2017年に神奈川県座間市のアパートで若い女性ら9人の遺体が見つかった事件で、強盗殺人などの罪に問われている白石隆浩(29)の裁判員裁判が30日、東京地方裁判所立川支部で始まっている。
裁判所の前には、傍聴席を求め、一般用13席に対して625人が列に並んだ。倍率はおよそ48倍だった。並んだ人に話を聞くと「子供がいるので親として悲惨な事件に巻き込まれないように教えたい」女性(40代)、「8人も9人も殺害した人というのが純粋にどんな人なのか気になる」男性(60代)などの声が寄せられた。
【映像】「死刑でいい」ジャーナリストが語る座間9人殺害事件・白石被告の生々しい素顔
事件が発覚したのは、およそ3年前の2017年10月30日だ。神奈川県座間市のアパートで当時15歳から26歳の男女9人の損壊された遺体が見つかり、白石隆浩被告(29)が女性8人に対する強盗・強制性交殺人と男性1人への強盗殺人などの罪で起訴された。
事件から2年11カ月。白石被告と3回にわたって接見したフリージャーナリストの渋井哲也氏が、白石被告について持った印象は「冷静」だった。
「普通の20代、30代のその辺にいるような青年という印象で、あいさつもおどけた明るい感じ。特に変わった様子はありませんでした」
話しなれていて、話術にも長けていた白石被告。高校時代から10年以上、ネット上でのナンパを繰り返し、逮捕前には風俗のスカウトマンとして生計を立てていた。白石被告に事件の動機について聞いた渋井氏はこう語る。
「1人目(の女性)を殺害したときには、自分自身はヒモになりたかったので、ヒモの立場を維持したかった。でも、他の男性の影が見えたので、もしかしたら自分がその男になり替わって、自分は捨てられちゃうかもしれないという、いわば自分の自信のなさから(女性を)男性に取られないように、今の住んでいるアパートを維持したかったということで殺害に及ぶんです」
その後、白石被告は女性を探しに来た男性も殺害。他の被害者に対しては、睡眠薬を飲ませ、無理やり性行為に及んだ。
「彼自身、一度罪を犯して執行猶予になっていますので、生きて帰してしまうと、もし犯行がばれたら実刑を食らってしまう。その実刑を食らいたくないということで、殺害を繰り返しました」
取材の中でわかった白石被告の身勝手な殺害の動機。渋井氏によると、事件への反省や後悔は「見られない」と話す。
「振り返って後悔する点があるとすると、奪った額がそんな高くないので、そんなことで殺してしまったことに対しては(白石被告に)後悔はある。でも、感情的な意味で本当に自分がしなければよかったんじゃないかとか、そういう逡巡は見られませんでした」
今日の裁判員裁判で白石被告の弁護士は承諾殺人を主張する方針だが、白石被告本人は「死刑でいい」と諦めた様子だという。渋井氏は最近の白石被告についてこう語る。
「最初の頃は『これって死刑なんでしょうか』みたいなことを言っているときもあったんですが、ほぼほぼ最近では『どうせ死刑ですよね』って諦めている様子でした。死刑を受け入れているというか、諦めている感じ」
一方、被害者の一人である父親も初公判を前に、胸中を打ち明ける。娘を失って、3年。あれから父親自身の時間は止まり、日付も年数もわからなくなってしまったという。
「前からずっと会ってないからね、娘に。余計、存在感はそのままだから。事件当時も今も変わらない、ずっと変わらないですね。亡くなったという気持ちはない。成人式の女の子の晴れ着を見れば、自分の娘を意識するというだけかな。重なり合っちゃうというかね。それはあるよね」
娘は、生きていれば今年で20歳。父親が改めて口にしたのは「容疑者がどうなっても娘は戻ってこない」という揺るがぬ事実だった。
「意識してないから。相手のことを意識してないし、どうなっても関係ないわけだから。相手が死刑になったら(娘が)戻ってくるとかね。何がどうなるわけでもないでしょ。娘が戻る以外は、どんなことしても晴れない」
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