人類初の“火星人”に 「二酸化炭素から燃料を作れば行って帰ってくることができる」 “Z世代”村木風海さんの挑戦
【映像】ABEMAでみる
この記事の写真をみる(7枚)

 菅政権が掲げる目玉政策のひとつ、「カーボン・ニュートラル」。2050年までに温室効果ガスの排出“実質ゼロ”を目指すという目標が、日本政府として初めて示された。

【映像】人類初の“火星人”に 村木風海さんの挑戦

 今月14日、アメリカ海洋大気局が発表した、去年1年間の世界の平均気温は約14.9度。1880年の統計開始以降、史上2番目の高さを記録した。背景には、二酸化炭素濃度が高くなっていることなどが挙げられている。

 地球温暖化による海面水位の上昇や全世界で起こっている異常気象を止めるべく、世界レベルで急務となっている「二酸化炭素の削減」。そんな中、1人の青年が注目を集めている。

 「ボタン一つで簡単に空気中から二酸化炭素を集められる『ひやっしー』っていうロボットを作ったんですけど、化学的な反応を使って、温暖化の一番の原因である二酸化炭素を空気中から直接集めるというものになります」

人類初の“火星人”に 「二酸化炭素から燃料を作れば行って帰ってくることができる」 “Z世代”村木風海さんの挑戦
拡大する

 世界最小となる二酸化炭素回収装置「ひやっしー」は、ケース内部のアルカリ性水溶液との化学反応により、二酸化炭素を吸収する仕組みになっている。開発したのが、炭素回収技術研究機構(CRRA)で機構長を務めている村木風海(かずみ)さん、20歳。2019年には、Forbes JAPAN『世界を変える30歳未満の30人』にも選ばれた、今大注目の若手サイエンティストだ。

 さらに、村木さんは「集めた二酸化炭素から金属以外のあらゆるモノを作る」研究もしている。

 「二酸化炭素から石油を作る研究をしている。石油が作れれば、石油製品っていっぱいあるので世の中の全てのモノが作れるんです。例えば、僕たちの身の回りのモノって全部燃やすと二酸化炭素になるじゃないですか。ということは、逆に二酸化炭素を集めてプチプチくっつけてやれば、もしかしたら全てのものができるんじゃないかっていうのが僕の研究になります」

人類初の“火星人”に 「二酸化炭素から燃料を作れば行って帰ってくることができる」 “Z世代”村木風海さんの挑戦
拡大する

 村木さんはなぜ“二酸化炭素”に興味を持ったのか。きっかけは、幼いころに祖父からプレゼントされた“本”だった。『宇宙への秘密の鍵』という冒険シリーズ。子どもが宇宙旅行をするストーリーだ。

 「『人類が地球以外に一番住めるのは火星だ』って書いてあって、その光景にすごく心奪われた。そこから『火星に住むには?』っていう研究を始めたんです。調べていくうちに、どうやら火星は二酸化炭素が95%の空気に覆われているっていうことを知ったんですね。火星に住むために、火星の空気中の二酸化炭素を集めてどうにかする研究をしようと思って」

人類初の“火星人”に 「二酸化炭素から燃料を作れば行って帰ってくることができる」 “Z世代”村木風海さんの挑戦
拡大する

 本に描かれていた火星に心を奪われ、小学4年生から研究を始めたという村木さん。しかし、日本ではなじみのない「二酸化炭素の回収」という研究。順風満帆な道のりではなかったという。

 「11年研究をやってきて、ほぼ10年間は否定されっぱなしでしたね。当時の研究の指導教官の先生には、『お前の研究の何が面白いんだ?』『そんなの今すぐやめちまえ』って言われていて、実験やってるそばで後ろから先生2人とかで『やめろ、やめろ』みたいなコールをされたこともあります」

 「研究を続ける意味がない」。そんな周囲からの言葉にもめけず、たった一人で研究を続けた村木さん。転機となったのは2017年、総務省の異才を発掘する「異能(Inno)vation 破壊的な挑戦」部門に17歳の若さで選出されたことだった。そこで得た資金を元に、「ひやっしー」を完成させた。

人類初の“火星人”に 「二酸化炭素から燃料を作れば行って帰ってくることができる」 “Z世代”村木風海さんの挑戦
拡大する

 「誰かが自分の夢を無理だとか、そんなの絶対無理だとか否定してきたりしたら、“うまくいくんじゃないか”って思いこむことにしたんです。そうしたら本当に、そう言われれば言われるほど研究が成功することばっかりで、今はそういうのにもうまく対処できるようになったかなって感じですね」

 ピンチをチャンスに。そんな村木さんの次なる夢は、「ひやっしー」で培った技術で二酸化炭素を新たな燃料へと変換し、人類初となる火星人になることだという。

人類初の“火星人”に 「二酸化炭素から燃料を作れば行って帰ってくることができる」 “Z世代”村木風海さんの挑戦
拡大する

 「人類が火星に行けないかというと、本当はたぶん行けるんですよ。ただ、火星までロケットで片道半年くらいかかってしまい、行き分の燃料しか積んでいけないので帰ってこれない。僕の技術、CRRAの技術があれば、火星の二酸化炭素の空気から現地で帰りの分の燃料を作れる様になるので、いわば火星に“ガソリンスタンド”を作ることができるんです。そうすれば、人類は火星に行って帰ってくることができるようになる」

 地球温暖化という世界の「課題」の解決と、火星に行くという自らの「夢」の実現。二つをつなぎ合わせる未来を描く村木さん。未来に向かって研究は続く。

 「僕の中で遅くとも『2045年までに火星に行く』っていうデッドラインがあって。それは小学生の時に決めたんですけど、夢はできるかできないかでは考えてなくて、やるんですよ。無理だって言われても、僕が実現するので。その世界を見て欲しいなって思います」

人類初の“火星人”に 「二酸化炭素から燃料を作れば行って帰ってくることができる」 “Z世代”村木風海さんの挑戦
拡大する

 村木さんの挑戦について、『WIRED』日本版編集長の松島倫明氏は「Z世代は、地球規模の社会課題というものへの意識も高いし、科学というユニバーサルなものに若い頃から触れて考えられてきていて、これからこういった若い科学者はすごく増えてくるのかなと思う。みんなが無理だと言えば言うほどうまくいくという考えも、イノベーターとして素晴らしいマインドセットだ」と話す。

 また、カーボン・ニュートラルは新たなビジネスチャンスだとし、「環境対策と経済対策、あるいは失業対策、雇用対策というものをリンクさせていくことによって、世界中の大企業がカーボン・ニュートラルにコミットし始めている。例えば、2030年までにカーボン・ニュートラルにするとAppleやAmazonなどが言っていて、ビジネスチャンスに変えていくことで環境対策を進めていこうという“グリーンニューディール”がある。しかし、そうはいってもコストは高い、どうやって技術的にブレイクスルーしていくかわからないという人たちのために、村木さんのような方がスタートアップになって、経済活動の新しいステップを先導していくような存在になっていくのでは」と期待を寄せた。

ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)

現代アートの“鬼才”磯村暖の挑戦
現代アートの“鬼才”磯村暖の挑戦
「見えない第三者が」LGBT就活事情
「見えない第三者が」LGBT就活事情
この記事の写真をみる(7枚)