「刀鍛冶を目指すのも東大を目指すのも同じ。N高はそのためのチャンスを用意したい」入学者急増の秘密を角川ドワンゴ学園の夏野理事&新設されるS高の吉村校長に聞く

 角川ドワンゴ学園によって2016年にネットの通信制高校として設立された「N高」。生徒数は昨年10月時点で開校時の10倍となる1万5000人を突破、今春には2校目となる「S高」も茨城県つくば市に開校する予定だ。

 プログラミング教育などの充実が注目される一方、昨年には東大合格者を輩出、フィギュアスケートの紀平梨花選手が入学したことでも話題を呼んでいる。そこで6日の『ABEMA Prime』では、学園の理事を務める夏野剛・ドワンゴ社長と、S高では校長を務めることになっている吉村総一郎・N高副校長に話を聞いた。

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■「家庭の負担が大きくならないような授業料を設定している」

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 県が誘致に協力的だったということ、通信制高校において必要な「スクーリング」(面接指導)に使える施設として廃校があったことから沖縄県うるま市伊計島に設置されたN高。

 人気の理由について夏野氏は「需要があるところにちゃんとサービスを提供しようという、IT企業の普通のやり方をしただけだが、思ったよりも需要が大きかった」と説明する。

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 「“何でも一律”という日本の教育システムの全てが良くないとは思わないが、ちょっとそこにははまらない、あるいは合わないという人の受け皿が無いことも事実だと思う。日本には高校生が350万人いる一方、文部科学省の推計によれば不登校予備軍が30~50万人いると言われている。アメリカであれば自宅学習も認められているので、何十万人もの子どもたちがそれで学んでいる。だからこそN高には不登校だった生徒もいれば、紀平選手のように世界で活躍している生徒もいるという、ダイバーシティのある高校になっている。

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 そして、やはりテクノロジーだ。今までの通信制高校は紙だったが、インターネットのおかげで、言ってしまえば1人の先生が何十万人もの生徒を教えることもできる。また、これからのデジタル社会の時代、大人が子どもを教え、育てる力はあまりないと思う。むしろ教育の役割は、あらゆるチャンス、機会を提供することになってくると思う。だからオンラインコースには、リアルに会社を作る起業部や、リアルに投資する投資部などの部活動もある。一方で担任制も敷いているし、クラスのみんながいつでもコミュニケーションを取れる仕組みや対面する機会も用意している。授業料の設定に関しても、就学支援金を意識し、家庭の負担が大きくならないようにしていて、世帯年収が590万以下の家庭の場合、ほとんど負担はない」。

■「やっぱり生徒たちは集まりたい」ニーズに応える学習プログラムも

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 吉村氏は「もちろん学習指導要領に定められた、高校卒業に必要な要件である単位は取得することになるが、時間ではなく効率を重視し、プラスアルファで学びたいことが学べるということも特徴だ。その魅力がじわじわと広がっていったのだと思う。通学コースではプログラミングのほか、英会話、中国語会話もある。そして重要なコンテンツとして位置づけているのが、『プロジェクトN』だ」と話す。

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 「ネットの高校なのに通学コースがある、そのことに驚かれる方もいるが、やっぱり生徒たちは集まりたい。その期待に応えるためだ。学校に行かされるのは嫌だが、オフ会、あるいはイベントには行きたいというような気持ちがある。我々はそこに応えるために、今までもスクーリングのほかに合宿や職業体験といった機会を提供し、友達を作ったり、青春のイベントにしてもらったりしてきた。

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 そして高校を卒業するための要件はオンライン学習で完結できるので、登校したときの時間を何に使うべきか考えた。そこで出てきたのが、デジタル時代の社会問題に取り組むための課題解決力やIT技術を身につける学習プログラム。一つのテーマについて1~2カ月くらいかける。外部から講師を呼んでグループワークにも取り組んでもらい、フィードバックによって成長していくことを目的にしている」。

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 また、今年4月からはVRによる授業も導入される。

 吉村氏は「高校で取得すべき単位に関しては、すべての授業をVR対応にするつもりだ。今までは教科書に載っている小さな文字や図版を見ながら学ぶという感じだったが、これなら4Kで非常に高画質。ゴーグルを装着することで、音声も含め、360度すべてが学習環境になる。先生や一緒に学ぶ友達がアバターとして出てくるので、記憶にも残りやすい。将来的には課外授業もVR対応にしたい」と説明。「そうなると、先生の役割も、生徒が何を学びたいのか、あるいはどこの大学に行きたいのかなどを汲み取って、一緒に伴走してあげるコーチングの役割が求められてくることになると思う」と話した。

■乙武氏「僕にもN高があれば家族に迷惑をかけずに済んだのに」

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 慶應義塾大学特任准教授の若新雄純氏は「これまで色々な大学がN高のようなことをやろうとして失敗してきたと思う。大学進学率が50%を超えている今の日本社会では、やはり最終学歴として見られるのは大学、もっと言えば大学名だ。一方で、あくまでも通過点に過ぎなくなってきている高校を変革したのが今までと違うところだと思う。そこで納得できることを見つけられればいいし、ブランドが欲しければ大学進学を、ということができる」と指摘。

 さらに「地方に行くと、大学ではなく“どこ高だった?”というのがある。地域ごとに高校にヒエラルキーがあって、通信も含めて、“あそこは隣の県から来た不登校の子が行く学校らしいよ”といったイメージで見られがちだ。N高なら、地方の子でも思い切って行ってみようというニーズが出てくると思う」とした。

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 東京都教育委員も務めた経験のある作家の乙武洋匡氏は「僕は中学校まで世田谷区の学校に通っていたが、高校で新宿区の学校を目指すことになった。しかし電動車いすで満員電車に乗るのは無理。仕方なく、合格するかどうかもわからないまま引っ越しをして、家族にも迷惑をかけることになってしまった。確かに“通信に行くやつなんて”みたいな時代もあったと思うが、そうではない。僕もあのときN高があれば、家族にあんな思いをさせずに済んだのにと、胸が詰まった」とコメントした。

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 改めてN高の意義について夏野氏は「世界レベルの紀平選手が体育の授業を受ける必要はないし、ネイティブ並みに喋れる生徒が英語の授業を受ける必要もない。その分、みんなが自分の目指す道を見つけるチャンスを与え、思春期のエネルギーを抑圧しない、そういう高校にしたい。刀鍛冶になるのだって、東大法学部に入るのと同じか、それ以上の意味があるはずだ。だから刀鍛冶に1週間修行に入る授業や、イカ釣り漁船に1週間乗り続ける授業がある。ただし、高校生の段階で“人生の目標“と言われても良く分からない人もいると思うし、単にいい大学に入るということを目標にするのだって否定してはいけない。だからこそN高では難関大学を目指す特進コースも用意した。そこでは体育祭に出て組体操をやらされることもない」と強調。

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 「強制と教育の間のどこに線を引くかというのは難しい問題だし、我々もそこは悩んでいる。ただ、“ゆとり教育”が失敗とみなされた結果、昔の教育に戻っている感じもする。その意味ではN高は、まさに文科省がやろうとしていた”ゆとり教育”のリアルな姿をテクノロジーで実現しようとしているかもしれないと感じている」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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