22日、2020年にTwitterで話題となったワードを選出する「#Twitterトレンド大賞2020」が発表された。
1位に選出されたのは、「コロナ(新型コロナ)」。そのほかにも、今年大きな話題となった「100日後に死ぬワニ」、映画の歴代興行収入ランキングで2位という歴史的なヒットを記録している「鬼滅の刃」など、今年を象徴するワードがずらり。
そんなランキングの中で2位となったのが、「#検察庁法改正案に抗議します」。今年5月、このワードをめぐって日本中で巻き起こった大きなうねり。きっかけは1人の女性のTwitterへの投稿だった。
「1人でTwitterデモ #検察庁法改正案に抗議します 右も左も関係ありません。犯罪が正しく裁かれない国で生きていきたくありません。この法律が通ったら『正義は勝つ』なんてセリフは過去のものになり、刑事ドラマも法廷ドラマも成立しません。絶対に通さないでください」(笛美さんのツイートより)
検察官の定年を65歳まで引き上げるとする検察庁法の改正案。検察の人事に政治が介入する懸念が焦点となり、国会で激しく議論が行われていた中、投稿されたこのツイートはインターネット上で話題となり、瞬く間に広がりをみせた。さらに、きゃりーぱみゅぱみゅや井浦新などの著名人らもこのハッシュタグを付けてツイート。わずか3日で500万ツイートを超える一大ムーブメントとなった。
『ABEMAヒルズ』では当時、この最初の投稿者となった笛美さんを取材。Twitter上での広がりに対して、「自分が想像もしていなかったような多くの方が声をあげてくれた喜び。数の力というのがどんどん増えて、100万とか400万とかになったのがすごくうれしかった」という一方、「同時に怖かったというのもある。今までにいろいろツイッターデモがあった中で、それよりも何倍も多いというのが意味わからなくて怖くなった」と話していた。
投稿した本人も予想だにしなかった大きなうねり。そんな世論も後押しし、検察庁法改正案は見送られる形となった。
それから半年、番組では改めて笛美さんに話を聞いた。Twitterデモが世の中に与える効果について、「私が始めたわけではなくて、いろいろな人が今までもやっていたと思う。Twitterって、政治に関心がない、エンタメだったりグルメだったりいろいろな情報を得にきている人がいるので、そういった方々にも政治の話題が目に入ることで関心をもってもらえたりする機会が増えたのかなと思っている」と話す。
また、恐怖心もあったという当時の反響については、「他にも(Twitterデモを)やっている方がいっぱいいる中で、自分のがトレンドに入るなんて思わなかった。しかもトレンドに入るどころではなくて、ずっとそこにいるみたいな。世界のトレンドになってしまったということもあって、まさかという感じだった」と振り返った。
指先から人を動かし、世論を変える。笛美さんは、そんな経験をしたからこそ伝えたいことがあると訴える。
「Twitterデモは“万能な道具”じゃない、いつでも使える武器じゃないと思っている。効果がかなり運任せなところもあって、でも声を上げるツール、政治を動かしていくツールとしてはすごく必要。みんなが言いたいことを言う自由はあると思うから、そのツールとしてはすごく必要だと思う。本当に『これやばい』と思ったら発作的に始めるかもしれないが、今のところは自分で何かをするとは、今この瞬間は特に思っていない」
■大きな流れの中で注意すべき“思考停止”…Twitterデモの功罪
今年は「#検察庁法改正案に抗議します」の他にも、「#Amazonプライム解約運動」「#GoTo中止」などTwitterデモの動きが広がった。こうした流れについて、東京工業大学准教授の西田亮介氏は「良いところと悪いところがあるということに尽きる」「最後は、内容と議論次第だ」と、功罪を次のように指摘する。
「(Twitterデモには)例えば気が付きにくい問題を広く世の中に周知させることがある。僕なんかがいいなと思ったのは、『#MeToo』になぞらえた、“女性のヒールが大変苦痛だ”“女性もヒールがない靴を履ける環境にするべきだ”という『#KuToo』のデモ。僕はヒールがある靴を履かず、そういう想像力がうまく働かいたことがこれまでほとんどなかったので、なるほどなと思った。就業規則などでヒールを履くことを定めているような業界もあるということも知って、それはあまり公平だと思えず、もっぱら男性が楽な靴を履けるのであれば女性にも当然そのようにルールを定めるべきだと思った。
一方で懸念するのは、同調圧力。日本社会はしばしば同調圧力が強いと言われるが、例えばTwitterには字数の制限があり、内容の正確性を求めるには難しいところがある中で、特定の意見が“なぜそうなのか”がよくわからないまま有名人が参加するような流れになるのもよく目にする。そこではしばしば異論を許さないような空気が生まれ、異論や疑問すら炎上することもある。議論であるならまだいいが、誹謗中傷などが起きて『世の中のこういう流れに反対するのか』と却って思考停止に繋がりかねない点は懸念すべきだと思う」
また、著名人の発信には影響力があること、トレンドには“流れを作りたい人”の意図が含まれる可能性がある点について注意を促した。
「芸能人が政治を語ることはそれほど多くはないが、それはブランド管理の問題でもあるのだろう。一方で、芸能人にも表現の自由、好きなことをネットに書く権利はある。そこでもうひとつ考えるべきは、当然インフルエンサーとして多くのフォロワーを抱えていることだ。日本では普段から政治について発言しない規範があるとして、あまりものを考えないままに政治的意見をつぶやくと、『この人が言うんだから大変なことだ』と世論に大きな印象を与えてしまう。それで大きな流れを作ってしまうことがある影響力については、(芸能人は)自覚すべきだ。
(Twitterトレンドは)世論調査ではないので、大きな流れがあるように見えても、少数の人が書き込んでいるのか、本当に多くの人が書き込んでいるかよくわからない。Twitterトレンドにも傾向があって、特定の期間内に集中的に書き込みがあったかを計測しているので、特にムーブメントを作りたいと思う人たちにとっては狙っていくことができるということも念頭に置く必要がある」
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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