11日、「RCEP」(東アジア地域包括的経済連携)について大詰めの閣僚会合が開かれ、梶山経済産業大臣が大筋合意に向けて最終調整することを明らかにした。15日の首脳会合で大筋合意すると見られている。
【映像】「RCEP」交渉分野一覧 知的財産権のルール化で海賊品や模倣品の取締り強化も
「RCEP」は日本や中国・韓国とASEAN加盟国などの間で関税を撤廃や削減、電子商取引などのルールを整備するもので、昨年交渉を離脱したインドを除き、15日に開かれる首脳会合で大筋合意し、署名する方向で最終調整が行われている。合意すれば、日本は、中国・韓国を含めた貿易協定を初めて結ぶことになる。
一体、RCEPによって何が期待できるのだろうか。外務省幹部によると中国・韓国への輸出に関しては、農水産品・お酒・部品などでプラスに。日本食レストランの数が世界一の中国への輸出の際、40%かかっている日本酒の関税の削減は相当な消費効果があるとしている。輸入については、コメや麦、牛肉などの「重要5品目」は関税撤廃の対象とならず、保護される見通しだ。
世界の人口とGDPのおよそ3割をカバーする巨大な自由貿易圏の誕生。みずほ総合研究所・主席研究員の菅原淳一氏は、日本への影響についてこう述べる。
「日本に一番(メリットが)大きいのは、競争力のある工業製品。特に自動車などは中国も韓国もまだ関税率が高い。そのほか、さまざまな機械の部品類、中小企業が作っているそうしたものの輸出増加が期待されている」(以下、みずほ総合研究所・主席研究員の菅原淳一氏)
RCEPの地域内で広域なサプライチェーン(供給連鎖)を作っている日本企業。今までは貿易相手である中国と韓国の間でFTA(自由貿易協定)がなく、それがサプライチェーンを作る上での障害になっていた。
「実際に工業製品では、日本の中国への輸出金額の3分の2に関税がかかっている状況。韓国は8割弱に関税がかかっている。RCEPの詳しい合意内容はまだ分からないが、おそらくこれらの関税の多くが撤廃される予定で、日本にとっては中小企業も含めたビジネスチャンスが広がるだろう」
また「重要5品目」は関税撤廃の対象になっておらず、菅原氏も「ひょっとしたら一部の果物や野菜で(関税が)自由化されるものがあるかもしれないが、重要品目においては今回の協定で自由化はない。国内農業への影響は抑えられている」と日本国内の農家が脅かされる危険は低いと見ている。
さらにネットでは「日本に移民が大量に来るのでは?」という意見もあるが、これに対し、菅原氏は「高度人材、企業内転勤や家族が対象。そうした人のビザがとりやすくなったり、移動の円滑化が図られたりする」とコメント。RCEPに盛り込まれた“自然人の移動”で、「移民が大量に押し寄せることは基本的に考えられない」としている。
■海賊品や模倣品の取締り強化にも期待の声 日本はRCEPの“ナビゲーター”
そもそも、2003年に中国主導で交渉が始まったRCEP。知的財産権も高い水準になり、これまで以上に海賊品や模倣品の取締り強化にも期待できるという。
「RCEPには、物品の貿易だけではなく、電子商取引に関するルールとか知的財産権に関するルールが入っている。このRCEPというFTA(自由貿易協定)によって、日本と中国が同じルールの下でビジネスができるようになるということは、非常に大きな意義がある。日本としても今後中国との関係を良好に保つ上で、RCEPは法的な基盤になる」
アメリカと中国の対立が激しくなっている状況で、今後日本はどのように振舞うべきなのだろうか。東アジアにおける日本の展望について、菅原氏は「ASEANやオーストラリア、ニュージーランドとの協力が欠かせない」と語る。
「日本としてはASEANやオーストラリア、ニュージーランドとの協力がこれまで以上に必要。日本経済が相対的に衰退している中、かつてのアジア諸国の“兄貴分”ではなく、より公平で対等な立場での協力が必要だ」
「RCEPにおいては、ASEANが運転席に座っているドライバーと言われる。それに対して日本はナビゲーターであることが望ましい。そういった意味で非常に高い(水準の)ルール、理想的な姿を日本が提示していく期待されている」
大筋合意に向け、最終調整が続くRCEP。日本経済の追い風になるのか、期待がかかっている。
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