわかった。
一方、参議院でも同じような状況となっていた。国民民主党の伊藤孝恵議員(45)に1票が投じられたのだ。投票したのは、無所属の寺田静議員(45)。寺田議員は、安倍前総理の辞任が報じられた時から誰に1票を投じるべきかずっと悩んでいたと話す。
「首班指名というのは会派ごとに首班指名で指名する方を決定するが、私自身が無所属の議員なので、従うべき方向性がない中でどういう方に思いを託していけばいいかと。あくまで私自身の考えに従って、自分の気持ちに曇りのない判断をしたいと思っていた」
考え抜いた結果、伊藤議員に投票することに決めた寺田議員。
「女性の方に総理になっていただきたいと。ついてはいろいろな問題意識を共有する、または解決の方向性が似ている伊藤孝恵さんにぜひ総理大臣になっていただきたいという思いで1票を投じた。子育てのこと、教育のこと、そして女性を取り巻く環境のこと。結局、この世代の女性の声が政治の場に反映されない限り、少子化の問題も解決していかないだろうと」
「女性を総理大臣に」。寺田議員は、女性の国会議員が増える必要性を訴える。
「野党側は女性議員が増えているので、やはり与党、特に自民党の方に増えていないのが、女性が国会に増えていかない一番の大きな課題かと思っている。
■伊藤議員「これこそが民主主義」
『ABEMAヒルズ』は、投票された伊藤議員にも話を聞いた。
投票の前日、寺田議員は「首班指名したい」と直接話をしに来たそうだ。「それはもうびっくり仰天、『私ですか!?』って」。実際に自分の名が読み上げられた後、周囲からは様々な言葉を投げかけられたという。
「『お前自分で書いただろう』『なんか伊藤さんって“いじられキャラ”だね』とか、我々立憲民主党と国民民主党は今かなりセンシティブな状況でもあるので『造反したんじゃないのか』とか、皆さんがいろいろな言葉で、軽く茶化してくる方もいっぱいいた」
そんな中、寺田議員が投じた“票の意味”を知った伊藤議員。「これこそが民主主義」だと思ったという。
「寺田議員は女性やママ、自分や誰かと同じように苦しんでいる人のために何かを変えようとして行動された人。一方、私は自分の組織や展望、もしかしたら立場を守るために何も変えようとしなかった人。私自身1票を投じていただいた者にも関わらず縮こまってしまっていたという、ガツンと頭を一撃されたというか、本当に貴重な勇気をいただいた。お受けするしかないというか、これは寺田議員が永田町、この社会に問いかけた重い重い、思いがある1票なんだと思う」
■「国のリーダーたる素質があるのか、理由を説明するべき」
寺田議員が入れた伊藤議員への1票について、ノンフィクションライターの石戸諭氏は「女性が意思決定の場に関わっていくこと、人材登用で女性の比率が増やしていくことは大事なことだ」とした上で、厳しい言葉をかける。
「なぜ伊藤議員でないといけないのかということに関しては、説明になっていないと思う。伊藤議員が適任なのであれば、彼女にどういう能力があって、国のリーダーたるどういう素質があるのか、その理由をちゃんと説明するべき。年齢が低いから、女性だからという説明で、問題提起をしたかったという以上のものは見えてこない。思いに共感するのと、実際に政治の世界でリーダーを務める資質があるかは別の問題だ。(伊藤議員)本人が組織の論理の中で行動しており、『縮こまってしまっていた』と語っていたが、なぜそのような人がこの国を変えていけると思ったのかは正直よくわからない」
一方で、問題提起自体は評価できると付け加えた。
「伊藤議員は政治の現場でどういうことをやってきたのか、リーダーたる素質があるのであれば、無所属である寺田議員は一緒に何をやりたいのか。例えば、会派に加わり勢力を拡大していこうと思っているのか、伊藤さんを中心とした議連なり勉強会なりを立ち上げるのか。やはり変えていくためには地道にやらなければいけないことが多くあると思う。少し厳しいことを言っているが、問題提起としては面白いとは思っていますし、受け止めるべきだと考えている。この一件で、寺田議員と伊藤議員には注目したいと思った。が今後どのような行動をするのか見ていきたい」
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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