アニメーション映画『サイダーのように言葉が湧き上がる』(2021年6月25日公開予定)は、サイダーのように甘く爽やかにはじける少年・少女の青春グラフティ。俳句が趣味の無口な少年・チェリーを歌舞伎俳優の市川染五郎が声優初挑戦で演じ、そんなチェリーが恋に落ちるマスク姿の少女・スマイルを杉咲花が務めている。
十代目松本幸四郎を父に持ち、若干15歳にして歌舞伎界のプリンスとして期待されている染五郎は「声だけで役を演じることは難しかった」とビギナーならではの感想を漏らすも「役作りはしないで臨みました。共感できる部分は自分そのままで出さなければ、自分がやる意味がないと思ったから。アフレコ中は素の自分を半分以上出すようなイメージで演じました」とナチュラルを意識してチェリーに息を吹き込んだ。
杉咲はアニメーション映画『思い出のマーニー』『メアリと魔女の花』など声優業は経験済。しかし「今までにやらせていただいた作品と同じになってはいないかとドキドキしました」と意外な心境を明かし「実写であれば、髪の毛を切ったりメイクや服装などの見た目と印象を変えたりしてキャラクターに近づくことができるのですが、声のお仕事の場合は声だけで変化をつけなければいけないので」と難しさを実感している。
アフレコ収録が行われたのは、昨年の12月。複数の声優陣と合同で収録する形を初体験した。杉咲は「20人くらいの声優の皆さんと入れ替わり立ち代わりマイクの前で声を当てる経験は新鮮でした。自分の出番になったらマイクの前に立ち、自分の出番が終わったら雑音をたてないようにマイクから離れる。改めてプロの声優の皆さんの仕事は凄いと感じたのと同時に、複数で収録することによって生まれる臨場感を体感することができて嬉しかったです」と職人の技を垣間見た。
サイダーを飲んだときのようなスカッとした清涼感を、2人は自らの仕事で感じることがあるという。染五郎は「僕は舞台の人間なので、映画やドラマに比べて観客の反応がダイレクトにわかります。感動的シーンで泣いてくださったり、面白いシーンで笑ってくださったり、観客の方のリアクションを肌で感じたときはスカッとした気分になります。『僕はこのためにやっているんだな』と改めて思う」といい「余裕があるときはチラッとお客様の反応をうかがうこともありますよ」と笑う。
一方の杉咲は「作品がクランクアップしたとき、『終わったー!』とスカッとする」そうだ。「毎日の撮影は楽しいけれど、撮影が終わって明日が休みという解放感がいいです。早起きせず、自分の好きなペースでご飯を食べて、散歩をしたり、映画を観たり、好きなことを好きなようにするという、ごく普通の時間がいつも以上に特別なものに感じます。みんなで頑張ってきたものが終わってしまった寂しさはありつつも、やり遂げた、やり切ったという思いは格別です」と全力投球したからこそ生まれる達成感がある。
スカッ!とした後の癒しの時間には、それぞれの個性が際立つ。染五郎は「大好きなミュージシャンであるマイケル・ジャクソンの可動式フィギュアを5体くらい持っています。『バッド』『スリラー』『今夜はビート・イット』『ビリー・ジーン』などマイケルのそれぞれの時代を表したフィギュアで、自分の好きなポーズに変えて部屋に飾っています」とすっかり少年の顔つきだ。
杉咲にとっては外食が癒しの時間らしい。しかも「一人しゃぶしゃぶ」がマイブーム。「大勢で行くのも楽しいけれど、一人で行くのもおススメです。ポン酢ベースでお肉とネギを同時に食べるのが最高です。自分で料理を作るのも好きだけれど、ご褒美外食もいいですよね」とうっとり。癒しの外食時間を安心してとれる日常を心待ちにしている。
(※この記事は2020年3月23日に取材したものです)
ヘアメイク: AKANE
スタイリスト: 中西ナオ
ジャケット、パンツ(コスチューム ナショナル/コスチューム ナショナル 青山店)
シャツ(Y.O.N./スタジオ ファブワーク)他スタイリスト私物
ヘアメイク: ナライユミ
スタイリスト: 井伊百合子
テキスト:石井隼人
写真:You Ishii