今年の主役といえば、12年に1度回ってくる丑年の「牛」。その牛を愛し約20年、ファインダーを通して牛たちを見つめ続けるのが、牛写真家・動物写真家の高田千鶴さんだ。
「笑っている風に見える写真を撮るのが好きで。牛は横を向くと口角がキュッとなって笑っているように見える。反芻している口を開けるタイミングに、自分も呼吸を合わせて撮ると笑っているように見えるのが嬉しい」
1年間で10カ所もの牧場を回り、一度に撮影する枚数は500枚を超えることもある。牧場には他の動物もたくさんいるにも関わらず、高田さんがここまで「牛」にこだわる理由は。
「きっかけは、農業高校に入って牛の世話をする部に入った。高校2年になると、生まれた子牛に名前をつけて育てる体験ができる。オス牛だと1カ月ちょっとでお肉として売られていってしまう。私が担当したのがオス牛の『リク』で、何週間かしたら売られていくのがわかって、“リクが生きていた姿を残したい”“今の姿を残したい”と思ったのがきっかけ」
その後も牛への愛はどんどん深まるばかり。酪農ヘルパーを経て、本格的に写真を撮るようになったのは、ふとした友人の一言がきっかけだったと振り返る。
「友人が『牛の写真集があったらいいのに』と話していて、一眼レフを初めて買った。それまでは使い捨てカメラだったり、父の古い一眼レフを使ったりしていたが、それで本格的に牛を撮るようになった。酪農の仕事を離れたが、写真を撮ることで牛とつながるという目標ができたので、寂しくはなかった」
現在は、2児の母でもありながら、家族の協力も得て牛たちの撮影を続けている。
「家族の協力は大きくて助かっている。日帰りで行けるような牧場だと、主人に子どもを任せて1人で行くことが多い。ちょっと遠い地方の牧場とかだと、家族旅行のコースに入れてもらう。主人は牛にそんなに興味がなくて、息子はカウボーイ・カウガールスクールに通っている。そこで毎月牛の世話をするが、牛の扱いにもだいぶ慣れてきた。娘も幼稚園で『牛さんのにおいがする』とか言っているらしい」
そんな高田さんがこれまでに撮ったベストショットはこちらの2枚。
「この(左の)写真がすごく好きで。子牛の目のまん丸い感じ、まつげもクリンとしてる感じ。名刺にも使っていてかなりお気に入り。(右の写真は)リラックスしてくれている顔が、安心してくれているなって感じで好き。白いのがホルスタインで、茶色がジャージー牛。口から草が出ちゃっているが、そういうところが可愛い。ちょっと抜けてるところとか、多分お腹いっぱいで暖かいし寝ようみたいな。本能で生きているところがすごく好き」
牛が横にいると、一緒に横になりながら一日中牧場にいられるという。
今年は丑年。いつになく、牛が注目される一年になりそうだ。
「牛は“癒し”をくれる動物だと思っている。牛に会うと本当に癒されるし、写真で見ていても癒される。牛は人よりも体温が高くて、抱きしめると暖かくて本当に癒される動物。そういうのが伝わればいいなと思う」
「今年は丑年なので、牛が注目されるといいなと。あまり牛を見たことがなかった人に『こんなに可愛いんだ』って思ってもらえるような写真、ほっこりする写真を撮っていきたい」
(ABEMA/『ABEMA Morning』より)