味方のゴレイロ(GK)から蹴られたロングパスをゴール前の水上玄太がバックヘッドで逸らすようにして、ネットを揺らした。
水上にとってこれがFリーグ通算250得点目。森岡薫、クレパウジ・ヴィニシウスに次ぐ3人目の快挙を成し遂げたことでネットやSNSには「おめでとう!」と祝福のコメントが殺到した。
通算250ゴールを決めた水上の初得点は、Fリーグが開幕した2007年の9月24日。ステラミーゴいわて花巻の選手として出場した開幕戦で決めた。
それから13年と半年が経った今、日本フットサル史に新たな足跡を残した。これまでにリーグ通算387試合に出場している37歳の水上はFリーグ最多出場記録の保持者で、今なおその記録を更新中。長いキャリアの中で大きなケガをすることなく“北の鉄人”の異名を持つ。
水上はワンタッチゴーラーとしても有名で、通算250得点目もその名の通りワンタッチで決めた。このときのゴールもただ頭で合わせるだけではなく、体を捻ってねじ込むという絶妙なテクニックを発揮した。
しかしそれだけではなかった。
この試合の解説を務めた北原亘氏が「森村孝志(水上のマークについていた相手選手)の背中を少しだけ押してポジションを取っている」と話したように、ボールに合わせる前に自分がゴールを決めやすくするため、自らスペースを確保していたのだ。
一見地味だが、今までの積み重ねてきた経験から得たベテランらしい技術がそこには集約されていた。積み重ねてきたのは経験だけでなくゴールや出場記録もそうだ。13年半、地道に重ねてきた数字が今、こうして大台に突入した。
年齢的にキャリアの終盤に差し掛かっている水上は時折「引退」の2文字を匂わせるような発言をするときがある。だがサポーターからは「もっともっとプレーが見たい!」と背中を押される。
また、現役時代は通算333試合に出場した同い年で解説の横江怜氏からもTwitterで「やるな~!!次は500試合か300ゴール!」というコメントが寄せられていた。
「ちょっと先が長過ぎる目標だな。251ゴール目を目指して頑張ります!!」と謙虚に返したが、水上は自身が持つ記録をどれだけ積み上げていくのだろうか。
“北の鉄人”水上玄太が自身の伝説を築き上げていく様をこれからも見届けていきたい。
文/舞野隼大(SAL編集部)
写真/高橋学