相手サポーターの悲痛な叫びも虚しく、ブラジル人助っ人の驚愕ゴールで試合が動いた。ゴールを奪うまでの伏線、フェイント技術の高さ、シュートの正確さ、そして決めきる力など、複合的な要因から人々の記録に残るゴールだった。
スーパーゴールを決めたのは、フットサルの国内最高峰リーグであるFリーグに所属するフウガドールすみだのガリンシャ。小野伸二のような“神トラップ”で注目を集めたブラジル人アタッカーだ。
■壮絶な打ち合いに火をつけた危険な男
シュライカー大阪をホームに迎えた一戦は、立ち上がりから激しい攻防が続くもお互いにゴールが遠く無得点で進む。すると第1ピリオド(前半)の9分、大阪のセットプレーを防いだすみだが、カウンターを開始。ガリンシャは右サイドから一人でボールを運んでいく。
ディフェンスに付く相手の逆をとって左足のトゥキックでシュートを放つと、ボールは惜しくも右ポストを叩いた。ABEMAで解説を務めた元日本代表の稲葉洸太郎氏は「(リズムが)ブラジル人っぽい。こういうプレーで乗ってくると思いますよ」と、この試合のターニングポイントになるほどのプレーだった指摘する。
するとその言葉は現実のものとなった。
わずか1分後、自陣左サイドで大阪のパスをカットしたすみだは、すぐに中央のガリンシャへとボールを預ける。ボールを受けて前を向くと、左に抜けようとステップを踏んだ。
しかし大阪もガリンシャが要注意人物であることを理解している。得意の左足でシュートを打たせまいと、コースを消すようにボールへと寄せた。
次の瞬間、ガリンシャがピッチに魔法をかける。
左足でボールをなめたガリンシャが、足を出してきたディフェンスの動きを見定めて股下にボールを通す。完璧に相手のプレスを剥がして、前進を開始。最後は再び左足のトゥキックを放つと、しっかりとコントロールされたボールが、相手のブロックに遭いながらも、しっかりとゴールネットを揺らした。
わずか数秒の出来事に誰もが心を奪われた。
日本代表として数々の経験をしてきた稲葉氏でさえも「おおっ!これはすごい!すごいシュート!」と興奮を隠しきれない。視聴者も「タイミングずらすシュート上手いな~」、「また抜きで勝負ありやな」とガリンシャのスーパーゴールで大いに盛り上がった。
その後は、両チーム合わせて10ゴールが飛び交う壮絶な打ち合いとなった。試合に火をつけたのは、間違いなくあのゴールだろう。やはりこの男、危険につき。「ガリンシャ」の名を、ぜひ覚えておいてほしい。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
写真/高橋学