倒されたのか、押されたのか、それともバランスを崩しただけのか…。自ら「俺は絶対にダウンをしない」と豪語してきた男が喫したよもやのダウンシーンが、いまファンの間で「ダウンか否か」論争に発展している。
12月4日に開催されたONE Championshipシンガポール大会「ONE:BIG BANG」。アンデウソン・シウバ(ブラジル)とムラト・アイグン(オランダ/トルコ)のキックボクシング・ライトヘビー級戦は判定にもつれ込む接戦となり、アイグンが勝利を収めた。
そんな中、注目を集めているのが「過去に一度もダウンをしたことがない」と豪語するアイグンが2ラウンドに喫した“幻のダウン”を巡る判定だ。アイグンの判定勝利という結果を受け、ファンの間で「どう見てもダウン」「押されてバランスを崩した」など、意見が真っ二つに割れ、論争に発展。さらには「本人が認めなければノーダウン(笑)」といった声まで上がるなど話題を呼んでいる。
日本のRISEへの参戦経験もあり、肉屋で働いていたことから“ザ・ブッチャー(肉屋)”のニックネームで知られるアイグン。16勝1敗の戦績で重量級の選手ながら「過去一度もKOされたことがない。絶対に倒れない」というのが最大のアピールポイントだ。対するUFCレジェンドと同名のシウバは以前、UFC登竜門の「ジ・アルティメット・ファイター」の候補生としてMMAを目指した過去を持っている。
試合は1ラウンドから重量級ならでは、期待どおりバチバチの殴り合いで幕を開ける。アイグンがプレッシャーからパンチ、キックとまとめると、対するシウバもボディ狙いから、顔面へと一発が怖いパンチを繰り出し、徐々にアイグンを捉えはじめる。ABEMAで解説を務めた大沢ケンジは「アイグンは全然顔を動かさない。本当に打たれ強いんでしょうね」と指摘し、アイグンがパンチを貰いやすいこと。そのうえで、打たれ強いことなどについても触れた。
2ラウンド、アイグンの「絶対に倒れない伝説」に暗雲が立ち込める。序盤からシウバのフックをモロに被弾。最初の一発では平静を保ったが、次の打ち合いでさらに追い打ちの左フックを貰うとまさかのダウン。しかし、レフェリーがカウントを数えるとスクッと立ち上がったアイグンは、両手を広げて「倒れてない、ノープロブレムだ」と大声で主張した。
この奇妙な光景に視聴者からも「めっちゃダウンだろ」「(ダウン判定に)めっちゃ不満そう」などの声が殺到。問題となったダウンシーンのスローリプレイで確認しても、シウバのパンチが当たっていたか、はたまた胸で受け止める格好となり、押されてバランスを崩しただけなのかハッキリしないままだが、レフェリーがダウンを宣告したというのは確かだ。
大沢もアイグンの過剰なアピールにやや呆れた様子で「きっと、こういう感じで繰り返してるんじゃないですか? オレ倒れてないよと本人が思ってるだけで…」と話すと、視聴者も「本人が認めなければノーダウン(笑)」「思い込み強いな」などと続いた。一方、「押されて倒れた感じ」という声もあり、ダウン派とノーダウン派で意見が割れた。
その後、アイグンは自らの言動のとおりダウンによるダメージを一切感じさせない。再び激しい殴り合いを展開すると、シウバの強烈なパンチを何発も被弾するも表情ひとつ変えずに2ラウンドを乗り切り、3ラウンドもほぼ互角の展開でフルラウンドを戦い抜いた。
「ダウン判定」で議論を呼んだ一戦は、判定結果を巡ってさらなる論争を呼ぶことになる。アイグンの判定勝利がアナウンスされると、ファンからは疑問の声が殺到。さらに解説陣も予想外の判定結果に驚いた様子で、実況を務めた西達彦アナウンサーも「テロップがあるなら3人の頭の上に“?”を付けてほしい」と話し、解説陣もこれに頷いた。
かなり際どい判定ではあったが、決死のアピールでなんとかダウンを取り消すことに成功したアイグン。勝利よりも本人がこだわった「ノーダウン伝説」が勝利を呼び込む鍵となったようだ。
なお、この一戦については「Knockdown?」の短いコメントとともにONE Championshipの公式インスタグラムでも触れており、「ダウンではなく、バランスを失っただけ」「バランスを失ったように見えるが、パンチと同時。つまり、ダウンだ」など、ここでもファンの意見が割れている。