リオネル・メッシ、キリアン・ムバッペ、エデン・アザール、ネイマール。ボールを持てば、世界中のフットボールファンは、彼らの一挙手一投足に注目する。スピードで抜き去るのか? 華麗なテクニックで相手を手玉に取るのか?いつの時代も、ドリブラーは我々を熱狂させてきた。
人々をワクワクさせる、ワールドクラスのドリブラーが日本にいる。彼の名は室田祐希。日本最高峰のフットサルリーグ『Fリーグ』のペスカドーラ町田でプレーする彼は、日本代表のアタッカーでもある。
■やんちゃ小僧から大黒柱へ…凄みを増す天才ドリブラー
ホームにバサジィ大分を迎えた一戦はまさに“室田祭り”だった。
第1ピリオド(前半)5分に挨拶がわりのボレーシュート。右サイドのキックインからふわりと上がったボールに対して、バックステップでうまく距離を取りつつ、右足を振り切るのではなくミートを狙った優しいボールタッチのシュートが、相手ゴレイロ(GK)の股を通り抜けた。
第2ピリオド(後半)11分は、アシストでゴールを演出。右サイドでボールを受けた室田は、相手の寄せを計算に入れ、股を抜くパスを逆サイドに通して、味方のゴールをアシストしてみせた。対峙したのは、日本代表の仁部屋和弘。同じくドリブラーであり、室田の特徴を熟知している。その相手を手玉に取ったのだ。
そして圧巻は第2ピリオド14分に見せたドリブルだ。左サイドでボールを受けると、対峙する相手が足を出すようにボールをさらし、滑らかなダブルタッチで縦に抜ける動きを見せた。しかし、これは室田の罠だ。
わざと相手に追いつかせるくらいのスピードでボールタッチすることで相手を引きつけながら縦に仕掛け、決死のスライディングでボールを刈り取りにくる相手をいなすように、キックフェイントでゴール方向に向きを変え、最後は自らカットインしてフィニッシュへと持ち込んだ。
ゴールこそならなかったものの、一連の動きはまさに足技のオンパレード。
「かっこいい!!」「室田がすごい!」「戦術室田」「室田の股抜き祭り」「うますぎて味方も合わせられない」
試合を放送したABEMAのコメント欄は、彼の異次元のプレーを形容する文字であふれた。
町田は、ベテラン選手の引退や退団などもあり、一気に世代交代を図るチームである。引退した一人で、解説を務めた横江怜氏は、「ベテランがいないことで、チームを引っ張っていく存在になるという自覚が芽生えている」と、彼の精神的な成長を語っていた。その気概が、まさにピッチに現れているのだろう。
現在28歳。10年前にエスポラーダ北海道でFリーグデビューした当時“やんちゃ小僧”だった彼は、キャリアを重ねるなかで今、町田の大黒柱として異彩を放っている。年々凄みを増す天才ドリブラー。一度見れば、変幻自在の足技に、あなたも虜になるに違いない。
文・川嶋正隆(SAL編集部)
写真/高橋学