中国企業が運営する動画投稿アプリ「TikTok」。誰でも簡単に短い動画を投稿し共有できるとして、世界中の若者の間で利用が広がっている。
そうした中、イタリアの当局が22日、TikTokに対しある命令を下した。それは、年齢確認できない人への利用中止。現地メディアなどによると、命令の期限は2月15日までで、それ以降も継続するかは今後検討するという。
背景にあるのが、その数日前に起きた痛ましい死亡事故。イタリア南部のパレルモで20日、10歳の少女が自宅で首にベルトを巻きつけ、窒息した状態で発見された。手にしていたのはスマートフォン。TikTokで、体を強く圧迫して気を失わせる「失神ゲーム」に関する動画を見て、自らの首をベルトで締めたとみられている。
TikTokは規約で、利用対象を13歳以上に制限している。SNSユーザーの年齢確認の在り方をめぐっては、今後国内でも議論を呼ぶかもしれない。
SNSでこうした危険行為がなくならないのはなぜなのか。臨床心理士で明星大学准教授の藤井靖氏は次のような見方を示す。
「一言で言えば、やはりそれなりにバズるから、人の目を引くからだと思う。この失神ゲームというのは、日本でも1970年代後半ぐらいのまだSNSが全然ない時代から学校で問題になったりしている。我々もスクールカウンセリングをやる上で、“こういうことが起こることがある(あった)から気をつけましょう”と歴史として教科書で習うようなこと。最近の教育現場ではいじめ・校内外暴力対策も相まってほとんど起こらなくなっているが、先を行っているはずのネットでこんなことをまだやっているんだという感じがする。やはりバズる動画、過激動画や目を引く動画もネタ切れなのかなという感じがしてしまう」
そもそもその動画は本当に面白いのか、冷静に見たら、たいして面白くないのではないかということを投げかけたいという藤井氏はこう続ける。
「動画がバズっているのをつながりのある人同士で見て、それがコミュニケーションになったり、SNSがある意味、子どもにとっても大人にとってもおもちゃのような存在になっている。“中身なんて実はどうでもいい”ということもあるとすれば、こういう危険な動画は他にも何種類かあって、目を引くものが繰り返し使われて本当に新しいものが生まれてきているように感じられないのはすごく残念だし、不毛」
では、子どももスマホで簡単に情報を見ることができてしまう現代で、親はどのように対応していけばいいのか。藤井氏は実際に保護者会などで講演する話を引き合いに次のように指摘した。
「子どもが自由に見られるような専用アカウントを持たせないとか、制限がある上でスマホを使わせるということが根本的には大事。今回は10歳の女の子ということで、まだそれぐらいの年代だと、過激動画が多いSNSプラットフォームに触れるとすれば大人と一緒に見た方がいいと思う。学校は校内のルールを決めることはできるが、家庭内のことは家庭で決めるしかない。保護者がデメリットを踏まえた上で、使用状況・使用内容・使用ツールをいかにコントロールできるかだと思う。一方で、子どもが自分自身で判断したり、主体的に向き合い方を決める力を高めてリテラシーを向上することも大事なので、発達段階とのバランスを踏まえて『ルール化』と『自律』をセットで考えていくべき」
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