新型コロナウイルスの国内の新規感染者数は8月に比べ低く推移していて、4連休には各地に賑わいも戻った。ただ、本格的な冬を前に、重症化リスクの高い人をどう守っていくかが懸念されている。
25日の『ABEMA Prime』では、重症化の一歩手前から回復したお笑い芸人のラジバンダリ西井に話を聞くとともに、京都大学ウイルス・再生医科学研究所准教授の宮沢孝幸氏と考えた。
■「痛みのデパート」「ICUに入れられたこともわからなかった」
ラジバンダリ西井は、4月3日に突然体調が悪化し、倦怠感や関節痛に加え40度の発熱。救急搬送されるもPCR検査を受けられず帰宅し、自宅待機となる。4月6日にCT検査で肺炎が認められPCR検査を受けるが、検査結果が出るまで再び2日間の自宅待機。4月8日の入院後は、4日間ICU(集中治療室)に入った。そして、合計20日間の入院生活を経て、4月27日に退院した。
当時の状況についてラジバンダリ西井は、「夕方まで普通に生活していて、急に全身の関節が折れたみたいに痛くなった。その後41.6度の熱が追っかけて出てきて耐えられなくなった。(これから)どうなるのかわからない感じ。入院したあと一般病棟に移ってから、退院の検査で2回陰性を出すという時にいけるかなと思ったが、それまでは未知の部分が多すぎて怖かった」と振り返る。
ICUに入った当初は意識が朦朧とした状態で、熱は41.6度まで上昇。全身の関節痛に加えて頭痛や腹痛など「痛みのデパート」だったという。痛みのため眠るというより意識を失うような状況だったそうで、鼻チューブで呼吸をし、心電図とパルスメータを装着していた。
「初日、自分ではICUに入れられたことがわかってなくて、周りの機材を見てわかった」と話すほどだが、それでも「中等症」と言われたという。宮沢氏は「人工呼吸になると重症。かなり危ない状態でないと重症とはならない」と説明する。
ラジバンダリ西井は「僕は重症扱いにして欲しかった」と訴える。「これで中等症なのかと思ってしまったし、これ以上ひどい方がどんどん出てくるんだなと。ICUはピストン状態で満杯になっていたので、僕が出た時もすぐに(次の人が)来られて、消毒して部屋を空けた」と話した。
入院5日目で、ICUから一般病棟へ移動。この時はまだ熱が39度あり、移動後2日目で鼻チューブは外れたというが、心電図やパルスメータは付けたままだった。部屋は、4人部屋の相部屋(最大2人で生活)。風呂や買い出しの依頼は週2回で、飲み水の確保に苦慮したそうだ。
一番辛かったのは、ICUでベッドから1.5m先にある簡易トイレを使用することだったという。「初日、2日目はスマホを触るのに指を曲げるのも痛くて、本当にやばかった。ICUでどうしたらいいかわからず喋るチャンスも少ないので、看護師さんが来た時は『こういう症状が出ている』というのを必ず伝えた。でもトイレが簡易トイレしかなく、自分で(排泄)するのが大変だった。トイレにビニールシートをかけて、中に砂を入れて用を足して、それをくくるというのを毎回自分でやらないといけない。41.6度とか出ている中やらないといけないのは辛かった」。
重症化しやすいとされている持病については、「高血圧なので薬を飲んでいる。それを先生に伝えたら『それは基礎疾患ではない』とおっしゃった。あとは何もない」と語った。
一方で、咳の症状はなかったという。宮沢氏は「おそらく免疫系の異常、その熱だったらサイトカインストームのようなものが起こったという気はする。ウイルスの違いによるものよりも、人の違いによるものなのではないか」との見方を示した。
■回復後も立ちくらみ、耳鳴りの後遺症
ラジバンダリ西井は退院後も、立ちくらみや耳鳴り、胸の痛みなど後遺症とみられる症状が続いているという。「座っていても急にクラっとくる。あと耳鳴りがすごくて、(耳を)抑えてしまうくらいのものに今も襲われる」と明かす。
症状については医者にも話しているというが、「3カ月くらいで免疫はなくなると聞いた。高血圧なので定期的に病院に行って後遺症の話もしているが、それが本当に後遺症かどうかわからないと先生はおっしゃっている」と説明した。
2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏の「最近、コロナウイルスが弱毒化したのではないかという話もあるが、西井さんのようにきつい状態にはならないということはあるのか」との疑問に、宮沢氏は「聞きとりをすると、最初の第1波の方がはるかに重症化している人が多いという話だった。第2波の時は少ないという話だが、弱毒化しているという明確な事実はまだわからない。重症者は減っているが、これが季節的なものなのかウイルスによるものなのか。冬になったらまた重症者が増えるのかは注視しなければいけない」との見方を示した。
また、コロナに再びかかった時と重症化の関係については、「一般的にコロナウイルスは何度もかかる。なぜか知らないけれど抗体が下がりやすいということで半年、1、2年経ったらもう1回かかってしまうということがある。イギリスでの昔のコロナの実験だと、1回かかると翌年にかかった場合は(症状が)軽いというデータが出ている。ただ、ニュースや論文を見ていると抗体が高いと逆に悪性化するというものもあって、今回も軽くなるかはわからない」とした。
感染する前と後でコロナに対するイメージは変わったのか。「皆さんも一緒だと思うが、かかる前は正直なめていた。かかってからこんなにひどくなるんだ、症状が出るんだということですごく怖くなったので、皆さんも侮らないでくださいとお伝えしたい」と語るラジバンダリ西井。
さらに、若い人たちに向けて「周りに感染者がいないと“伝説の病気”みたいな感じで、結構遊びまわっている方もいると思う。でも症状が軽い重い関係なしに、自分がうつったら誰かにうつしてまうということを考えて行動してほしい」と強調した。
■宮沢氏「冬になるにつれてリスクは上がる」
重症化リスクが高まる基礎疾患・条件として、糖尿病や心不全、冠動脈疾患、心筋症、慢性腎臓病、喫煙、妊娠、喘息、肥満などがあげられている。喘息は1.5倍、高血圧・肥満・糖尿病は3倍、慢性腎臓病は4倍、重度の肥満や2つの基礎疾患がある場合は4.5倍、3つ以上の基礎疾患がある場合は5倍に高まるとされている(米CDCから)。
宮沢氏は重症化リスクの高い人を守るために、次のことを提言している。重症化リスクが高い人の周囲の人へは「自分が感染していると考えて接する」「リスクある人が拒んでも感染対策はマスト!」「特にリスクが高い人はシェルターホテルなどに入ってもらう」。リスクが高い人へは「家族内感染に注意!」「部屋は加湿し十分温かく」「大声での会話や歌を歌う場所に行かない」としている。
「リスクが高い人の周囲の人は、自分が感染していると考えてリスクが高い人と接してほしい。“リスクがある人が拒んでも”というのは、特に老人の方で『老い先短いから好きにさせてくれ』という人がいるが、感染対策をしてうつらないようにする。一緒にご飯に行く時も(席を)離す、小声で(話す)とやってほしい。
リスクが高い人は、外に出ないという方法、あるいはシェルターホテルに入っていただく。病院に定期的に通わなければいけない人は、病院近くのホテルへ。お金の問題があるので自治体には支援してほしいと言ったが、今のところ動いてくれていない。リスクが高い人は特にうつらないように注意しなければいけないが、その人が外に出なくても家庭内感染が多いので注意する。これから冬になるとより重症化しやすいと予想されていて、普通のインフルエンザでも湿度が下がってくると肺炎を起こしやすいということがあるので、加湿したりして防ぐ。寒くなると自然免疫も落ちてくるので、なるべく着込んだり部屋を温かくする。外に出るとしても、ショッピングはいいとして大声で会話する場所や宴会には行かない。歌を歌う場所にも行かないということでお願いできたらと思う」
イギリスやフランスで1日の新規感染者の数が最多を更新するなど、ヨーロッパで感染者が増えている。このことについて宮沢氏は「これが難しいところで、感染者は出ているが重症者数は今のところ欧米は少ない。では心配しなくていいのかということだが、これから寒くなってくると重症化率は上がってくるのではないかと思っている。寒くなって湿度が下がってくると、肺の奥に直接ウイルスが届きやすい状況になるので重症化しやすいと専門家も危惧している。一方で、弱毒化したのではないかという説もありはっきりわからない状況だが、用心に越したことはない。巷では楽観論が広まっていてもしかしたらそれが正しいのかもしれないが、冬になるにつれてリスクは上がってくるということは用心した方がいい」との考えを示した。
インフルエンザとコロナに今後、どのように対策すればいいのか。宮沢氏は「感染経路はすごく似ているので、同じような防御法をとっていれば大丈夫だろう。区別する必要はないと思う」と述べた。
(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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