「皆さん勘違いされているようだが、病院の言う“治癒”の状態と患者さんの言う“治る”は意味が違う。火災で言えば、医療がやってあげられるのは基本的に消火することだけ。そこから燃えてしまった家を新たに建て直せるかどうかは患者さんの再生能力次第だ。すぐに新しい家に住める人もいれば、1年、2年と時間がかかる人もいる。その状態を“後遺症“と呼んでいるということだ」。
先月21日の『ABEMA Prime』に生出演した、重症化した経験を持つ「辻クリニック」院長辻直樹医師の言葉だ。日本呼吸器学会によれば、イタリアでは呼吸のしづらさ、関節痛、胸の痛みなど、症状出現後およそ60日の段階で、少なくとも1つ以上の症状が残っている患者が87.4%に達し、半数以上の患者が倦怠感を感じているという。
ネット上にも「治った後も味しないとか息苦しいって人多くない…?」「子どもに症状が続いている」といった、後遺症、あるいは後遺症を疑う不安の声が上がっている。
1日の『ABEMA Prime』には、そんなコロナ後遺症の闘病生活についてTwitterで発信を続ける「真田さん(仮名)」が生出演した。
■「キッチンは洗い物の山だし、洗濯物も山積み」
持病や既往歴については高血圧や糖尿病といった生活習慣病は無く、コレステロール値が高いといった程度だったという真田さん。去年3月、体調に異変を感じるも基準に満たなかったためPCR検査を受けられず、約3カ月後にPCR検査、抗体検査を受けた際には陰性の判定が出た。ところが体調不良はその後も続き、9月に新型コロナウイルスの感染の後遺症による「筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)」と診断された。
今もインフルエンザで高熱が出ている時のような症状があるといい、番組にはベッドに横になったままオンラインで生出演した。
「熱を測ってみると割と微熱で37℃前後だが、身体の体温調節(機能)がおかしくなっているのか、食事をしているとものすごく汗が出て、直後にものすごく悪寒がしてきたり、お風呂から出た瞬間に寒気がしてきたり。皆さんも瞼がピクピクした経験があると思うが、それが全身のあらゆる箇所で起きるので、非常に気持ち悪い。また、よく“匂いがしない”と言う人がいるが、私も鼻の片側だけ戻っていない。耳鳴りも一日中するし、時々目が充血する。しかも血管が稲妻みたいになるという、すごく血走った感じの充血だ。睡眠障害もあって、夜中に何度も目が覚めてしまう。そういうこともあって、体重は10kg落ちた。11月くらいからは投薬を受けて少しずつ楽になっている症状もあるが、全体的にはわずか、という感じだ」。
10月からは休職、自宅で療養を続けているが、倦怠感がひどい時にはスマホや買い物カゴも持っていられるかどうか、という状態になってしまうため、家事もままならない。
「デスクワークなので会社にはギリギリ行けていたが、倦怠感が悪化してきてしまって週に2日くらい休んだり、行っても座っているのが精一杯でパソコンに手をかけられなかったりするようになった。ただ、周囲も何の病気かよくわからないし、原因もわからないので、会社としても対応が難しいと思う。家のキッチンは洗い物の山だし、洗濯物も山積みだ。ME/CFSは動くと悪化するので、外出すると翌日は寝込んでしまう。だから買い物も週に1回、あるいは通販という状況だ」。
■「いくら症状を訴えても“心療内科へ行ってください”と」
自治医科大学附属さいたま医療センター副センター長の讃井將満医師は「新型コロナウイルスの後遺症は複雑で、重症から軽症、さらには無症状の方も含め、何らかの症状が出る場合がある。病態は少しずつ違っていて、心臓や肺に特化して症状が残るケース、また、重症の場合は炎症が強く酸素不足に陥るため、筋力や脳機能の低下、うつの症状が出る集中治療後症候群になる方もいる」と話す。
「無症状でも倦怠感が残ることがあり得るし、軽症・中等症の方の場合、比較的軽く6カ月くらいの間で治ってしまうこともあれば、真田さんのように筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群(ME/CFS)のひどい症状が出ることもある。ME/CFSも集中治療後症候群も年単位で続く方がおり、早期からの介入が重要だが、対応が大きく異なるので、医療者自身の正しい認識が必要だ。そこは私たち自身も改革していかなければならないところだ。ただしコロナとの因果関係を見極めるのは難しく、PCR検査で陽性ではない方の中にも、後遺症とみられる症状で入院、手術が必要になった方もいる」。
後遺症の実態については厚労省も調査を進めているところだが、医療体制や医療費の問題も課題だという。
「コロナの入院費は隔離対象になるため公費負担だが、一度それが終わってしまった後は原則として保険診療になる。筋痛性脳脊髄炎であれば医療保障もあると思うが、それ以外の症状については未整備だ。後遺症の出る人が非常に多いため、公費負担にすべきだという声もあるが、じゃあその他のウイルス性疾患の患者はどうするのか、不公平ではないかというという意見もある。いずれにしろ、患者の数が多く、色んな病態が隠されているので、専門医の先生が潰れてしまわないよう、いわゆるクリニックの先生たちもどんどん加わって来て欲しい」(讃井医師)。
最後に真田さんは「かかりつけ医や普通の病院だと、いくら症状を訴えても“心療内科へ行ってください”と言われてしまうのが辛い。周囲の人にもなかなか相談できないので、SNS上で似た境遇の人を探した。すると何百人という人が同じような症状で苦しんでいるのを見つけた。お互いに情報を公開しながら、なんとか助け合っている。私の症状は、実はME/CFSとしてはかなり軽い方だ。寝たまま一歩も動けないとか、トイレに行けずに布団に垂れ流しているという人がいるという話も聞いている。ME/CFSという病気自体、医師の間でも認知度が低いようなので、私の出演を機に、少しでも伝わればいいと思っている」と訴えていた。(ABEMA/『ABEMA Prime』より)
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