生理を擬人化した漫画『生理ちゃん』が映画化された2019年に続き、“フェムテック”の一年と言われた2020年。フェムテック(FemTech)とは、FemaleとTechnologyを組み合わせた造語で、生理・妊娠・更年期など女性特有の課題をテクノロジーで解決しようとするサービス・アイテムのことを指す。
■フェムテックの普及を妨げる「法制度」、そして「タブー視」
これまでも生理の周期を把握するアプリなどが使われていたが、昨年は一気に増加。7月にオープンした専門店「New Stand Tokyo」では、出産や加齢によって緩んでしまい、中には尿漏れを起こしてしまうケースもあるという骨盤底筋を鍛えるデバイスや、洗浄して何度も使うことができるため、経済だけでなく、環境にも優しいといわれている月経カップなど、様々なフェムテックアイテムが並ぶ。
中でも盛り上がりを見せているのが、生理期間中に履く吸水性の高い「吸水ショーツ」だという。「New Stand Tokyo」を運営、フェムテック企業の支援や市場の活性化を目指すfermataの共同創業者・中村寛子氏は「女性の経血は体調によって色や量に変化が出る。しかし、実際に自分の経血を見たことがない方も多いのが実情だった。そこでベージュ色のショーツを履いてもらうことで、そうした変化を知ることができる。多くのものが市場に出回り始めたことで、フェムテックそのものを知っていただく機会になったのではないか」と話す。
また、「ウツワ」代表のハヤカワ五味氏が手がけるウィメンズヘルスケアブランド「ILLUMINATE」では、LINEで利用できる生理日予測サービスに加え、先月からは低用量ピルの飲み忘れを防止する服薬支援サービスも行なっている。
とはいえ、フェムテックのさらなる認知度向上のためには乗り越えなければならない壁もある。一つが法規制だ。中村氏によると、「白色でなければならない」という薬機法の規制により、前出の吸水ショーツは「生理用品」には該当せず、「雑貨・雑品」扱いなのだという。「本当は“生理用品”として訴えたいが、言ってはいけないことが多く、伝えたいことも伝えられないのが現状だ」。
そしてもう一つは「生理のタブー視」だ。
■和田彩花「まだまだ話せない人も多い」
生理用品ブランド「ソフィ」が“話そう、知ろう。生理のこと。”というキャッチコピーを掲げ、ハヤカワ五味氏らとともに推進している「#NoBagForMe」プロジェクト。
2019年には購入時に紙袋で包む必要性を感じさせない生理用品のパッケージデザインが話題を呼び、その後も無印良品がシンプルなデザインの生理用品を販売の開始をするなど、ムーブメントが広がっている。「メディアに相次いで取り上げられたことで、もっと話をしてもいいことなんだな、という環境ができてきたと思う」(ハヤカワ氏)。
ここに昨年から参加、仕事とタンポンの話などを語ったアイドルの和田彩花は「生理の話はタブーだという感覚が私自身にもあって、恥ずかしさも感じてきた。でも、もっと気軽に話せればと勉強会を開いたり、アイテムの使用感を皆で確認して、SNSで発信するという活動をしてきた。最初はもちろん勇気が必要だったが、誰もが情報にアクセスできる環境が必要だと思った」と話す。「ただ、自分の意識が変わらないと、実際に口にすることはできない。まだまだ、話せない人も多いなと感じる」。
生理コラムニストの5歳さんは、妻の苦労を理解したいと勉強、男性の立場から生理についての情報発信をするようになった。「彼氏に読ませました、旦那に読んでもらいましたっていう声をいただく。自分のこととして言うのは恥ずかしくても、紹介するという方法なら伝えやすいのかな」。
■「個人の尊厳にも関わってくる部分」
とはいえ、ネット上には「“男も理解してくれ”と一方的に求められる現状がとにかくしんどい」「オープンにしたほうがいいんだろうけど、心理的な抵抗が」といった戸惑いの声があるのも事実だ。
昨今の風潮に慎重な立場を示す現代美術作家で文筆家の柴田英里氏は「家電が普及したことで女性の可処分時間が増えたように、テクノロジーの進化は女性の社会進出を後押しする。その意味、フェムテックもとてもいいことだと思う。ただ、資本主義は膨張主義を伴うもの。ヘルスケア市場が拡大していく中で、“私の体について知ろう、そのためにはこういう製品を使うべきだ”と、個人の身体に資本主義が介入してくるような違和感を覚えることがある。本当に便利なものであれば、“社会的に正しい”とか“女性の社会進出を後押しするよ”と言わなくても皆が買うはずだ」と指摘する。
「生理というのは、女性の社会進出にとっての障害になる問題であると同時に、個人のプライバシーの問題でもある。これをどこまで開示し、社会化するかというのは個人の尊厳にも関わってくる部分なので、そこは大切にしなければならない。その意味では、“恥ずかしいと思っていることがよくない”、というような同調圧力的なものも感じてしまう。逆に、“生理をもっとオープン”にという人はいるのに、なぜ“射精をもっとオープンに”という人はいないのだろうか」。
こうした意見に対し、和田は「私も発信する度、“言いたくない”“これは大事にしたい部分だ”という声を聞いてきた。もちろん意見や価値観を押し付けるのはやめようと思っている。ただ、事実を知らない人が知ることができたり、女性が情報にアクセスできたりするようになれればいい。まずはそのために必要な、基本的な情報を皆が持てるといいなと私は思う」と話していた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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