SKE48の須田亜香里が、元劇団員の男性が2017年に所属していた劇団に対して稽古や本番の出演・裏方業務などの賃金未払いを求めて東京地裁に提訴した裁判に言及。「プロ意識の問題」と話し、元劇団員の主張にプロとして苦言を呈した。
1審の東京地裁では「裏方業務」を労働と認め、劇団側に約52万円の支払いを命じた。今年9月に東京高裁で開かれた控訴審では、劇団側の指揮命令による「労働」だったとする判決が下され、未払金としておよそ186万円の支払いが命じられている。
訴えを起こしたのは、元劇団員の末広大知さん(34歳)。役者を志していた末広さんは2007年に舞台製作会社「エアースタジオ」が運営する劇団員がおよそ20人の劇団に入団。都内2カ所にある劇場で1演目当たり6日間の公演を年間約90回行っていた。そのうち、末広さんが役者として舞台に立つのは年8~10回ほど。役が無い時はセットの設営や音響・照明など裏方の仕事を任されていたという。
当時の様子について末広さんは「稽古が夜8時くらいに終わり、そこから小道具とか作ったりして夜10時くらいまで。深夜は舞台セットの建て込みやバラシ、解体作業が大変で、ひどいときは食事兼仮眠タイムで2時間ちょっとだった。そんな状況が1週間くらい続くときは痩せこけ、無精ひげも生えていた」と振り返る。最初の5年間は1枚500円のチケットバックのみで、6年目からは月6万円の固定給をもらえるようになったというが、その後、末広さんは退団を決意。2017年の提訴に至っている。
本件、および今回の判決について同じ立場にある劇団員の女性が「稽古を2日間休みたいと言ったら『役はアナタ以外にもいっぱいいる』と言われ、すぐ降ろされるんじゃないかと感じ怖かった。(末広さんが)私たちの気持ちを代弁してではないが、勇気を出してくれたことが何か変わるきっかけになれば」と期待感を示す一方、須田の意見は異なるものだった。
「稽古とは未完成なものをブラッシュアップしていくもの。そこでお金が支払われるということを望んだことがない。努力したらお金が出るという話ではなく、努力をしたことで利益を生んだら報酬がある。報酬は集客ができたという事実が生まれてから求めるもの」
そのように持論を展開した須田は「未完成なのに、そこにお金が欲しいというのは…」と少し考えて言葉を選ぶと「プロ意識の問題。何を見せたいかにもよる」と続けた。
これらの問題は演劇界に限ったことではない。ある美容院の経営者は美容師が営業後、深夜まで自主練習をしていることについて「練習は強制させない。店側からしたら『あなたの自由な時間だから、あなたが選んで自ら練習している』という解釈。自主練なので、残業代は出ない」と話す一方で「師匠と弟子の関係性も重要。ご飯が食べられないときに食べさせてあげるなどする。師匠は弟子の人生を背負っている。その時代の若者とともに体制を変えていかなければいけない」とも話し、各業界で議論を呼んでいる今回の判決について一定の理解を示した。
なお、ロシア人で初めて日本の司法試験に合格し、労働法にも詳しいベロスルドヴァ・オリガさんは「仕事をしていれば絶対に労働基準法の保護を受けられるというわけではない。労働基準法に記されている労働者に該当する必要がある」と指摘すると「労働者として認められるには指揮監督関係と報酬の労務対価性が必要になる。今回のケースは労働者にあたる可能性があると認められたが、一般化するわけではない」と述べ、あくまでもケースごとの判断になるとの見解を示した。(ABEMA『ABEMA的ニュースショー』)
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