取り決めが守られず、離婚・別居中の子どもに会えない親たち…日本の「面会交流」の課題とは
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 別居・離婚後の親が離れて暮らす子どもと定期的・継続的に会ったり、電話や手紙などで連絡を取ったりする「面会交流」。子どもにとっては普段は会えない親から愛されていること実感し、自尊心を高めることができる機会になるとされている。

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 その頻度や方法については両親が協議で話し合うこととされているが、折り合わない場合は家庭裁判所へ調停・審判を申し立てることにより、裁判官や調停委員も交え解決を目指すことになる。それでも決まらなければ審判へと移行し、裁判官が結論出すこととされている。

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 しかし、せっかく決定したはずの面会交流の約束が履行されず、子どもに会えない親、親に会えない子どもが思い悩むケースが少なくないという。一体、どういうことなのだろうか。

■親権はあっても、子どもに会えない日々

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 おととし9月、口論がきっかけで妻と当時3歳だった長男と離れて暮らすことになった山田健治さん(仮名・40)は、月に2回・10時間ずつ、さらに夏休みなど一定期間だけは宿泊を伴い一緒に過ごすことができるという条件で面会交流を行えることになっていたという。しかしほどなくして妻が面会を拒否するようになり、以来、長男の声すら聞けていないと話す。

 山田さんは、家庭裁判所が妻を長男の監護者とした、その決定プロセスにも疑問を抱いている。「主に子どもの世話をしていたのは母親で、別居後の生活環境も特に問題はなく、父親のもとへ戻す緊急性は認められない」と説明されたというが、自らも積極的に家事や育児をしていたと考えているからだ。

 “もし離婚すれば親権も失い、二度と子どもとの交流はできないのではないか”。そんな不安から、今も妻とは離婚しないまま、苦しい日々を送っている。

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 夫の不倫が原因で別居中の木下恵子さん(仮名、38)も、3人の子どもたちと3年半にわたり会えない状況が続いているという。家庭裁判所に申し立てたが、監護者は夫との判断。子どもたちが夫の下での兄妹揃っての暮らしを望んでいること、また、実家から子育て援助が得られるなど、安定した環境が望めるといった理由を挙げられた。

 木下さんの場合も、離婚はしていないため親権は有している。それでも会うことができないのは、家庭裁判所による面接で長女が「母親に会いたくない」などと述べたからだという。真意は、母親のことは嫌いではないし、もし会えば“母について行きたい”という気持ちになり、今の生活が壊れてしまうのではないか、という不安からだという。また、父親が嫌がるのではないか、との心配もあると話したというのだ。

 子どもたちとの繋がりは月に一度だけ送る手紙。そして、夫から届く子どもたちの写真だけ。しかも、その多くは後ろ姿で表情が見えない構図のもの。中には子どもたちがカメラに向かって中指を立てたり、木下さんが送った手紙をハサミで切ったりする様子が写ったものもあったという。子どもたちにどのような意図があるのかはわからないが、裁判所は父親がこうした写真を送ることについて問題視、子どもたちの心の安定に影響が及ぶとして、やりとりの頻度を減らす決定をした。「私はもっと子どもたちのことを知って、子どもたちと会話をしたい…」(木下さん)。

■元家裁調査官が語る“困難さ”

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 元家庭裁判所調査官の伊藤由紀夫氏は「とても残念なことだが、やはり4割くらいはうまくいっていないのではないか。制度上、面会交流の調停は何度でも申し立てることができるので、話し合いを続けることはできる。調停で決まった通りにいかなければ、“履行勧告”という形で、ちゃんと組み立ててくださいよ、という働きかけはしていく。しかし強制力はないし、監護している親御さんとしては“私が会わせたくないから”とは言わず、“子どもが会いたがらない”とか、“会わせることが子どものためにならない”といったような理由で履行をしないということが少なくない。実務上、子どもが10歳以上であれば意見を丁寧に聞いていくことになるし、思春期あたりからは難しいことも起きてくる。ただ私の経験上、小さければ小さいほど、離れて暮らす親に会えば喜ぶし、うまくいく」と話す。

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 一方で注意しなければいけないのが、DVや子どもへの虐待が潜む場合だ。面会交流によってDVや虐待から逃げた母子、または父子がその後も相手の支配が続く恐れがある。しかし、調停の中で、DVが存在していたかどうかの見極めは非常に難しいという。

 「直接的な暴力行為だけでなく、精神的なもの、経済的な締め付けなど、DVには様々な形があると思うし、調停の中で丁寧に見極めることは非常に難しい。いつ頃から、どのくらいの頻度で、あるいは診断書やシェルターに避難した記録がなど、事実を積み上げる必要がある。精神的なものに関しては、パワハラ、セクハラだと言わざるを得ないものから“売り言葉に買い言葉”というものまであると思うし、どこまで家裁が丁寧に調査できるかといえば、不十分になってしまうこともあると思う」と伊藤氏はコメント。

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 その上で、「私も調査にあたっては、どちらのお父さんお母さんもウィンウィンになる解決が探れないかと考えて仕事をしてきた。最終的にはどちらかを親権者と決めることにもなるが、裁判所の調停というのは、問題に白黒、勝ち負けをつける場というよりも、親の離婚を前にした子どもたちをいかに共同で養育し、幸せに生きていくかを考える場になってほしいと思う」と話した。

■“離婚後の子どもの養育のための法整備を”

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 かつて自身も子どもに会えない生活を経験をした武田典久氏は、「親子の面会交流を実現する全国ネットワーク」代表として支援活動を行っている。「当事者の中には自殺する方もいる。そして私は“面会”という言葉自体が大嫌いだ。なぜ子どもと会うのに面会なのかと思う。養育費については話しが付けば払われるケースが多く、全国に550名くらいいる私たちの会員でも、支払い率は90%だ。一方、会えているのは半分だ」とした上で、次のように説明する。

 「履行勧告を“裁判所からのお手紙”と呼び、“答えようと答えまいとどうでもいい”“無視していい。罰則はない”というような扱いをする弁護士もいる。それどころか、調停に合意する段階から“今は合意しておいてください。ちょっと会わせて嫌になったらやめていいんですよ”というような心ないことを言う弁護士さえいる。そもそも両親が合意に納得をし、子どもを喜んで送り出す。そして“お父さんと会って楽しかった?”“お母さんと会って楽しかった?”という話ができるのが理想の姿だが、家庭裁判所での話合いの多くは、ひどい“夫婦喧嘩”であることも多い。子どもの存在はどこかへ行ってしまったまま、“あなたが悪い”“お前が悪い”と互いに主張し合う。そんな環境の中で、気持ちよく面会交流の合意ができるかといえば、非常に難しいだろう。諸外国では監護者変更、親権者変更といったペナルティもあるが、背景には面会交流が親の権利、あるいは子どもの権利だと決められている。日本でも離婚の前に面会と養育費についてきちんと決め、その上できちんと別れ、子どもは両方の親で支えられるようにするための法整備が必要だ」。

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 また、DVの問題について武田氏は「私どもの基本的な考えは、安全が担保されない面会交流はあり得ないということ。伊藤さんは、家庭裁判所は丁寧に見極めることはできないと率直におっしゃられたが、やはり蹴った、殴ったについては、双方の申し出を受けた地方裁判所での保護命令とか、接近禁止命令といった手続きの中で認定されるが、家庭裁判所では事実認定されないのが現実だ。特にお子さんに会うことが制限されるような精神的DVの定義もなければ、認定する制度もない。だからこそ、家庭裁判所の調停では、“私を罵った”といった夫婦喧嘩の延長になってしまう。この点もガイドラインを作るべきだ」と訴える。

 そして最近の情勢について武田氏は「2019年2月、日本は子どもの権利条約を90年代に批准しているがそれを守っていないというに国連の勧告を受けている。おととし11月には法務省が家族法研究会というものを立ち上げ、離婚後の子どもの養育のあり方を話し合っていて、私も参考人として意見を述べさせていただいた。しかし、まだまだゴールは見えていない」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)

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