まるでスローモーションを見ているように滞空時間の長いゆったりとしたループは、相手GKを嘲笑うかのようにゴールネットへ吸い込まれた。いわゆる超絶ループ。しかも、スーパーゴールを決めた選手が、現役の歯科医師でもあるというから驚きだ。自身のプロリーグでの初ゴールに表情が緩むと、口内にはめ込まれた青い自作のマウスピースが丸出しに。この一連のシーンに、実況も、ネットも騒然となった。
その選手の名前は、外川海斗。バルドラール浦安で戦うフットサル選手だ。ゴールが決まった瞬間、実況・福田悠氏も「いやー!素晴らしいゴール!」と興奮を隠せない。
それもそのはずだ。外川がボールを受けたのは左サイドのシュートの角度がない位置。GKが迫ってくる状況も、体の向きも、シュートを選択する場面とは思えない。解説・北原亘氏が「ためて逆サイド(の選手にパスを出すの)を待ったかなと思いました」と、ループを打つことは誰も想像していなかった。
しかし、外川が放ったシュートは、見る者すべての想像を超えた。ペナルティエリアぎりぎりまで飛び出し腕を目いっぱいまで伸ばす相手GKの頭上を越え、ゆっくりとゴールへと吸い込まれていった。
「とんでもないループ!」、「すげえ」、「うっま!!」
試合を生中継したABEMAのコメント欄には、ゴールの直後に驚愕と賛辞の言葉が殺到した。まるでベテラン選手のように落ち着き払ったゴールだが、実はこれがFリーグ初得点。シュートが決まったことを確認すると、喜びを爆発させ、チームメートと歓喜の抱擁を繰り返した。
この様子を見た福田氏は「思わず表情が崩れて、ご自身で製作のマウスピースも丸出しになっています!」と実況。外川はフットサル選手としての側面を持つ一方で、実は、現役の歯科医師でもあるのだ。
フットサルでは、プロリーグで戦いながらも、普段は仕事をしている選手が大多数だ。ただし「歯科医師」は異例中の異例。アスリートと医療従事の兼任は並大抵の努力と覚悟では務まらないだろう。だからこそ彼は、誇りをもって「日本一フットサルのうまい歯科医師」を自称している。おそらく間違いない。
そんな彼のゴールは、日本人W杯得点王・稲葉洸太郎氏によるABEMAの番組「Fリーグダイジェスト」の週間トップ5ゴールの堂々1位に選出された。実は、稲葉氏は、外川の小学生時代のコーチ。稲葉氏も、「特にひいきしたわけではないですが、彼の初得点は本当にうれしかったです。おめでとうございます!」と祝福した。幼少期からフットサルを続け、プロ選手となり、なおかつ歯科医師に。とんでもない選手だ。
さて、スーパーシュートで見る者の度肝を抜いた外川は、これからどんなパフォーマンスを披露してくれるのか。そして、これから何度、自作のマウスピースを丸出しにしてくれるのか。外川の“笑顔”に期待だ。
文・舞野隼大(SAL編集部)
写真/高橋学