増えるネット上の“精子提供”、危険性も希望者の切実な思い 提供続ける男性「“世の中的に恥ずかしいこと”ではない」
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 妊娠を希望する女性に対して、SNSなどインターネット上でやり取りし、精子を提供する人が今急増している。Twitterには「#精子提供」をはじめ「精子をあげます」というツイートがずらり。

【映像】“精子提供”続ける男性の考え・葛藤とは

 実際にどういう人から連絡があるのか。昨年9月の『ABEMA Prime』の取材に、「無精子症の旦那様と奥様が大体3.5割ぐらい。レズビアンの方だったり、シングルの方を合わせたぐらいの割合」と答えていた精子提供を行う和人さん(仮名)。当時26歳で、“40人以上の子ども”がいた。

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 和人さんの提供方法は、射精した精子を容器に入れ、針のない注射器と一緒に渡す「シリンジ法」。女性はこの注射器で膣内に精子を入れ、妊娠を目指す。提供を受ける側である女性からは、「かかる時間や金銭面のことを考え、まずは自分たちでトライできることをやってみよう!と勇気出して良かった」と、SNSの精子提供で実際に妊娠まで至ったという体験談も。

 そんな双方のニーズを満たすかのように、精子提供のマッチングを行うサイトまで登場。「Ton Bebe(トンべべ)」は、精子を提供したい人、そして受けたい人が登録し、要件が合う人たちを繋ぐサービスだという。

 実際にTon Bebeに登録し、精子の提供を受けているYさん夫婦。Yさんは50代、妻は40代で、これまでに数十回の精子提供を受けているという。「自分の精子だとなかなか受精しないので、若い精子量が多い方の精子が欲しい。人を多少選べるので、マッチングサイトの方がいいかなと」。

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 Yさん夫婦が選んだ精子提供は「タイミング法」。これは、女性の排卵予定日に合わせて提供者と直接性交渉をするというものだ。Yさんは「(提供者と)お会いして僕が判断して妻と性行為をするわけだが、僕は同じ部屋で待機してないといけないので不安。妻は40代で今すぐにでも子どもが欲しいということで、今度の土日月と3、4日間くらいトライする予定。すぐにでも(子どもが)欲しい」と切実な思いを語った。

■第三者による精子提供に危険性も… 受け取る側は模索

 第三者からの精子提供による妊娠は、産科婦人科学会の登録を受けた医療機関で治療するのが一般的だ。しかしドナー不足に加え、婚姻していて夫が無精子症の場合など条件も限られており、ネットで精子のやり取りを選ぶ人が増加している。

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 ネット上でのやり取りについて、慶應大学病院産婦人科教授の田中守氏は危険性を指摘する。「医学的に非常に危険なことが3つある。1つは感染症問題。いわゆるウイルス性疾患HIVや性行為感染症がうつってしまう可能性がある。2つ目は遺伝的な病気が子どもにうつってしまう問題。それから近親婚、すなわちご兄弟の方が潜在的に多数いらっしゃる可能性がある」。一方で、「究極の選択肢として(精子提供を)インターネットなどに頼らざるを得ないのは、気持ちとしては理解できる」との見方を示した。

 病院では精密な検査をした精子を用いるが、病院以外でも安全性が高い精子を入手する方法がある。それが海外の精子バンクだ。デンマークとアメリカに本社がある世界最大の精子バンク「クリオス・インターナショナル」では、社内に研究室を持ち、医療従事者によって検査された精子のみ提供しているという。日本事業部担当ディレクターの伊藤ひろみ氏によると、日本人の利用者は今年だけで100人超。現時点では日本人のドナー登録者はいないそうで、「デンマークもしくはアメリカに居住しているアジア人を中心とするドナーを皆さんお選びになっている」という。

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 精子の金額には差があるそうで、「6000円から20万円のものまである。値段の違いは人気ではなく運動精子の数。それが妊娠率に比例するのと、あとは身元開示ドナーかどうか。もちろん身元開示だとドナー獲得も大変になってくるので、ドナーへの報酬も少し上乗せしている」と説明した。

 今の日本の法律では、親子の認定も含めて精子提供に関する取り決め自体が存在しない。そのため、提供を受ける側は様々な手段を模索し続けている。

■顔出し出演の和人さん「何ら恥ずかしいことではない」

 やむを得ず、精子提供による妊娠・出産に踏み切る女性たちがいる中で、やはりなかなか理解できないのが精子を提供する側の意見。なぜ精子提供をしているのか。どのようなリスクや葛藤があるのか。

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 23日の『ABEMA Prime』に和人さんが再び出演。今回の出演にあたっては前回付けていたマスクを外したが、ある心境の変化があったという。

 「仮面をしていることに対して、ネット上で『あいつ変態だぞ』みたいな意見があったり、友人の大学の研究室の女性に聞いても『なんで仮面してんの?キモくない?』と言われた。僕は家族や友人、妻の家族、仕事場の人間などに活動を話しているので、身バレしてもそんなにリスクは高くない側の精子提供者なのかなと。仮面をしていることで精子提供を受けることが“世の中的に恥ずかしいことではないか”となることを、責任を持って変えていかなければいけないという気持ちがあった」

 和人さんは現在27歳で、22歳の時にSNSやブログで精子提供ボランティアを開始。精子提供は年間約100回以上、遺伝子的な子どもは50人以上に及ぶという。26歳の時に結婚、第1子が生まれ、出産と合わせ活動を一時休止したものの、27歳で再開。普段はシステムエンジニアとして働いている。

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 精子提供の活動について、和人さんは「新任で公立中学校で教員をしていたが、その中で150時間以上の残業、土日休みなし、5時半起き12時半帰りみたいな状況の時に、“自分は結婚するのも叶わない”くらいに追い詰められて、だったら何か世の中に残せることがあるかなという気持ちで、ある種利己的な、安易な気持ちで始めてしまったところはある。しかし、とにかく必要としてくださる方たち、感謝してくださる方たちがいて、続けることができているのかなと思う」と話す。

 SNS上の精子提供は信頼関係で成り立ち、和人さんも性病検査の結果を開示している。これまでトラブルはなかったというが、リスクもあるという。「法整備が整ってない部分があるので、養育費を請求されるリスクがある。戸籍のところで、女性の文面と男性の認知で成り立っている部分もあると思うが、レズビアンの方やまだ性転換をされてなくて婚姻関係にない方、選択的シングルマザーの方だと、認知をした後に養育費の請求となるリスクはある。私は基本的に認知しないという話はするが、防ぐ方法はない」。

 精子提供で生まれた子どもの成長に興味はあるのか。和人さんは「興味はとてもある」とする一方で、「ただ“父親”という言葉は、特に(子どもに)告知する時には使わない方がいいという話を提供時にしている。僕のことは父親ではない言葉で表現していただいて、本当の父親、育ての父親に向き合ってもらう。それが本当にAID(非配偶者間人工授精)を変えるというか、育ての親こそが父親だという認識を持つことが大切だと思う」との考えを示す。

 これに2ちゃんねる創設者のひろゆき(西村博之)氏は「本当の家族という言い方は変だが、家庭が不安定になってしまうリスクをずっと増やし続けているのではないか」と指摘。

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 和人さんは「『AIDは気持ち悪い』という人がたくさんいる中で、世の中の誰にも相談できず苦しんできた人たちが、お会いして話をするとすごく明るくなってくれる。夫婦間に私が入っていくものではないので、自分がある種ピエロになることで、すごく安心していただけるところはある」と答えた。

 また、リスクを避けるためには“告知”が重要だと訴える。「AIDは悪いことなんだとずっと隠して、子どもも後々の検査で知ってしまって“浮気とかで生まれちゃったのかな”“ふざけんじゃねえ”と。自分の半分がよくわからなくなる気持ちになって、すごく精神的に不安定になるというのは本にも書かれたりしていて、それは心が痛む。しかし、私は告知することが解決策だと思っている。小さい頃から告知をしていき、ごく当然の夫婦に望んで生まれてくることの本当の幸せを感じながら、AIDは何ら恥ずかしいことはないという意識で育っていくことで問題ないと。海外でも基本的に告知していくことでうまくいっている」。

■マッチングサイトの登録者数は増加 「困っている方がいる」

 精子提供のもう一つの方法がマッチングサイトだ。精子提供マッチングサイト「Ton Bebe」を運営する木村さん(仮名)にも話を聞いた。

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 サイトでは、エリアや年齢、血液型、身長、体型、学歴などのチェック項目からドナー検索が可能。また、精子数や運動率などから、精子品質をA~Eの5段階で表している。利用料金はドニー(利用者)とドナー(提供者)のどちらも無料だが、ドナー側が性病・精液検査を提出する場合は、確認手数料としてそれぞれ3000円ずつ(両方同時の場合は5000円)を支払う。

 登録者数は、ドナー数が2020年6月頃は115人だったのが現在は690人。ドニー(利用者)数が、2020年6月頃は19人だったのが334人に増えている。

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 Ton Bebeのサービスについてひろゆき氏は「こういうのは本人の自己申告にしか過ぎず、基本的によろしくないと思っている。アメリカの裁判で、“有名大学卒業でIQも高い”という精子提供者が、蓋を開けてみたら遺伝の病気を持っていて大学も中退、重大犯罪で刑務所歴がある人だったということで、精子バンクを訴えるという事例もある。結局ビジネスにするとなると、お金のために嘘をつく人がどんどん増えるのでもってのほかだと思う」と指摘する。

 これに木村さんは「掲載情報が違うということはケースとして発生すると思う。実際、サイトだと善意に頼っている部分が大部分を占めている」とした上で、「受け取る側の方への啓発だと思っている。サイトの中で提供の流れを説明するページがあるが、そこで『事前に面談してください』『各証明書をちゃんと確認してください』といったことを呼びかけている」と説明した。

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 「そもそもの問題として、困っている方がいて、その助けになる場所としてサイトを展開している」。木村さんの考えに和人さんは「とにかく困っている方がたくさんいるので、どういった形でも、それを助けてくださるフィールドが広がっているのは嬉しいというか、涙が出るくらいの気持ち。ある種味方がいない中でやってきたことなので、助けてくださいという気持ちはある。全国のみなさんお願いします」と訴えた。

ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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