キャリアにおいて挫折知らずの王者が、“6秒ワンパン”の最速KO記録保持者を相手に完膚なきまでに叩きのめされ、嫌倒れでの衝撃的な王座陥落。勝負が決した直後、ガックリとヒザをつき、リングにマウスピースを叩きつけて悔し涙を流す姿に衝撃が広がった。
1月22日にシンガポールで開催されたONE Championship「ONE: UNBREAKABLE」。メインカードのONEバンタム級キックボクシング世界タイトルマッチは、王者・アラヴァディ・ラマザノフ(ロシア)がカピタン・ペッティンディーアカデミー(タイ)に2ラウンドKO負けを喫し、王座陥落。涙を流したラマザノフとは対照的に、圧倒的な差を見せつけた新王者カピタンの強さに、視聴者からは「本物が出てきた」「一方的に攻め続けた」「サンドバック状態」などと驚きの声が上がった。
格闘技の世界で猛威を振るうダゲスタン共和国出身のラマザノフは、アマチュア時代にムエタイの世界王者に3度輝き、18歳でプロ転向。21歳でタイに渡りロシア王者、ヨーロッパ王者と着実にステップアップ。2018年にONEに参戦し、ペットモラコット・ペッティンディーアカデミーに判定勝ちを収め、瞬く間にONEバンタム級キックボクシング王者まで駆け上がった。
対するカピタンはムエタイの世界でタイトルを総なめにしたスーパースター。昨年、満を持してONE参戦を果たし、デビュー戦で最速となる「6秒ワンパンKO劇」を演じ、ファンに衝撃を与えた。タイの錚々たる面々がひしめくONEの立ち技の中でもトップ中のトップとされ、2戦目での戴冠に期待がかかる。
ファーストコンタクトでラマザノフのパンチが頬をかすめると、”ポンポン”と頬をはたき気合十分の様子を見せるカピタン。リーチを活かし距離をうかがうラマザノフに対し、前に出て拳や蹴りを振るっていく。序盤は様子見のスロースターターが多いタイ勢のなかでは珍しく、最初からアグレッシブな姿勢を見せる。
追うカピタンとさがりながら攻撃の機会をうかがうラマザノフという展開の中で、徐々に距離を詰めたカピタンがケージ際で左右の連打。一瞬ガクっとラマザノフが落ちかけると、その後もケージ際で被弾を繰り返す。足を使い逃げるシーンが目立ったラマザノフだが、1ラウンド終了間際には右フックでカピタンをグラつかせ、一矢報いる見せ場も。
2ラウンドになると両者の差はさらに広がりはじめる。強烈なミドルを蹴りながらジワジワと進撃するカピタンに、ラマザノフは後退せざるを得ない状況に。ラマザノフも相手の蹴り際にパンチを当て応戦するが、すぐにケージに追い詰められ、ミドルからパンチの連打という無限ループにハマり防戦一方だ。
逃げ足も止まり、カピタンの鈍い音のボディフックがめり込むと、右ロー、右ストレートの連打を浴び、王者は斜めに崩れながらリングにヒザをついてダウン。ぐったりとうなだれるように10カウントを聞いた。
王者が何もできない残酷なKOシーンに、視聴者からは「足が完全に効いた」「気持ちが折れた」「嫌倒れだな」など驚きの声が殺到。
敗れたラマザノフは、不甲斐ない自分、立ち上がれない自分への怒りをぶちまけるようにリングにマウスピースをたたきつけると、目には涙が。さらにリング中央に戻り、新チャンピオンの勝ち名乗りを聞きながら、人目もはばからず涙を流した。
この衝撃的な王座陥落劇を伝えたONE公式SNSには「強すぎるよ」「モンスターだな」「残念だけど決して偶然の負けではない。カピタンが強すぎる」などの反応が寄せられていた。