荷物に消毒液、ドアにはアラーム…特派員が体験した中国の“厳戒”水際対策 「日本よりも安全に感じる」の声も
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 「中国の水際対策が素晴らしいとは思わないが、日本に比べると『ここまでやるか』というくらい徹底していた」。中国特派員の熱田大カメラマンが実際に経験した、中国の厳格な水際対策。日本とは異なる徹底した隔離措置など、“入国への高いハードル”をリポートした。

【映像】特派員がリアル体験 中国“厳戒”水際対策

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 日本を出発し、中国北京支局へ向かった熱田カメラマン。2020年12月8日、経由地の中国・大連空港で早速足止めを食らった。14日間に及ぶ隔離措置だ。手袋を付けさせられ、番号札をかけられ、PCR検査へ。その際、着用していたマスクは医療用マスクに交換させられたという。

 飛行機を降りてからのルートはきっちりと決まっており、行く先々で防護服姿の係員が待ち構えている。「やっと空港の外に出たところで、止まれと言われた。何をするのかと思ったら、いきなり消毒液を僕の荷物に噴き付けた。これもびっくりした。全身防護服で会話が中国語だから、緊張感がある。言われた通りにしないと大変なことになるかも、という恐怖感もあった」。

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 大連空港に着陸して約2時間、ようやく空港の外へ。しかしこの時点では、隔離場所がどこかは知らされておらず、指示に従ってついていくだけだったという。隔離先のホテルへ向かうバスに乗る際も、座る席から荷物を置く場所まで、細かく指示があった。運転席と客席との間はシートで頑丈に仕切られており、車内は座席の間隔を空けて、乗車したのはたったの4人。「空港から隔離ホテルまでのちょっとした移動だが、感染対策が徹底していた」。

 一方で、約1カ月前に日本に入国した際には、「手荷物を受け取った後は、コロナがなかったときと同じように自由に動けた」という。ただ、帰国者は公共交通機関を使えないという制限があるため、専用のハイヤーなどを使って移動する必要がある(2021年1月現在はスカイライナーなどの専用車両も利用可能)。「日本に入国した後の行動は、個人の自覚に任されているなと感じた」。

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 大連空港を出発し、到着した隔離先のホテルにも、防護服姿の係員が待機していた。到着後すぐに指示されたのは、食事や体温チェックなど健康面をフォローするためのグループチャットへの登録。そして係員に名前を伝えると、あらかじめ部屋が割り当てられていたのだろう、すぐにルームキーを手渡された。こうしたチェックインの手続きは、建物の外で手際よく済まされた。

 部屋に向かう際には、係員が荷物を一緒に運んでくれたという。「親切だな、と最初は思っていたが、あとから冷静に考えると、この人は僕の監視役だった。隔離する部屋までちゃんと連れて行って、僕を部屋の中へ入れて外からドアを閉める。言い換えれば、部屋に閉じ込める。そこまでが彼の仕事。それに気が付いたら、ちょっと怖くなった」。

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 これから14日間過ごすことになる部屋を確認してみると、ペットボトルの飲料水が48本。さらにごみ袋にタオル、ティッシュやトイレットペーパーも大量に用意されていた。「あまりにたくさんの生活用品があって、最初は異様な光景だと思ったが、用意しておくことで無用な接触が減る。これだけ用意するから14日間部屋の中で我慢しろ。そういうメッセージなんだと受け取った」。

 1日3回の食事は毎回中華料理の弁当だったという。「僕の隔離場所ではビールなどの嗜好品も頼むことができたので助かった。でも、そうした対応は隔離される場所によって違うようだ。隔離場所は当局に勝手に決められてしまうので、自分たちに選択権は一切ない」。

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 弁当などのごみは部屋の外、ドアの前に置くように指示されていた。廊下には薬剤のような臭いが漂っていて、頻繁に消毒液を撒いていることがうかがえる。ドアには一定時間開けっ放しにしておくと作動するアラームが取り付けられており、部屋の出入りも徹底的に管理されている。

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 隔離8日目。部屋から外を眺めると、散歩をする人の姿が目につく。「外を出歩ける人が羨ましく感じる。時間が経つとだんだん辛くなってくる。中国の隔離生活では、できることが限られているので、毎日やることのルーティーンを決めて、精神的に落ちないように気を付けていた」。部屋の中を走り回るなどして、カメラマンとして体力維持も心がけたという。

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 2020年11月に日本で経験した自宅待機では、中国での隔離のような食事のフォローはなかったため、宅配サービスなどを利用。また、体温測定など、健康状態は毎日チェックしていたが、体調に問題がなければ報告の必要はない。「もし自分が無症状でも感染していた場合を考えて、自分のちょっとした行動が周りにどう影響することになるのか、いつも気になっていた。日本では行動の制限がない代わりに、何がよくて何が悪いのか、判断が試される気がする」。

 一方で中国では、1日2回の体温報告が義務づけられていた。午前分は毎朝7時で、体温計の写真を撮ってグループチャットで報告する。報告が遅れると催促の連絡があり、報告を怠ると隔離期間が延長されてしまうこともあるという。

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 また、隔離中には2回のウイルス検査がある。中国入国後に空港で行う1回を合わせて、計3回のウイルス検査を受けることになるが、実は日本を出発する前にも2回の検査が課せられている。搭乗から2日前以内に受けたPCR検査と抗体検査、両方の陰性証明書を取得。さらにサイトで登録作業を行って「健康コード」を申請、中国駐日本大使館・総領事館の確認完了後にやっと搭乗が許可される。

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 隔離明けの14日後、ようやく外出が許された。部屋の前には大量の水やタオルが置かれており、すでに次の隔離入居者を受け入れる準備が進められていた。

 チェックアウト時に、陰性証明書と隔離解除報告書を受け取る。これらの証明書は、目的地の北京に到着した際に提出する必要がある。

 中国へ入国するために、合わせて5回のウイルス検査と14日間の隔離を経験した熱田カメラマン。実はこのあとさらに、到着した北京で7日間の経過観察が追加となった。中国は国内外の感染状況に応じて、素早く水際対策の方針を変更する。そして現在では、大連経由で入国する人の隔離期間が7日間追加され、21日間の隔離が課せられている。(※2021年1月現在)

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 そんな厳格な対応をする中国に対し、現在中国に住んでいる日本人駐在員からはこんな声が上がっている。

「甘い、中途半端。日本はまだゼロにできる状況なのに『やっていない』」

「中国のやり方が完全に正しいとは言わないが、日本は早期収束を考えていないため長期化している」

「中国はコロナ対策を徹底しているが、住みにくい。日本は徹底されていないが、住みやすい」

「中国ではコロナに対し厳しくコントロールしているので、日本よりも安全に感じる」

「中国は厳しい行動規制や、アプリなどで感染をコントロールしている。日本で同じやり方が受け入れられるとは思えないが…」

ABEMA NEWS)

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