「なぜ国や自治体は高齢者に関する議論をしないのか。外出を控えてもらわなければ延命治療が受けられなくなる可能性も」厚労省の元医系技官が訴え
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 政府は1都3県に続き大阪、兵庫、京都の関西3府県、さらには愛知、岐阜、栃木、福岡に対しても緊急事態宣言を追加発出する見通しとなった。東京都の病床使用率(11日)が83.9%に達するなど医療提供体制の逼迫は深刻で、すでに“医療崩壊”を起こしているとの指摘もある。

 12日のABEMAABEMA Prime』では、先週に続き、元厚労省医系技官の木村盛世医師に話を聞いた。

・【映像】元厚労省医系技官「医療崩壊のみならず社会崩壊が起きる」


■「無症状者の入院を止め、自治体を跨いだ患者搬送を」

 現状について木村医師は「これは戦争のような、いわば国家の危機だ。政府がバッと動いて抑えなければならない“緊急事態”であるにも関わらず、結局は全ての対応、対策が地方自治体任せになっている。欧米諸国に比べて100倍以上も少ない感染者数であるにも関わらず医療崩壊が起きようとしているのも、それが背景にある」と説明する。

 「これから大阪府などのように緊急事態宣言の発出を求める自治体が増えてくると、やはり最悪の事態を考えて追随するところも増えてくるはずだ。これが繰り返されることになれば、社会経済はボロボロになり、コロナ以外の病気や自殺で亡くなる方が出てきてしまう。一方、日本の病院の8割は民間のもの。コロナ対応をしようとすると赤字になってしまうので、なかなか“医療総力戦”にならない。だから医療崩壊のようなことが起こるのは当然だ。ただ、箱物を作ることはできたとしても、コロナの対応には通常の4倍の医療スタッフが必要なので、すぐに問題を解消することはできない。

 そう考えると、まずは逼迫している地域からそうでない地域へと、自治体を跨いだ患者搬送をしなければならない。これは感染者数が急増しているアメリカでも、医療崩壊が起きつつあるといわれるスウェーデンでも行われていることだ。国交省や防衛省、そして47都道府県の首都圏の長として東京都知事を中心に、東京ですぐに実施してほしい。他の自治体は受け入れを嫌がるだろうが、そこは地方交付税を多めにつけてあげるなどして実施してほしい。また、指定感染症だからという法的な理由によるものだが、無症状者を入院させるのも止めたほうが良い」。

■「飲食以外の業界、そして医療業界にお金を出すべきだ」

 さらに木村医師は、こうした措置のための財源があるにも関わらず、行政の動きが極めて鈍いと指摘する。

 「お金はある。それなのに損失補償には使えないとか、極めて頭が硬く、政府が動かない。他の業界もやらなければならなくなるからと、損失補償をしたがらない。私は先日この番組で“このままでは居酒屋崩壊だ”と申し上げたが、飲食業に限らず、ホテル業界など、休業要請を受け入れている業界に関しては一時的であっても絶対に規制緩和をするべきだ。そして、それを最初にやらなければならないのは医療だ。そうでなければ、本当に医療崩壊が起きてしまう。今、コロナ対応をしている病院はごくわずかだ。その中で関係者は感染リスクや給料やボーナスが支払われないといったことがあるにも関わらず頑張っていらっしゃる。これは単に命令だからというだけではない。そこに対して十分にお金を出し、安心感を持って治療に取り組んでもらうべきだ。

 この状況がいつまで続くのかは分からないが、強めたり緩めたりを繰り返すうちに、人々や社会は確実に疲弊していく。感染症と折り合いをつけていくためには、やはり医療キャパシティーを上げるしかない。そのためにも、先ほど申し上げた地域間の患者搬送が必要だし、コロナ患者の受け入れに特化した病院にはインセンティブを付ける。これは他の国でも行われていることだ。日本医師会には、そのために自由に使える基金を作ってほしい」。

■なぜ高齢者に関する議論をしないのか

 行動制限による感染防止について、「押さえればその時は収まるが、手を緩めるとまた増えてくるのが感染症の原則なので、中国でも再び感染者数が増えてきている。一方で、ロックダウンを強行しているイギリスや、アメリカ・カリフォルニア州やニューヨーク州では、あまり感染者数が減っていない。またロックダウンをしなかったスウェーデンについては、日本とは異なる死生観があり、あまり延命治療を行わないというベースもあるが、私も個人的には感染を抑えることだけが人の幸せというわけではないと思う。だからスウェーデンが失敗だったと言われることもあるが、私は強ち間違ってはいなかったとも思っている」と話す木村医師。

 こうしたことを踏まえ、「重要だが、あまりしたくないお話をしなければならない」として、高齢者の対策に注目すべきだと訴える。

 「高齢者が重症化しやすいことは明らかで、死亡者の平均年齢も79歳となっているし、これが医療逼迫の要因にもなっている。“マスクをしているからオッケーだ”と出歩いてらっしゃる高齢者もいると思うが、マスクの予防効果だって100%ではない。嫌かもしれないが、高齢者の方々には自粛、自己隔離をしていただかないといけない。高齢の政治家のパーティもあり得ない。あまりにも甘すぎる。そして自治体は電話やオンラインでスムーズに医療や宅配サービスを受けられるようにするといった努力をしなければならない。また、経営が悪化している訪問看護ステーションや介護施設やデイケアなどに対しては、日本医師会がイニシアチブをとって積極的に診てもらうような取り組みをしていただかないと回らなくなってしまう。そのことも含め、高齢者を守ろうと国や自治体はなぜ言わないのか。言いにくいことかもしれないが、日本は超高齢化社会だ。このままだと、高齢者は延命治療を一切受けられないというようなところまで事態が切迫することになりかねないのに、その議論をしないことの方が不自然だ」。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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「医療崩壊だけでなく“居酒屋崩壊”だ」
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