星条旗などを掲げた群衆が集まったのは、アメリカ連邦議会の議事堂。付近では警官隊との小競り合いが発生。さらに、建物の中でも激しいぶつかり合いが起きた。
6日早朝、首都ワシントンでは、ホワイトハウスの前に数千人のトランプ支持者が集まった。「マイク・ペンスよ、我々の憲法と利益のために立ち上がってくれることを願う。さもなくば君にはがっかりだ」と、アメリカ大統領選挙で議会がバイデン氏勝利の最終的な確定を行う作業に合わせて、自身の敗北を認めないよう呼びかけたトランプ大統領。これに応じた支持者が、連邦議会へと集まったのだ。
議会では、上院議長を兼務するペンス副大統領が全米各州の投票結果を読み上げ、認定する作業が進められていた。しかし、選挙結果を認めないトランプ支持のデモ隊が警備を突破して議事堂内に乱入する。
議場にいた議員らは避難し、認定作業はストップ。議場では議会警察が銃を構え、扉の向こうに見えるトランプ支持者を威嚇する場面もあった。議事堂内では女性が撃たれて重体になっていたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
この混乱に、与党・共和党からもトランプ大統領の責任を追及する声が。共和党のロムニー上院議員は声明の中で「議事堂で起きたことは、トランプ大統領によって扇動された暴動だ」と強く批判した。また、共和党のブッシュ元大統領も声明で「投票日以降の一部の政治指導者たちの無謀な態度に愕然とさせられる」と批判している。
暴動にまで至ったデモ隊の動きを受け、トランプ大統領はTwitterに動画を公開した。「皆さんのことは愛しているし、非常に特別だ。みんな何が起きたか、ひどい扱いを受けた人を見ただろう。本当にひどいし、卑劣だ。皆さんがどのように感じているかわかっている。しかし、家に帰るんだ、心を落ち着かせて家に帰りなさい」。デモ隊に対し家に帰るよう呼びかけたトランプ大統領。しかし、混乱を収める目的とみられるこの投稿が、ルールに違反したとして非表示にされてしまった。
その後議会では、中断していた大統領選挙の結果の確定作業が再開された。トランプ支持の共和党議員からの異議申し立てが出なければ、日本時間の午後までにバイデン氏勝利が正式に確定する見込みだ。
この暴動のアメリカ国内での報じ方について、テレビ朝日のコメンテーター室長で元アメリカ総局長でもある名村晃一氏は「『建国以来の汚点だ』と伝えている。アメリカが建国されてから、ヨーロッパでファシズムが広がった時も、アメリカが民主主義に戻したという歴史がある。民主主義の御旗のもとにある国なので、非常にショックだと受け止めている」と話す。
また、ブッシュ元大統領など共和党内からも批判が出ていることについて、「トランプ政権を今まで支えてきた主要な人たちが辞任する動きが出ている。ABCニュースが伝えたのは、そうした閣僚や長官クラスが大統領を罷免するという話も出始めていると。このままいけば20日にバイデン氏が大統領に就任するが、トランプ大統領がその前に罷免される可能性が、この僅かな時間の中で出てきている。こんなことを容認していたら共和党の解党の危機になってしまうということで、トランプ大統領を今まで支えてきた人たちも“これはダメだ”と明確に示さないといけないという気持ちになっている」と説明した。
今回の暴動は、トランプ大統領が2016年に出馬した際のディベートに端を発する部分があるという。「議会に侵入した人たちの中に『プラウド・ボーイズ』という組織の人たちがいる。2016年ぐらいにできた新しい組織で、ウルトラライト(超右派)の人たちが中心になっているが、注目を集めたのが大統領選の第1回目のディベートの時。ウルトラライトの人たちが支持していることをどう捉えているかという司会者の質問に対して、トランプ大統領は批判しなかった。“ちょっと待っていろ”というような言葉が火をつけて、大統領選に向けて一気に極右の人たちが動いた。明確に否定しなかったことで、そういった人たちが民主主義を否定するようなことまで起こしていて、トランプ大統領が批判されている」と指摘した。
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