[辰巳リカ×劔樹人対談]音楽グループからプロレスへ 「見返してやる」 と誓った“ユカリカ”のドラマ
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 東京女子プロレス恒例のビッグマッチ、1月4日の後楽園ホール大会が近づいてきた。上福ゆき&桐生真弥が爆れつシスターズのタッグ王座に挑戦、伊藤麻希が宿命の相手と言える山下実優とシングルマッチ。好カードが並んだ大会のメインイベントでプリンセス・オブ・プリンセス王座を争うのは王者・坂崎ユカと挑戦者・辰巳リカだ。

 団体の初期メンバーでもある2人は、もともと同じ音楽ユニット・DPGに所属しており、プロレス入門も一緒。そんな2人が後楽園ホールのメインでベルトをかけて闘うというドラマティックな背景がある。

 そのDPGでプロデューサーを務めていたのが、バンド「神聖かまってちゃん」のマネージャーとして活躍、最近ではマンガコラムの著作『あの頃。男子かしまし物語』の映画化も話題になった劔樹人さん。新刊『僕らの輝き ハロヲタ人生讃歌』でもハロー!プロジェクトのファンの生態と心情、その泣き笑いが(実体験も含めて)描かれており、プロレスにも通じる“ファン気質”を表現する名手だ。辰巳リカをもっとも古くから知る人物との対談で浮かび上がった、後楽園メインイベンターの底力とは?

 (文/橋本宗洋)

――お2人が最初に会ったのはDPGのオーディションですか。

リカ:そうです。私は長野の会社員で、ずっと音楽をやるために上京したくてオーディションを。かまってちゃんのファンだったので「劔さんが関わるグループなら信頼できるし面白そう」って。

劔 あのオーディションはねぇ……。グループを作った成田大致に急に審査員で呼ばれたんですよね。「暇だったら」くらいの感じで(笑)。何も情報がなくて行ったら、福田くん(当時DDTグループ所属の福田洋。現・プロレスリングBASARAのトランザム★ヒロシ。DPGメンバーだった)が布施明の歌を歌ってたりとか。オーディションには(男色)ディーノさんも審査員でいましたよね。

――DPGは結成当初からDDTと密接な関係があって。

リカ そこにまったくの素人としてオーディション受けたのが私とユカちゃんだったんですよ。1分間の自己PRタイムがあって。

――DDTの一芸審査と同じですね(笑)。

リカ 私はギターの弾き語りでYUIの曲をやりましたね。ユカちゃんはお笑い芸人を目指してて……。

劍 一発芸をやってましたね。江頭(2:50)さんみたいな体を張る感じの。

リカ 変なオーディションでしたよね。お酒飲みながら受けてる人もいて(笑)。

劍 あ、僕その人合格にしました(笑)。

リカ 受かってたのにお披露目前にやめてしまったんですよね(笑)。私は本気だったんですよ。

劍 リカちゃん、ユカちゃんのことは印象に残ってますよ。オーディションを受けた中で、2人が抜群に正統派だったんですよ。やっぱりグループには真面目に、一生懸命にやる人が必要なので。

――そんな真面目要員が、グループに入ってみたら「ケンドー・リリコ」としてマスクウーマンになるという。

リカ でもマスク好きでした。被るだけで盛れるっていうか。あと「実は素顔は可愛いんじゃないか」って思われるマスクマジックが発生するので(笑)。

劍 音楽やる時はマスク、プロレスデビューしたら素顔っていうのも珍しい(笑)。

――DPGは2013年に結成して、リカさんと坂崎選手はその年に、“大社長”こと高木三四郎選手に直談判してDDTグループの東京女子に入門しています。

リカ 2人一緒で。グループは結成したてだったんですけど、内部で私たちだけ除け者扱いっていうか……。

――立場がよくない?

劍 グループの中で音楽経験がないしレスラーでもないのってリカちゃんとユカちゃんだけでしたからね。もう1人、素人から入った女子メンバーもいたんですけど、その子は大致の幼なじみだったので。2人だけ“外様”じゃないけど。

リカ そういう感じだったので「プロレスやって見返してやる」って。だから成田さんを通さずに高木さんに直接、入門したいって言ったんです。

――「直談判」ってそういう意味だったんですね。

リカ だけどそれを知った成田さんはブチギレですよ。「俺は聞いてない」みたいな。しかも先にその女子メンバーも入門していたので。2人で成田さんにお好み焼き屋さんに呼び出されましたね。「もう君たちに未来はないから」って言われて。もうクビだくらいの。もうボロボロでしたね。ユカちゃんと2人で毎日泣いて。

劍 それでブラックDPGだっけ?

リカ 私とユカちゃんの「ユカリリ」がブラックDPGっていうDPGのライバル、プロレスでいうヒールのグループになって。成田さんにキレられてるのをアントンさん(メンバーだったレスラーのアントーニオ本多)に相談して「それはおかしいよ」っていう話になって。ブラックDPGが救済措置というか。

――「ここで出直せ」と。

リカ ここで頑張れなかったらその先はないぞっていう(苦笑)。

劍 音楽グループでアイドルっぽく楽しくやってるのかと思ったらそんなことが(笑)。いろいろあってここまできたんですよねぇ……。

リカ プロレスで頑張るしかないっていうか、それが唯一の希望で。

――プロレスそのものにはどんな魅力を感じましたか。

リカ アイドルとかバンドが好きだったので、似たところがあるなって。紙テープ見たら色分けされてて「レスラーにもアイドルみたいなイメージカラーがあるんだ」とか。あとは熱さ。ライブで感じるエモーショナルな感じにも近いと思いました。私が好きなブルーハーツとかももクロちゃんにもつながる感じで。

劍 音楽が好きで入ってきた人たちがプロレスに惹かれていく流れっていうのがいいなぁって思って見てましたね。最終的に2人とも音楽をやめてプロレスに専念するわけじゃないですか。そういうのも夢があると思って。

――2人がここまでプロレスで活躍するようになると予想してましたか。

劍 めちゃくちゃ感慨深いんですけど、実は予想できなくもなかったんですよ。ユカちゃんは運動神経もいいし、プロレスに向いてるなって。ユカちゃんは東京女子プロレスの旗揚げ戦(2013年12月)でデビューして。リカちゃんはその後だっけ?

リカ はい。マッチメイクの人数的に、ユカちゃんか私のどっちかしか旗揚げ戦ではデビューできなくて。それならユカちゃんが選ばれるだろうなっていうのは自分の中でもありましたね。

――ライバル心みたいなものは?

リカ ユカちゃんは私よりデビューも早かったし、私がケガで欠場している間もずっと前を進んでたんですよ。一緒に頑張ってるつもりなんだけど先に行ってるなって。でも悔しいとかではなかったです。ユカちゃんを認めていたので、頑張ってるのが嬉しいっていうのもあって。

――もともとタッグ、コンビというのもありますし。

リカ リングネームを「辰巳リカ」にして本名のリカを残したのも、それが関係あるんですよ。もともとユカ・サカザキとケンドー・リリコで「ユカリリ」だったので「ユカリカ」なら響きが似てるなって。

――「ユカ」あっての「リカ」残しだったんですね。

劍 ユカちゃんとはタイプが違うけど、リカちゃんもセンスあったと思いますよ。DPGにも残って中心になった時期があったり。地道に積み重ねてファンを巻き込んでいくみたいな力があるんですよ。

リカ 最初の2、3年は自分がやりたいことが全然できてなかったですね。特にユカちゃんと組むと、お客さんがユカちゃんしか見てない感じがして。「私はここにいるんだろうか」って。そこから初めてのタイトルマッチを経験してガムシャラに闘っていたら少しずつ応援の声も増えて、自分らしく闘えるようになっていきました。

劍 リカちゃんはライブでもそうなんですけど、急に爆発する時があるんですよ。アーティストはクールに計算して爆発できるタイプもいるんですけど、リカちゃんは無意識ですね。

リカ それ一番カッコいいじゃないですか!

劍 そういう意味では音楽でもプロレスでも変わってないと思いますね。でも2人がメインでタイトルマッチっていうのは感慨深いところもありますし。

リカ 古参っぽいコメントですね(笑)。

――最古参ですから。

劍 いや、ここまできたら勝ってほしいなぁ。

リカ ユカちゃんも読むかもしれないですよ(笑)。

劍 まあまあ(笑)。でもずっと背中を見てきた相手を大舞台で追い越すって凄いドラマがあるじゃないですか。

――リカさんとしてはタッグ王座に続いて2本目のベルト奪取がかかる試合でもあります。

リカ 今回はシングルですけど、ファンの人たちがいるから1人じゃないっていう思いもあります。ファンは同じ船に乗ってる仲間なので。個人的には女性にも見てもらいたいです。

――それこそ劍さんがマンガに描いているモーニング娘。じゃないですけど。

劍 女性ファン、増えましたからね。僕は昔、棚橋弘至選手と道重さゆみさんの類似点を力説したりしてたんですけど。

リカ 可愛さはもちろんなんですけど激しさ、全力なところも女性に見てほしいんですよ。今のアイドルもそうじゃないですか。私はボロボロになっても闘うので、一緒に闘ってほしい。そういう気持ちでリングに上がりたいと思います。

【視聴予約】東京女子プロレス‘21 1月4日12時~
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