“声出し禁止”のファンが思わず歓声を上げた“残り1.3秒”の劇的同点弾 「奇跡」「痺れる」ネットも騒然
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 1点ビハインドで迎えた試合終了間際、まさに土壇場のプレーから生まれた劇的な同点弾に、新型コロナの影響もあり“声出し禁止”とされている会場のファンから思わず歓喜の声が上がり、「奇跡」「痺れる」ネットも騒然となった。

【映像】劇的な同点シーン

 おうち時間、3密、Zoom映え、テレワーク、ソーシャルディスタンス、アベノマスク……。先日発表された今年の新語・流行語大賞ノミネート30語に、コロナ関連の言葉がいくつも並んだ。しかし、あの言葉がない。そう、スポーツにかかわる我々にとって、今でも身近にあるこの言葉だ。

 リモートマッチ──。

 プロスポーツでは、「無観客試合」が懲罰を意味することから、今年6月に「#無観客試合を変えよう」と題してTwitter上で名称を募集し、9球技12リーグが所属する日本トップリーグ連携機構は、「無観客試合」に代わる名称を「リモートマッチ」に決定した。この言葉は今、“ようやく使われなくなって”きた。

 スポーツの試合会場に、お客さんが戻ってきたのだ。

 やはりお客さんのいる・いないでは、会場の熱量が違う。戦う選手たちはそれを肌で感じていたはずだ。9月5日に約3カ月遅れで開幕したフットサルリーグ「Fリーグ」は、それから2カ月後の11月1日、ついに有観客試合を解禁した。その最初の試合は、リモートでは味わうことのできない“奇跡の試合”となった。

“声出し禁止”のファンが思わず歓声を上げた“残り1.3秒”の劇的同点弾 「奇跡」「痺れる」ネットも騒然
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■スタンドから思わず漏れ出してしまった542人の歓声

 試合は、エスポラーダ北海道のホームアリーナの一つ「北ガスアリーナ札幌46」で行われたシュライカー大阪戦。Fリーグでナンバーワンの観客動員を誇る彼らのホームゲームに詰め掛けたのはたったの542人。しかし、これが今できる“満席”だった。リーグ規定は1000席までだが、アリーナ席や関係者席、そのほか、運営導線などを考えると、500席程度が最大席数だとされている。会場は十分、熱気に満ちていた。

 試合は、ホームチームが後手を踏む展開。2016シーズンのリーグ王者と、こちらは近年、下から数えて数番目が定位置となってしまっているチーム。試合終盤まで0-1という展開も致し方なかった。

 しかし、お客さんの前で、このまま負けるわけにはいかない。選手の目は死んでいなかった。北海道は、GK坂桂輔を相手内まで押し上げるパワープレーを始め、自陣ゴールを無人にするハイリスクな攻撃を仕掛けたが、刻一刻と試合終了へ近づいていく。そしてあと数秒。会場の手拍子が止まりかけた時だった。

 水上玄太が右サイドからのパスをもらう動きからスルーすると、中央へと回り込んできた三浦憂が受け、間髪入れずに左足を一閃。シュート時の秒数は残り2.1秒。ゴールが決まり、時計が止まったのは残り1.3秒。今季からのルール改正で、Fリーグにブザービーターはない。まさに土壇場の出来事だった。

「奇跡」「痺れる」「これは熱い!」

 試合を中継したABEMAのコメント欄は大いに盛り上がった。しかし、それ以上に盛り上がったのが、試合会場だった。有観客試合が解禁したとはいえ、まだ“声出し”は禁止されている。にもかかわらず、あの瞬間は思わず声が漏れ出してしまっていた。無理もないだろう。会場が一瞬の歓声に包まれていた。

 三浦憂は試合後のSNSで「決めた後のこの歓声が本当に気持ちよかった」と伝えた。

 選手を後押しするのはお客さんの声援であり、会場の熱気に他ならない。「サポーターは6人目の選手」と表現されることもあるフットサルだが、ABEMAで解説を担当した元日本代表・横江怜氏が「これはやはり、ホームゲームに来たお客さんのパワーだと思う」と語った言葉が、より真実味を帯びていた。

 フットサルは10秒あればゴールが決まるスポーツとも言われる。それが物理的には可能であっても、残りわずかの時間しかない究極のプレッシャーのなか、簡単に決めるものではない。劇的すぎて「奇跡」と表現したくなるあのゴールに理由を見出すなら、やはり“お客さんが取らせてくれたゴール”なのだろう。

 新型コロナウイルスの感染拡大による多大な影響から、少しずつ、少しずつ日常が戻りつつある一方で、一進一退のまま、予断を許さない状況もいまだにある。北海道も、独自に定める警戒ステージが「3」に引き上げられたばかりだ。それでも、選手が戦う舞台があり、そこにお客さんがいる幸せは計り知れない。

「リモート」から「有観客」の最初の試合で起きた小さな奇跡は、コロナと戦う多くの人と、何よりも、待ちに待った試合会場にやってきた542人の心に、大きな勇気と感動を与えたに違いなかった。

文・舞野隼大(SAL編集部)

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