東京女子プロレスのシングル王座プリンセス・オブ・プリンセスが14カ月ぶりに移動した。
一昨年11月からベルトを守り続けてきたチャンピオン、坂崎ユカは1.4後楽園ホール大会で辰巳リカを相手に防衛戦。
「ユカちゃんを倒せるのは私しかいない」
そう言って挑戦の名乗りをあげたリカは、坂崎の同期だ。入門したのも一緒で、もともと同じ音楽グループに所属していた。切っても切れない仲の2人によるタイトルマッチは、東京女子プロレスが2013年から積み上げてきた歴史を感じさせるものでもあった。
同じステージに立ち、同じ日に入門し、苦楽をともにしてきた2人。山下実優、中島翔子と坂崎、リカの初期メンバーは少しずつ成長し、東京女子プロレスを大きくしていった。
エモーショナルなシチュエーションに燃えるリカは、序盤から坂崎の足を攻めていく。ドラゴンスクリュー、鉄柵に足を固定してのドロップキック。坂崎はグラウンド、投げ技で的確に反撃しオールラウンダーぶりを見せつける。
しかし、リカは坂崎の最大の得意技である空中殺法だけは阻止。最後まで完全な坂崎ペースにはさせなかった。そして自身は足4の字固めで勝負。ロープに逃げられても何度も仕掛け続け、とうとうレフェリーストップで勝利した。
坂崎曰く「最後は根性負け」。リカは「戦略じゃない、執念でたどりつきました」。ダイビングヒップアタック、ドラゴンスリーパーなど他にもフィニッシュはあるが「今日は絶対にこの技で勝つ」という強いこだわりが勝機につながったのだろう。
(試合後は涙。坂崎から獲ったベルトは価値が大きい)
同期の2人だが先に出世したのは坂崎だった。キャラにもファイトスタイルにも華があった。努力や創意工夫が感じられる試合ぶりも魅力だ。対するリカはリング上でのテンションが高いと同時に力の付け方は地道なものだった。かけがえのない同期、その背中を追いかけて、とうとう入門7年で追い越した。そしてこれからも、2人の友情と闘いは続いていく。 これからさらに東京女子プロレスを有名にしていくとリカ。
「でも勝手に有名になれるわけじゃない。私が引っ張って、私から動いていきます」
2月11日の後楽園大会では、アップアップガールズ(プロレス)の渡辺未詩の挑戦を受ける。リカと未詩は前タッグ王者。未詩にとっては尊敬する先輩を超えるための挑戦だ。 これもエモーショナルな試合になりそうだが、もちろんリカに王座を譲る気はない。
「死ぬまで防衛します。でも私は死なないので。100年以上は生きるので100年規模で防衛し続けます」
いきなりそんな大きなことを言い出すのもまた辰巳リカという選手の面白さ。東京女子プロレスの風景は、ここからまた新しいものになる。
文/橋本宗洋
写真/東京女子プロレス