今月6日、トランプ大統領の支持者らが連邦議会を襲撃した事件で、野党民主党は、支持者を扇動したとして大統領を弾劾訴追する決議を連邦議会下院に提出した。今日にも採決されると見られている。
トランプ大統領「弾劾については政治史上最大の魔女狩りが続いている。本当に馬鹿馬鹿しい」
一連の騒動で影響を受けたのがトランプ大統領のSNSだ。8日、Twitterは「暴力をあおるリスクがある」として、大統領のアカウントを永久停止。その後、停止された個人アカウントとは別のアメリカ大統領の公式アカウントで反論したものの、こちらも削除される事態になっている。
【映像】「私や私に投票した7500万人を黙らせるために…」削除されたトランプ氏の“反論”投稿(1分ごろ~)
さらにTwitter社は11日、特定のグループに関連する7万件のアカウントを凍結すると発表。このグループは、陰謀論を拡散する「Qアノン」で、Twitter社は「議会乱入事件を受け危害が広がる恐れがある」と説明している。
Facebookもトランプ大統領のアカウントの無期限停止を発表するなど、トランプ大統領がこれまで武器として活用してきたSNSが取り上げられる事態になっている。
そんな中、利用者が爆発的に増えていたのが「検閲しない」ことを売りにしたSNSサービス「パーラー」だ。言論の自由を掲げたこのサービスが、トランプ大統領の支持者などの間で広がっていたが、パーラーも現在利用ができない状況に。理由は、AmazonのWebサービスが使われていたためだ。
Amazonの子会社は「暴力を煽る書き込みを削除しなかった」として、パーラーのサービスを停止。これに対しパーラーはAmazonの子会社を提訴し、サービスの停止を差し止めるよう求めている。一方、アップルやGoogleもパーラーのアプリをそれぞれのアプリストアで入手できなくする措置をとっている。
IT大手各社が対応を強める中、上がっているのが「表現の自由の侵害だ」という反発の声だ。
アメリカのポンペオ国務長官は、自身のTwitterで「言論を黙らせるのは危険だ。アメリカ的ではない」と批判。ドイツのメルケル首相は、トランプ氏の言動を批判する一方、Twitterアカウントの永久停止については「問題だと考えている」との考えを明らかにした。ザイバート報道官も「言論の自由は自由な基本的権利です。これに介入できるのは『法律』であって、SNSが決められるものではない」と述べている。
はたしてSNSのアカウント停止は「表現の自由の侵害」に当たるのだろうか。ニュース番組「ABEMAヒルズ」のコメンテーターでニューズウィーク日本版編集長・長岡義博氏は「全く侵害されていない」と断言する。
「(アカウント停止の措置は)検閲ではない。検閲は厳密に言うと、公的機関が行うもの。FacebookもTwitterも公的機関ではない民間の企業なので、検閲には当たらない。あくまで一企業としての行為。トランプ大統領が『表現の自由が侵害されている』と思うのであれば、記者会見を開けばいい。会見を開けば、世界中のメディアがトランプ大統領の言い分を伝える。全く表現の自由は侵害されていない」(以下、長岡義博氏)
さらに長岡氏はTwitterやFacebook側の責任を指摘。トランプ氏はSNSを駆使し、支持を広げていたが、プラットフォーム側も「彼を利用していた責任は大きい」と語る。
「2016年の大統領選挙のとき、TwitterもFacebookもトランプ陣営に社員を派遣している。これはトランプ氏にSNSをうまく使ってもらって、最後は自分たちのビジネスにつなげるという目的のため。 トランプ大統領 はTwitterやFacebookが育てたとも言える。そのトランプ大統領がモンスター化したからと言ってアカウントを永久凍結するのは、『どの口が言っているのか』という話。自分たちに作った責任があるのではないか」
意見や思いを言い合える場として成長してきたSNS。世論が作られるだけではなく、SNSに投稿された情報はビジネスにも使われている。
「日本でもSNSとの向き合い方が議論されているが、利用者が他愛もない情報だと思って提供しても、ビックデータ的に見るとすごく重要で、それがSNS側のビジネスに利用されている側面がある。それを我々はもっと意識すべき。プライバシーの侵害にもつながりかねない、危うさを含んでいる。そういったビジネスに『加担』している自覚を持った方がいい」
ふとした投稿もビッグデータとして、プラットフォームのビジネスに利用されている。長岡氏は「自分たちの情報が、他の場所でビジネスに利用されていることを意識するべき」と警鐘を鳴らす。
「日本人は、SNSの使用について疎いところがある。またSNSが分断を生むのも事実。SNSに参加することで結果的に分断に加担してしまう。SNSだと、晒す必要のない人間の本心がどうしても出てしまう。それが不要な攻撃を生む。気をつけて利用する必要がある」
(ABEMA/「ABEMAヒルズ」より)
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