投票日から3日目を迎えたアメリカ大統領選挙は未だ勝者が確定せず、劣勢が伝えられるトランプ大統領やその支持者が「郵便投票は不正につながる」とする主張を繰り返し、陣営が複数の州の集計方法に訴訟を起こしたこともあり、集計に遅れが生じている。
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5日夜の『ABEMA Prime』に出演した、米ハドソン研究所(ワシントン州)の村野将Japan Chair Fellowは「一般論として、日本に比べてアメリカの行政サービスのクオリティはとても低く、驚くほどいい加減なので、作業を適当にやっている人も中にはいるだろうという感じもしなくはない。ただし数千票、数万票単位での不正は組織的なものでなければできないことであって、普通に考えればバレるはずだ。現時点では不正があったという明確な証拠は上がってきていないし、考えにくいことだ」と話す。
その上でトランプ陣営の“狙い”については、「バイデン氏が優勢だとされるウィスコンシンやミシガン、あるいはペンシルベニアといった接戦州の議会は共和党が多数派。各州の選挙結果を確定させる期限は12月8日で、そこで勝った党の選挙人が実際に投票を行うのは12月14日となっていて、この8日までに勝利者が確定しなければ、各州の州議会で決定することになるため、法廷闘争で結果が出ないよう引き延ばすことができれば勝てる可能性がある、ということで戦略を立てているようだ。しかし、それは果たして民主主義国家として正しいことなのかどうかという疑念が出てきている」と説明。
「私が所属しているのは共和党系のシンクタンクなので、周りには伝統的な共和党の支持者とトランプ支持者が混在している。彼らの胸中は結構複雑で、伝統的な共和党支持者からすれば、やはり次回2024年の大統領選挙を考えたとき、ここでトランプ大統領が無理に踏ん張ったとしても、4年後に良い候補が出てくれば党内の予備選で勝ち抜けないかもしれないということがある。ここは一旦引いて、伝統的な保守・中道路線で党を再建することを目指した方がいいのではないか、トランプが8年間やることが共和党にとって本当にいいものなのか、と考えている人もいる」。
では、仮にバイデン候補が大統領に就任し、民主党政権が誕生した場合、日米同盟や安全保障にはどのような影響が考えられるのだろうか。
「政権の移行期、つまり政策や高官人事が確定するまでの間というのは、アメリカがどのような対応を取るのかを試そうという国が出てくることがいつも懸念される。来年1月からバイデン政権になるとすれば、その間に中国やロシア、北朝鮮が新たな動きを見せる可能性は十分に考えられる。特に北朝鮮政策についてバイデン陣営はこれまでほとんど言及していない。討論会での発言を聞いていても、トランプ大統領とバイデン候補にどのような違いがあるのか分からないと感じた。オバマ政権で外交安全保障を担っていた専門家がアドバイザーに付いているというところから考えると、基本的にはタッチしないという“戦略的忍耐”という可能性もある。加えて今回はアメリカの国内政治が混乱し、海外のことに構っていられないということになるかもしれない。同盟国である日本としては、軍や外交、安全保障当局にはしっかりとして対応してもらえるようにしていかなければいけない」とした。
国際政治学者の舛添要一氏は「日本であればピシッと票数を数える選挙管理委員会があり、その結果を誰も疑わないという、いわば権威がある。仕組みは違うが、その公正さが疑われれば民主主義でなくなってしまうという問題意識をアメリカ人は持つべきだと思う。また、2000年の大統領選挙でブッシュ元大統領に負けたアル・ゴア氏も最集計を要求した。最終的には“数え直しはダメだ”との連邦裁の決定に対し“私は認めない”と言いながらも引き下がった。トランプ大統領も、この時のことを考えているのではないか。しかしそれでは“世界で最も優れた民主主義“と言われていたアメリカがひどいことになってしまう」とコメント。
オンラインサロン『田端大学』を主宰する田端信太郎氏は、2008年の大統領選の開票日をニューヨークで迎えたといい「マケイン候補の敗北宣言は、その後のオバマ候補のスピーチよりも感動的だった。オバマの名前が出ると起きるブーイングを制し、今回の結果をアフリカ系アメリカ人は誇らしく思っているだろうし、私とは意見の違いもあるが、国を想う気持ちは同じだ、と語った見事なものだった。それに比べて、今回はスッキリした解決は無いと思う。さらに言えば、コロナでトランプ大統領の会社の経営も厳しくなるのではないか。それも踏まえ、大統領から外れることで政府からの融資を受けられる、といいったことも織り込んで行動するかもしれない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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