「GoToを悪にして思考停止に陥るのは危険。エビデンスに基づく冷静な分析をして、リスクの低い地域は経済を動かすべきだ」福岡市の高島宗一郎市長が生出演で危機感を訴え
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 新型コロナウイルスの感染数とGoToキャンペーン事業の関係について、自身のブログに市内の宿泊施設の稼働指数と感染者数を表すグラフを示し「11月19日時点の分析においては、GoToトラベルと福岡市の感染者数に相関関係はみられませんでした」と訴えた福岡市の高島宗一郎市長。

 それから1週間。感染が全国で再拡大、GoToキャンペーンの運用見直しや飲食店への営業時間短縮要請などが相次ぐ中、高島市長は何を思うのか。30日の『ABEMA Prime』が生直撃した。

・【映像】高島宗一郎市長「リスクの低いところでは経済を動かしていく」

■なぜブログを書いたのか?

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 なぜあのブログを書いたのか。その理由について高島市長は次のように説明する。

 「日本医師会の会長が、“エビデンスはないが、GoToキャンペーンが感染拡大のきっかけになったことは間違いない”という、非常に矛盾のある言い方をされた。何となく雰囲気は伝わってくるが、“エビデンスはないが間違いない”、というのはどういう意味なのか。福岡市は9割の方が第3次産業で働いている街なので、たくさんの方に来ていただけることが地域経済にとってとても大切だ。そこで本当に相関関係はあるのかなと、実際の数値をデータとしてグラフに落としてエビデンスを作ってみた。

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 見ていただければ分かる通り、青色で示した感染者数の“第一波”が収まった後、オレンジ色で示した宿泊施設の稼働指数が伸びていった。その後、感染者数が再び増加してはいるが、この傾向はGoToトラベルが始まる前からのものだということがわかる。そして、それに併せて伸びなくなった稼働指数は、感染者数が落ち着くと再び右肩上がりになった。右端にあたる直近の部分では感染者数は増えてきてはいるが、基本的には感染者数は低いまま続いてきた」。

 一方で、11月になってから感染者数が少しずつ増加している。これはGoToが原因ではないのか。

 「11月から少しずつ陽性者が増加している理由について調べてみた結果の円グラフ(青色が新規感染者で、水色で示しているのが接触者)があるが、実は旅行を伴っていたものは全体の1割しかいないことがわかる。結果として、福岡市においては、GoToトラベルが始まったことと感染者数の相関関係はないということが分かった」。

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 県を跨いでも保健所間での連携があるので、もし福岡に来た人が東京で感染が判明すれば東京から連絡が入るが、そういった報告もないという。

 「私としては、これからGoToトラベルをどうするかについては政府として議論していただければいいと思っている。ただ、多くの方の経済的損失にも関わることなので、やはり雰囲気ではなく、エビデンスベースで議論をしてほしいと思う。感染者の増加にはエリアごとに複合的な要素が組み合わさっていると思う。そこを冷静に分析していかなければならないのではないか。そうでないと、GoToが悪い、と政府批判をすれば何かが解決されるような思考停止になってしまいかねない。GoToをはじめとした地域への経済支援策は、それぞれの地域の医療状況、重症者を受け入れることのできる病床数に合わせて判断すべきだと思う。ちなみに、自治体の判断材料になるエビデンスとしては、感染症法に基づく疫学調査がある。福岡市のような中核市以上の自治体であれば保健所があるので、陽性者が出れば、聞き取りなどで感染経路の詳しい調査もできる。今は都道府県知事にしかない様々な権限を、日々現場で疫学調査をしている保健所を持つ中核市以上の自治体に渡していただければ、「このエリア」「この店と」いうピンポイントでの対策を細やかに速やかに出せるようになる。まさに最小の経済的損失で最大の感染拡大防止策になると思う」。

■全ての小中学生にタブレットPCを配布

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 一方で、福岡市の医療提供体制はどのような状況にあるのだろうか。高島市長は「寒くなる冬の季節でもあり、日本全体として陽性になる方が増えているということは間違いない」とした上で、次のように説明した。

 「ブログにも書いたことだが、例えば福岡市では年平均で905人の方が肺炎で亡くなっている。一方、インフルエンザでもものすごい数の方が亡くなっていたが、新型コロナウイルスの感染症対策を徹底しているためか、今年の報告はまだ0件だ。さらに人の移動が無くなったことで119番通報が減り、増加傾向にあった救急車の出動件数は年平均に対して8000件以上も減っている。交通事故による119番も、昨年より680件以上減っている。一方、コロナで亡くなった方は累計で59人だ。俯瞰で見れば、相対的にリスクの見え方も変わってくる。とにかく私たちとしては、重症化リスクのある、高齢者や基礎疾患のある方々を守らなくてはならない。医療・介護施設の現場においては、抱きかかえたり、食事を手伝ったりと、様々な場面で密着が起こり、身体的距離を確保するなどと言ってはいられない現実がある。こうした現場でクラスターが発生すると大変なことになるので、この現場の従業者に対しては、希望者には無料でPCR検査が受けられるようにするなど、しっかりフォローしていきたい」。

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 また、12月1日からは市内の全ての小中学生にタブレットPCを配布、学校現場での感染拡大を防ぐ方針だという。

 「福岡市でも学校でクラスターが発生した。教育現場にも最高の衛生環境、ゼロリスクを求める親の気持ちはよくわかる。ただし現実問題として、子どもというのはすぐに先生にタックルしたり、友達同士でくっついたりする。それが数百人いれば、学校現場での完全な対策は難しい。私自身は、学校に登校して、子ども同士が対面で様々な経験をしたり、触れ合う中で、体力や免疫力を高めていったりすることも成長の過程では大事なことだと思っているが、子どもや親に基礎疾患がある家庭や、高齢者と一緒に住んでいる家庭など、不安や様々な事情があるし、そういう皆さんが求める最も高い衛生レベルに学校が合わせていくのは現実的には無理だ。そうであれば、選択肢を増やし、希望者は自宅から授業を受けてくださいという方向にしようと考えた。冬になれば風邪も流行るし、PCR検査で陽性になる人も増えてくるだろう。そこで教育委員会と話し合い、先生たちがICTの機器を使えるように、11月までに研修を行い、練習や準備をしてきた。11月30日までに福岡市内のすべての小中学生にタブレット配布を終えたので、12月1日からは自宅でオンラインで授業を受けられるようにする」。

■「GoToが悪いと言えば、政権批判という思考停止に陥るリスクがある」

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 その上で高島市長は「リスクの低いところでは経済を動かしていくという、メリハリを付けていきたい」と改めて訴える。

 「商工金融資金といって、一般企業に資金を貸した残高を示した資料があるが、リーマンショックの時には3年間かけて3524億円を貸していて、みなさんに頑張ってもらってちょっとずつ返してもらっていた。それが今回の緊急事態宣言後、たった8カ月でこれを上回る3800億円以上を貸さざるを得ない状況になっている。今後コロナがどこまで続くかにもよるが、額は日を追うごとに大きくなっている。もちろん感染者を増やしてはならないという意見には完全に同意する。しかし同時に、営業ができず収入がなくなり、借金を抱えたまま失業してしまったり、例えば子どもを塾に行かせられない、食事も満足に取れないと苦しむ人が出てきていることからも目を逸らしてはならない。

 今、福岡市の重症者は、いずれも80代後半の方々の2人だ。年齢的に言えば、他の疾患でも同じように重症化した可能性がないとはいえない。そういう中で、私達は感染者数を抑えるためにどこまでの社会、経済的コストを負担すべきなのだろうか。病床が逼迫している地域が人の動きを止める施策を打ったり、GoToの一時停止をするのは理解ができる。しかし、まだ感染者の少ない福岡で、予防措置としてGoToを止めるには、現時点ではあまりにもその代償が大き過ぎるのではないか。特に地上波のテレビ番組はコロナが危ない、危ないと言うが、冷静になれば生きていく上でのリスクは他にもたくさんある。コロナの感染拡大を防止することが絶対に大事ということは間違いない。医療従事者の負担を下げることも極めて重要。ただし同時に、行政の財源も、民間の蓄えも限られている中、何を守るために、何をどこまで犠牲にするのか、という冷静な議論が抜け落ちることも良くない」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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