コロナ禍で経営難に陥る街の歯医者も…“本当に歯科は多すぎる”のか?
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 新型コロナウイルス感染への恐れに伴う“受診控え“が、医療機関の経営に深刻な影響をもたらしている。

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コロナ禍で経営難に陥る街の歯医者も…“本当に歯科は多すぎる”のか?
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 アイビルクリニック(福岡市)の永田眞人元院長によると、多い日では1日に50人ほどの来院者がコロナ禍で激減し、4月に入ると2、3人しか来ない日もあったという。永田元院長も貯金を取り崩すなどして経営を維持しようとしたが、6月末に閉院、職員を解雇せざるを得ない状況に追い込まれてしまった。

 北九州市にも2つの医療機関を経営している永田元院長。うちの1つも7月から閉院状態にあるという。「医療は国のインフラだ。コロナが収束した後も、人口に対してある程度の医療機関は必要だ。国の予算も含めて、対策が必要だと思う」。

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 こうした懸念は、歯科医も例外ではない。相互歯科(東京・立川市)の木口祐子事務長が見せてくれた4月の診療スケジュールには、無断のものも含むキャンセルマークが並ぶ。

 岩下明夫副所長によれば、4月の来院者数は前年に比べ6割も減少したという。「法人全体では、すでに大体9億円くらい借りている。やはり口の中を見たりすることが必要な歯科は敬遠されがちだ。基本対面で、なおかつ処置をしないと治療ができないので、医科でいう内科のように、お話を聞いて診断し、お薬を出してというようなことはなかなかできない」。

 受付や診療ブースをビニールシートで仕切ったり、換気をよくするための環境を整えたりと、感染対策を徹底。患者に対しては電話やハガキで説明を行い、不安払拭にも努めてきた。その甲斐もあり、ようやく元に戻りつつあった矢先の“第3波”。近ごろでは、キャンセル件数が再び増加しているのだという。

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 こうした状況を受け、岩下氏は「診療報酬制度」への疑問を口にする。「特にコロナ禍では感染予防対策をしながらの治療になるので、患者さん一人あたりにかかる治療の時間も長くなる。当然、一日に診られる患者さんの数も限度があるということになる。しかし、もともと歯科の診療報酬は非常に低く抑えられているので、要するに数を診なければならなかった。このままでは、患者を診ることで医院の経営を成り立たせる、という今の方法が成り立たなくなる」。

 歯科医師、歯科医院をめぐっては、“コンビニよりも多い”といった指摘もなされている。ところが岩下氏は「1970年代くらいに“虫歯の洪水”と言われる時代があり、歯科医師が足りなくなった時期があった。そこで国立大学を中心に歯学部の定員を増やし、徐々に問題を解消していった。一方で、一度増えた定員はなかなか減らせないということもあり、それが今の状況にもつながっていると思う。ただ、私は多過ぎるとは思わない。なぜかよくコンビニと比較されてしまうが、医科の診療所は10万軒ほどもあるわけで、それに比べると、歯科は少ない。加えて、一定の収入がある人でないと受診ができていないという指摘もある。つまり、治療が必要だけれども受けられていないという人たちがたくさんいるということだ。そう考えれば、本当に数が多いと言えるのか、私の中では疑問だ」。

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 “歯が健康な人ほど長生きする”という研究結果もあり、政府としても歯科受診を推薦するようにすればいいという意見もある。岩下氏は「高校を卒業すると、歯科検診を受ける機会が極端に減ると思う。国も骨太方針の中に歯科や口腔の問題を取り上げているが、全ての世代で検診が受けられるようにしていくことが重要だと思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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