東京・新大久保。韓流のみならずベトナムやインドなど、アジアの様々な国の文化が交差する人気の街だ。
そんな異国情緒あふれる新大久保に10月、“多様性”を象徴するような新スポットがオープンした。その名も「新大久保UGO」。
「多様性に向き合う」をテーマに、築60年以上の木造アパートをリノベーションして作られた、アートスペース兼コミュニティセンターだ。中に入ると、まず目に飛び込んでくるのは紫のネオンとバーカウンター。その奥に絵画やオブジェ、映像作品など、10数点のアート作品が展示されている。
この新大久保UGOを立ち上げたのが、現代アーティストの磯村暖さん。磯村さんといえば、東京藝術大学に満点で入学した現代アート界の鬼才。『ABEMAヒルズ』では去年1月、磯村さんがLGBTQや難民問題など、社会問題を題材にした作品を生み出す現場を取材していた。
その後、磯村さんはアーティストの国際文化交流を支援する「アジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)」の助成を受け、アメリカ・ニューヨークに半年間滞在。今年3月に帰国した。
挑戦を続ける磯村さんが仕掛ける、新たなアートスペース。いったいなぜ「新大久保」という場所だったのか。
「気軽に人を呼んで、何か一緒に製作とかできるスペースがあればいいのになっていうのはずっと思っていて。そうしたら、ここの大家さんが新大久保で面白い活動できるアーティストを探していると。新大久保はそういう多文化的な場所で、住んでる人もいろんな人がいるし、“ここでやれたらいいな、UGOをやりたい”って思いました」(磯村さん)
人口の3割が外国人だという新大久保。多種多様な人が行き交うこの街で、“自分自身でいられる安全地帯を作りたい”。そんな思いから、知り合いのアーティストらとともにアートスペースの立ち上げを決意した。
しかし、その矢先、新型コロナウイルスの猛威が襲いかかる。
「3月から6月までは、(NYから)帰国して『さあここを盛り上げるぞ!』っていうタイミングだったけど、この間は本当に人との接触が制限されていたので。知らない人と接触できたりとか、こういう空間の中にいっぱい人に来てもらって、ローカルコミュニティみたいな人たちとも積極的につながっていたいっていう風に最初思っていたけれども、それが全部できない。色々企画しようにも様子を見なきゃいけない状況がずっと続いていたので、色々難しかったですね」(同)
コロナの影響で臨時休業に追い込まれた美術館などのアート施設。今年3月に予定していた新大久保UGOのオープンも延期を余儀なくされた。しかし、これがきっかけとなり、アートスペースには行き場を無くしたアーティストが次々と転がり込んでくるように。
「コロナでスタジオが使えなくなったアーティストとか、家を追い出されたギャルとかいっぱいいたんですよ」
こう語るのは、UGO立ち上げメンバーで、現在もここで生活する龍村景一さん。龍村さんは、この偶然の出会いがUGOの骨格になっていったと言う。
「何とか生き延びるために集まってたんですよね。自炊して、めちゃくちゃ豪華だけど100円とかで美味しいものを食べられるみたいな。シチュエーションを助け合って作っていったっていうのはありました」(龍村さん)
コロナの影響で職や住む場所を失った人たちが集まり、共同生活。やがてUGOの意義に賛同した彼らは、運営メンバーとしてともに活動するようになった。SNS運営などを担当する“職業・ギャル”のぱにぱにぱにぱにともちんぱさんもその1人だ。
「ルームシェアしてたんですけど、コロナがきっかけで解消になって。一旦UGOに転がり込んできたというか、暖くんとかのおうちに転がり込んで、UGOの存在を知って、直感的に“ここは結構激アツ!”っていうか、激アツスポットになる気がするなってビビッときて、そのままメンバーになりたいって言って入りました」(ぱにぱにぱにぱにともちんぱさん)
コロナがめぐり合わせた、職業も思想も生き方も不揃いのメンバー。はじめは4人だった人数も、今では9人に増えた。そんな“多様な”仲間たちが支え合い先月17日、新大久保UGOはようやくオープンを迎えた。
「半年延期してたので本当にうれしかったですね。けどオープンしてこれからの活動が重要になってくると思うので。全然手放しに喜べないっていうか、これからだなって感じです」(磯村さん)
今後はこの場所から、作品の展示だけではなく、様々なアーティストとの交流、さらには異国の文化を発信することで、新たな“つながり”を生み出していきたいと磯村さんは話す。
「アーティストの表現の場にもしていきたいし、アーティストになりたくないけどアートに触れたい人はいるだろうから、楽しめるワークショップとかもやりたいし。外部の要素とか色々引き込んで、一緒に学んでいかなきゃいけないことを知りたいし、学んでいきたいし、何を僕たちは最初に勉強しなきゃいけないのかとか、そんな感じで色々な方向につながって発展していけたらなぁって考えです」(同)
磯村さんの新たな挑戦について、去年1月に取材したフリーアナウンサーの柴田阿弥は「人柄はとても優しく、穏やかな話し方をされる一方で、社会問題についてかなり強い意識を持っていらっしゃる方だなと。ニューヨークに行ったり家で作品を作ったりと様々なことに挑戦されている方なので、今回も新しい挑戦になるんだと思いますが、これからどんなアートや文化が生まれるのか楽しみだなと思っています」と話した。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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