先制点が決まったのは、キックオフからわずか6秒後のことだった。
「キックオフ!って、もうゴール!? 早すぎる!!」「早すぎてwww」「史上最速では?」
一瞬の出来事、驚愕の先制弾にネットは騒然。驚きの声が多数上がっている。この驚愕のゴールを奪ったのはY.S.C.C.横浜。フットサル最高峰のリーグ「Fリーグ」のディビジョン1に昇格してから初めてのホームゲーム。その最初のプレーだった。ただ驚くべきは、そのスピードだけではなく、わずか4タッチで決めたことにある。
ピッチ全員のイメージが共有された、狙いすましたプレーだったことだ。
■キックオフからの狙いすましたビッグプレー
開始6秒で決まったゴールは、即興ゴールではなかった──。
センターサークル内の井原智が右後方の宿本諒太へ預け、宿本が前方の空いたスペースへとボールを送る。そこに「パラレラ」というフットサルで裏を取る連係で、左サイドから右サイドへ走り込んできた伊藤玄がダイレクトでシュートを左隅へと突き刺した。彼らがボールに触った回数は、わずか4回だった。
一瞬の出来事に、対戦相手のバルドラール浦安の選手は触れることもできなかった。このゴールが優れていることは、試合を生中継するABEMAの番組『アベマ Fリーグダイジェスト』で、日本人W杯得点王のナビゲーター・稲葉洸太郎さんが今週のベストプレーに選んだことからも明らかだ。では、何がすごかったのか。
それは、これがデザインされたプレーだったことにある。狭いスペースをどう攻略するかがキモとなるフットサルでは、インプレーではなく、人とボールが止まったところから始まるセットプレーが、ゴールを奪うために重要となる。フリーキックやコーナーキックと同様に、キックオフも一つのセットプレーだと捉え、横浜の選手たちは、サイン通りに動くパターンプレーから、虎視淡々とゴールを狙っていたのだ。
試合は、このゴールを含む3得点を決めた横浜が3-2で勝利。昇格後に初の連勝を飾った。彼らはここまで2勝2敗。最初の勝利が昨シーズン最下位のチーム、今回の相手がリーグ中位に甘んじるチームだったことを考えると、彼らの真価が試されるのは、上位陣との対戦だろう。そして、次の対戦相手は、リーグの絶対王者・名古屋オーシャンズだ。過去13シーズンで12回の優勝を誇るチームに、横浜はどう挑むのか。
たとえ王者であっても、デザインされたプレーは有効だ。むしろ、何か秘策をもたないまま真っ向勝負を挑めば、勝率は限りなく低いと言わざるを得ない。ただ、横浜はただでは転ばないだろう。一撃必殺の武器をいくつもひっさげ、相手の度肝を抜き、視聴者の心をわしづかみにしてくれるに違いない──。
文・舞野隼大(SAL編集部)
写真/高橋学