実況:「お菓子ハンターみっくん、今ターゲットを発見しました! 突如現れた1匹のたまごポーロです。一途な視線を送り、ほふく前進で猪突猛進。左手、いや右手に切り替えた!捕獲なるでしょうか」
赤ちゃんの何気ない行動に、まるでスポーツ中継のような高速実況が当てられているこの動画。「実況ベイビー」というアカウント名で、先月からSNS上で公開しているこの「赤ちゃん実況動画」がいま大きな話題となっている。
一般の人から送られてきた赤ちゃんの動画に、実況を載せて公開しているこのアカウント。「ここには幸せな世界が広がっています。ワードセンスもステキ」「うちの子にも実況つけていただきたいです」と、早くも500件の実況依頼が殺到しているという。
実況をしている人物はというと、正体を明かさず匿名で投稿。ただ、現役アナウンサーとして某民放局に所属し、情報・報道番組やスポーツ実況など幅広く担当しているのだとか。
そこで『ABEMAヒルズ』は、実況者の気になる素顔に迫るために実況ベイビーさんを直撃した。
「きっかけは、コロナ禍でスポーツ実況をする機会が減ってしまって、あと外出もできなくて、外の情景描写とかして練習をしていたんです。そういう機会が減ってしまったので、何か練習できる手段がないかなと思って探る中で赤ちゃんにたどり着きました」
結婚はしているものの、まだ自身に子どもはいない実況ベイビーさん。最初は友達の赤ちゃんに実況をつけることから始めていたという。中でも“アナウンサーらしさ”にこだわりを持っている。
「スポーツはルールがあるので、それを頭に叩き込んで、かつ則って実況していかなければいけない。それに対して、子どもの動画はルールもないですし、子どもの予想外の動きがすごく面白いので、私自身もその驚きをアナウンサーらしいちょっと凝った言葉で表現してあげるというところを注意しています。(発声に変化をつけたりは)特にないですね。いたって真面目に実況するようにしています。スポーツ同様、“笑いを取りにいってる感”を出すのは職業柄違うなと思って、子ども動画をいたって真面目に実況するから魅力のあるコンテンツになるのかなと勝手に思っています」
実況:「世界仁王立ち選手権! 顔が可愛すぎるでおなじみ、あおたんことあおい選手の登場! 人差し指を加えて様子をうかがっている。そして怒りの咆哮! 相手を威嚇した。さらにはここで必殺唇ブルブル破壊光線だー!」
赤ちゃんの細かなしぐさをきっかけにオリジナルストーリーまで作り上げる実況は、まさに名人芸。そんな“赤ちゃん×実況”でリクエスト殺到の「実況ベイビー」だが、人気の裏には妻の厳しいチェックがあるそうだ。
「代名詞を結構使ってしまうんですけど、『今何のこと言ってるかわからないから、ちゃんとそのものの名称言った方がいいよ』とか『そもそも面白くないこの実況は。だから別の設定にした方がいいんじゃない』と。奥さんが提案してくれたものが話題になることもあるので、そこは悔しいですけど感謝しています」
まさに二人三脚で作り上げている「赤ちゃん実況動画」。その実況に込める思いを聞いてみると。
「今世の中が非常に暗くなっていると思うんですけど、それでも自分のスキルを生かして、使って、皆さんが明るく、一人でも多くの方が笑ってくれればいいなという思いでやっています。あとは本当に皆さんの思い出を作りたいという一心です。動画をつけさせていただいたお母さまからの『また子どもが大きくなたら見せてあげたいです。本当にありがとうございます、宝物です」といったコメントはうれしいです」
最後に「いつか正体は明かすか?」と聞いてみると、「その予定はありません。色を出しちゃうと実況にも色がついてしまうので」とのことだった。
実況ベイビーへの反響について、ニュース解説YouTuberの石田健氏は「YouTubeでもゲーム実況など“実況系”が人気のコンテンツで、誰かが何かをやっているのをみんなで見るというのはすごくニーズがある。一昔前だとゲームを実況してお金を稼ぐなんて考えることもできなかったが、コロナ禍もあって“オンラインで何かを見る”ことを体験し、それにうまくハマっていると思う」との見方を示す。
また、スマートフォンなどが普及したことで、写真や動画を単に撮るだけでは飽き足りない状態になっているとし、「そこに実況をつけるといったような付加価値に対して人気が集まっている。例えば、コスプレをさせるとか記念日に変わった写真を撮るといったことと同じ文脈で、“何か思い出に残ることをしたい”という部分と相性がいいのだと思う」とも分析した。
(ABEMA/『ABEMAヒルズ』より)
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