コロナ禍のイタリア・ローマで行われた、国会議員定数削減の是非を問う国民投票。開票の結果、約7割が賛成し、下院は定数630から400に、上院は315から200と、全体の3分の1以上、年間予算にして120億円が削減されることとなった。
・【映像】日本ではなぜ進まない?疑問視され続ける"議員定数削減"
日本でも長年にわたり議論されてきた議員定数の問題。3割削減を公約に掲げる日本維新の会の広報局長・藤田文武衆議院議員は「いわゆる政治運動、政治闘争としても、ものすごいことだと思う。目的としては立法過程の効率化、政治のコスト削減、そして対人口比での議員数の適正化だが、背景には“政治家、もっとちゃんとせんかい”という政治不信があったと思う」と話す。
「定量的なものでは、対人口比ぐらいしか指標がなく、適正な議員数については様々な議論がある。また、イタリアでは年間120億円が削減されるということだが、実際には50~60億円くらいという試算もある。つまり公的支出に占めるパーセンテージで言えば、ものすごく小さいので、これにより財政が改善するという話ではない。今回の国民投票は“五つ星運動”が主導したが、いわば改革のアイデンティティみたいなものを打ち出したということだと思う。僕たち維新の会は“身を切る改革”と言っているが、改革を進める当事者が自らの身分に固執しない、特権に寄りかからないという姿勢を最初に見せるのがスタート地点だという考え方だ」。
各国のデータ(2016)を比較してみると、日本の議員数717人は世界6位である一方、人口100万人あたり5.66人と、世界135位になる。それでも国会議員1人あたりにかかっている税金は議員歳費、秘書給与、政党交付金など、年間あわせて1億円以上。居眠りしている様子などが報じられる度、“無駄”として削減する声も上がる。
藤田議員は「議員報酬として2000万円以上がもらえ、非課税で領収書のいらない経費が月100万円あって、秘書も3人抱えられる。私は去年の補欠選挙で当選したばかりで、もともとは民間企業の経営者をやっていたが、雇うのに1億円というのは、中小企業でいえば社長、大企業でいえば役員クラスの人材だ。つまり給与でいえば、国会議員はそういう“S級”人材の集まりだということもできる。しかし国会議員になって1年半、それだけの待遇を民間でもらえるぐらいの力量のある人がどれだけいるかな、と思ってしまう。維新の足立康史先輩は“30人くらいしか働いていないのでは”と言っているが(笑)、私も定数は今の半分くらいでもいいのではないかと思ってしまう」と指摘する。
日本維新の会では参議院選挙公約(2019)で議員報酬と議員定数の「3割カット」を訴えており、大阪府議会で単独過半数の大阪維新の会は2011年、議員定数を109から88へ21議席削減する条例改正案を可決させている。ただ、一般には議員定数が減ることによって、社会的な弱者やマイノリティたちが代表を政治の場へ送り込むことが難しくなるとの意見も根強い。
議員数が減ったことによる影響について、大阪が地元の藤田議員は「行政の職員を減らすことと、意思決定をしたり、法律を作ったりする議員を減らすことは分けて考えるべきだと思う。大阪の場合、府議が2割減ったことで皆さんの声が届かなくなったという意見はほぼない。むしろ議員仲間の間では“この人、もしかしたら次はいなくなるかも”“この人、辞退してもらわないといけないかも”という雰囲気が出てきて、行財政改革も進んだ。有権者から見ても、“こいつら本気だな”というふうになった。“議員は使い捨て”という言葉がある通り、仕事をして、役目を終えたら去ればいい。頑張った人間には、どこに行っても仕事があるはずだ」と強調する。
では、日本の国会ではなぜ議論が進まないのだろうか。特に印象深いのは、2012年11月、党首討論で野田総理大臣(当時)が議員定数削減などを条件に衆院解散に応じる姿勢を見せたときのやりとりだ。
野田総理「定数削減は来年の通常国会で必ずやり遂げる。それまでの間は議員歳費を削減する。(中略)この御決断をいただくならば、私は今週末の十六日に解散をしてもいいと思っております。ぜひ国民の前に約束してください。」
自民党・安倍総裁(当時)「私たちは既に、私たちの選挙公約において、定数の削減と選挙制度の改正を行っていく、こう約束をしています。今この場で、そのことをしっかりとやっていく、約束しますよ。」
その後の解散総選挙で自民党は政権を奪還。衆議院の議員定数0増5減が実現、さらに衆議院の定数を10減らす法案が成立したものの、これは「1票の格差」を是正するもので、定数の削減が置き去りにされていると野党が反発。与党・自民党からも反対の声が上がる中、逆に参議院の議席が6増える法案が成立している。
ライターの中川淳一郎氏は「一般の人々からしてみれば、議員定数が減らないことよりも、給料が高いことにムカついているだけだと思う。仮に国会議員の月給が23万5000円だったら、減らさなくていいと言うはずだ」と指摘する。
藤田議員は「企業経営者として言えば、仮に日本の平均年収であっても、やりたいことがあれば採用に応募してくる人はいると思う。ただ、高い報酬があるところに高い能力の人が集まるという経済原理もある。民間でもSSS級の人は億単位の報酬を受け取っているし、『ABEMA Prime』に平井デジタル改革担当相が出演され、デジタル庁幹部の待遇の話になった時、サイボウズの青野社長は1000万、2000万でも“うーん”という感じだった。この辺りのバランスは非常に難しい。やはり根本には国民のために、国のために、地域のためにという志と能力のある方に飛び込んでもらえる構造をいかに作るかだと思う。我々は定数も報酬も削減すべきだと言っているが、例えば定数は半分にして、報酬は1.5倍にしてはどうかというアイデアを提案している方もいる。あるいは兼業も大いにありだと思う。実際、企業経営や各種団体の代表をやりながら国会議員をされている方もいらっしゃるし、医師免許を持っていて、休みの日には地元で手術をしている方もいらっしゃる。そのようなスペシャリストが兼業でやるというのも、あるべき姿の一つだと思う」と答えた。
お笑いコンビ・EXITの兼近大樹は「金や人気で政治家になれてしまうと感じている。俺でも勢いがあればなれるのではないかと思うし、能力があるかのように見せることも簡単にできてしまうと思う。そういう現状が怖い」、りんたろー。も「誰でもなれるかもしれないが、逆に誰もやりたくない、魅力のない職業になってしまっていると思う。それも怖い」とコメント。すると藤田議員は「お二人は“チャラい枠”みたいな感じになっているかもしれないが、拝見してると、とても勉強されていることがわかる。ぜひ議員になって欲しい」と応じていた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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