DDTのビッグマッチ、11.3大田区総合体育館大会は衝撃のフィニッシュで幕を開けた。
この日、本戦第1試合で組まれたのは勝俣瞬馬vsMAO。新世代レスラー同士の一騎打ちだ。MAOはヒザの負傷で欠場していたが、この試合が復帰戦となる。
過去の対戦ではすべてMAOが勝利。それだけに勝俣も気合いが入っており、通常ルールでの試合にもかかわらずリングにブロック玩具を持ち込む。
ブロック玩具を踏んだ痛みは誰もが知っているだろう。それがマットいっぱいにばらまかれた上で投げられ、あるいは飛び技を自爆するのだからダメージは相当なもの。まさに“痛みの伝わるプロレス”だ。こうしたハードコアな展開はお互い得意。特に勝俣は、このところデスマッチでも頭角を現わしている。
自分の欠場期間中に力を増した勝俣にはいつもの技では勝てないと、MAOはとっておきの新技を披露した。エプロンからロープに後ろ向きで飛び乗り、スワンダイブ式でマットにダイブ。飛びながら体をひねり、正面向きになって1回転…と書いただけでは伝わらないかもしれないが、トータルで横に360°縦に450°回転するボディプレスだ。超ウルトラ難易度のフィニッシュに、実況担当の村田晴郎氏も「今の何ですか！」と驚愕。
この技の名は「マリーンズ・トルネード・スプラッシュ」。その名の通りマリーンズマスク（2代目）が開発した技で、MAOによると「LINEで教えてもらった」そうだ。
MAOは東北・宮城県出身。出身地とともに、地域密着のプロレス団体みちのくプロレスのイズム、「東北ルチャ」を継承したいという思いがある。これまでもみちのくドライバーなどゆかりの技を使い、みちのくプロレスの流れを汲む選手と練習することもあるそうだ。マリーンズマスクもその1人であり、MAOにとっては「東北へのこだわり」が込められた技だった。
勢いに乗るMAOは、この日ユニバーサル王座を獲得した上野勇希に挑戦表明。上野はクリス・ブルックスに、やはり新技WRアンリミテッドを決めた。これは相手の両手をクラッチしてのWRで、オリジナルは大阪プロレスなどで活躍してきたHUBだ。
そんな上野に「向こうはどれだけ大阪にこだわりがあるのか」と問いかけたMAO。ユニバーサル、みちのく、大阪とプロレスファンならピンとくるキーワードが並んだのは偶然か。
ともあれ上野25歳、MAO23歳と若い選手同士のシングル王座戦はフレッシュかつ重要だ。「自分たちがDDT（のプロレス）を見せねばわがんね！（見せなければいけない）」とユニバーサルのベルトに絡む時だけ東北弁に戻るMAO。技のインパクト、癖のあるキャラクターで共通する新世代の2人は、DDTの未来につながるタイトルマッチを見せてくれるのではないか。
文／橋本宗洋
写真／DDTプロレスリング
